「doda」のリブランディングの裏側、どのようにサイトのリデザインが行われたのか

UX MILK編集部

モノづくりのヒントになるような記事をお届けします。

社会人であれば転職サービスの「doda」は誰しも聞いたことがあるのではないでしょうか。

そんな「doda」が最近リブランディングを行い、CMや広告などでもイメージを一新しています。

今回は、「doda」のような大規模サービスでどのようにリブランディングが行われたのかを、パーソルキャリア株式会社のデザイナーである佐藤さんにお聞きしてきました。

登場人物
パーソルキャリア株式会社
転職メディア事業部 プロダクト開発統括部 UXデザイン部 クリエイティブグループ
佐藤 貴明 氏

“はたらくに迷う時代”にあわせたリブランディング

── 本日は、「doda」のリブランディングについてお聞きしたいと思います。まずは「doda」のリブランディングの概要をご説明いただけますか。

佐藤:「doda」は、今年の10月2日にリブランディングを行いました。1年以上前から準備していたもので、大きく変わったのはロゴとサイトデザイン、プロモーションの3つです。

── どういった経緯でリブランディングがスタートしたのですか?

佐藤:「doda」として多様化する転職に応えていく必要があるためリブランディングを行いました。具体的には、終身雇用が崩壊したり、人生100年時代が到来するなどと言われており、職業観や働き方に変化が起きています。さらに、”はたらく”ことへの不安や悩みも多様化・複雑化しており、転職を考えることが当たり前になってきました。

こういった変化に対する新ブランドビジョンとして「doda」では、「その時々に、一人ひとりにあった“はたらく”を」というメッセージを掲げています。

リブランディング前は、キャリアアップを目的とした堅い印象が少なからずあり、「仕事ができる人向けの転職サービスだよね」という声もありました。転職することが当たり前になってきているという時代背景もあり、より親しみやすく幅広い方に使っていただけるようなサービスにするために今回のリブランディングプロジェクトがスタートしました。

── その中で佐藤さんはサイトを主に担当されたということですよね。リブランディングはどのように進めていったのですか?

佐藤:まずは定性調査への参加から始めました。定性調査では、ユーザーさんがサイトをどのように見ていて、どういった印象を受けるかを主に聞きました。実際、まったく想定していない印象を持つ方もいたので、ユーザーさんが受ける印象を肌感として得られたのは良かったです。

── 当初のデザイン案に対する反応はどうでした?

佐藤:こちらが意図したことが伝わっていない印象がありました。たとえば、今回のリブランディングでサイトデザインも柔らかい印象にしたのですが、それをユーザーさんに見せても「良いんじゃないですか?」といった反応で、こちらの意図までは伝わっていませんでした。

細かいデザインを変更しただけでは印象は変わらないと気づき、変えるのであれば思い切って変えないと伝えたいことは伝わらないと感じました。結果として、今回のリブランディングでサイトUIはかなり思い切って変えることになりました。

(左)リブランディング前、(右)リブランディング後

── たしかに意匠の細かい変更だけでは、意図まではユーザーに気づいてもらえないかもしれませんね。そういったフィードバックを受けてデザインの方針にも変化があったのですか?

佐藤:ありました。これがきっかけで、「そもそもリブランディングはこれで大丈夫なんだっけ?」と、スタート地点に立ち返ることになりました。

まずサイトを大きく変える上で、「そもそもサイトで何を表現したくて、どういった体験を提供したいのか」をクリエイティブグループで再検討する場を設けました。そこでリブランディングのトンマナや世界観をきちんと言語化して、みんなが共通認識を持てるようにしました。

── 感覚的なところを言語化して、最終的にどういったテーマや世界観に落ち着いたのですか?

佐藤:「ニーリング」という言葉がテーマになりました。バスの乗降時に車体が傾いて段差をなくす機能があるのですか、これをニーリング機能と呼ぶそうです。これを見た際に良いなと思い、リブランディングにおけるテーマにしました。

ニーリングには「目線を合わせる」、「寄り添う」という意味があり、働く人のさまざまな価値観に寄り添い、同じ目線のサービスを提供しようとなりました。

── サイトでは、具体的にどのような点が変わりましたか?

佐藤:レイアウトや情報設計などの大きな変更から、フォントや行間などの細かい変更まであります。転職サイトなので情報が詰め込まれていたのですが、適切な形で情報を提供するようになりました。

一方で、リブランディング前のUIとの繋がりも考慮して、大きな変更を加えていない部分もあります。たとえば、配色に関しては彩度や明度の微妙なリファインはしつつも、ボタンなどに使われるオレンジ、緑、青は変えていません。巨大なサイトなのでそこまで変えてしまうと今まで使っていた方が混乱してしまうので。

── そうですよね。「doda」はページ数もかなり多いと思うのですが、デザインの一貫性を保つための工夫などはありましたか?

佐藤:

「Soft & Light & Clear」というブランドガイドラインがあったので、それを言語化してWeb上での配色やトンマナなどに一貫性を持たせました。たとえば、「Soft」に関しては「一定の空間を保ち、柔軟な形状で威圧感・強さを和らげる」といった形です。

── 実際にリブランディングをしてみて、その後のユーザーの反響はどうでしたか?

佐藤:サイトUIに関しては、「爽やか」や「使いやすくなった」といった声をいただいていて、意図したことがきちんと伝わったという印象はあります。また、主要KPIもリブランディング後に改善しました。

全体として、より親しみやすく幅広い方に使ってもらうという目的が達成できたのは良かったです。

デザインの言語化がコミュニケーションの鍵

── 今回のような大きなプロジェクトでは、コミュニケーションも非常に重要だと思うのですが、デザイナーとしてコミュニケーションで気をつけたポイントはありますか?

佐藤:おっしゃる通りで社内におけるデザイン文化の浸透やほか部署にデザインのトンマナを理解してもらうのは苦労しました。基本的には、日々のコミュニケーションの中でボトムアップ的に伝えるようにしていました。

特にコミュニケーションにおいては、「草の根運動」「納得感の醸成」が大事だと思いましたね。

── やはり苦労されたのですね。まずは「草の根運動」から聞いても良いでしょうか。

佐藤:「doda」のサイトには関わる人が数百名いるので、まずは自分たちのグループの役割を知ってもらうことが大事だと考えました。クリエイティブグループは以前からあったのですが、いままでは最後にビジュアルだけを作るグループという印象を持たれていました。

そのため、普段から自分たちが何をしていて、何ができるのかを伝えることが必要であると感じました。まずは日々のコミュニケーションで伝えていこうと思い、たとえばワイヤーフレームを渡されて依頼を受けた際に、そこで1回きちんと目的や達成したいことを確認するようにしました。そうすることで、「デザイナーはビジュアルを作るだけではない」ということを少しずつ伝えることができたと思います。

あと、これは個人的な話ですが、社内の人をイメージしたTシャツやステッカーを勝手に作ってプレゼントしたりしました(笑)。こうすることで、与えられたものだけを作るのではないというアピールにもなりますし、Webデザインに限らずロゴなども作るスキルがあると認識してもらえました。

── Tシャツのプレゼントは面白いですね(笑)たとえば、ニーリングというテーマを説明するときに気をつけたことはありますか?

佐藤:納得感の醸成は意識しました。デザインのテーマは抽象的なため、納得感がないと「抽象的でなにを言いたいのかわからない」となってしまうと思うんです。

そのため、テーマなどを決める際にはクリエイティブグループ全員が参加する会議で議論をしながら決めるようにしました。そういった場作りが「納得感の醸成」には大事だと思います。

── コミュニケーションにおいて場作りは大事ですよね。ちなみにデザインの最終的な意思決定をする人はデザイナーでしたか?

佐藤:いえ、最終的に意思決定する人はデザイナーではなかったので、デザインの言語化をとても重視しました。「このデザインどうでしょう!」と言ってデザインを出すだけでは感覚的な意見しか出てこないんですよね。

たとえば、「なんとなく暗くない?」というフィードバックをもらうこともあったのですが、デザイナーは全部意図して設計しているのでそれをひとつずつ説明するようにしました。

デザイナーは、「作ったもので語るべき」と思いがちですが、逆に言葉を尽くすほうが良いのではと今回のリブランディングで改めて思いました。そのため、きちんと言葉で説明できるデザインを作り、言葉を尽くして説明するよう意識しました。

── デザインの説明にあたってほかに気をつけた点はありますか?

佐藤:なぜこのデザインにしたのか説明することに加えて、そのデザインに至ったプロセスも説明するようにしていました。

意思決定をする人たちの判断基準のひとつに「適切なプロセスを踏んで検討がされたか」があるので、どういったプロセスでそのデザインに至ったのかを示すようにしました。

── 検討プロセスを示すというのはあまり聞かないかもしれないですね、たとえば、ほかの企業の方で同じような状況の方がいたらどのようなアドバイスをしますか?

佐藤:落ち着くのが重要だと言いますね。人の意識や行動を変えるのには時間がかかるので、焦らずに少しずつ変えていくことが大事です。

最近はCDOなどのデザイナーの経営者的なポジションが出てきてトップダウンで意識変革を進めていく話もありますが、やっぱりボトムアップでやるべき動きもあるかなと思っています。

デザイナーのロールモデルになるような組織を目指す

── 今回のリブランディングを経て、社内に何か変化はありましたか?

佐藤:リブランディング後は、何かプロジェクトが発足するタイミングで、プロジェクトの最初からクリエイティブグループが呼ばれるようになりました。少しずつですがデザイン文化が浸透しつつあるのを感じますね。

あとは、UXデザイン部も創設され、よりユーザーに寄り添ったサービス提供を意識した体制になってきたと思います。

── UXデザイン部になったのですね。UXデザイン部としての今後の展望や課題があれば教えてください。

佐藤:課題感としては、まだまだUXデザインへの理解と実践が足りないことだと思います。社内にUXデザインを浸透させていくためには、それをする人手が不足しているので、UXデザイン部で共に戦ってくれる人を増やしていきたいです。

あとは、社外への発信を積極的にしていこうと思っています。

── 具体的にどういうことしていくのですか?

佐藤:デザイナーブログでの発信やイベント開催をしています。たとえば、つい最近も「ポテトを食べながらライトにUXを学ぶ」というテーマの「UX Potato」というイベントを開催しました。

今まであまり対外発信をしていなかったのですが、こういった活動によって結果的に社内の人の意識も変わってくることを狙っています。

── リブランディングがある意味で新しいスタートみたいなものなのかもしれないですね。

佐藤:そうかもしれません。こういった取り組みによって、事業会社におけるデザイナーのキャリアのロールモデルになれたら良いですね。さまざまな人材サービスを手掛けるパーソルだからこそ、そういった発信をしていくことに意味があるのかなと思っています。

── 本日はありがとうございました。

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企画制作:UX MILK編集部