サイトの問題点を浮き彫りにする「UX監査」のガイドライン

Cassandra Naji

Cassandra Naji氏は、Webアプリやモバイルアプリ用のプロトタイピングツールJustinmindのマーケティングコンテンツ編集者です。

この記事はUsabilityGeekからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

The UX Audit: A Beginner’s Guide (2017/2/6)

たとえばあなたがECサイトを運営していると考えてください。訪問者が検索エンジン経由でサイトを見つけてWebサイトを閲覧していることはわかっています。訪問者は購買手続きを始めました。ところが途中で手続きを止めてしまいコンバージョンまで至りませんでした。

何が原因で手続きを止めてしまったのかわかりません。情報ヒエラルキーやユーザーフローをアップデートすべきときなのかもしれません。どのようにすれば、手直しすべき部分がわかるのでしょうか。

UX監査は、Webサイトやアプリといったデジタルプロダクトの中で、ユーザーを悩ませコンバージョンを妨げているポイントを明らかにして、不完全な箇所を突き止める方法です。

UX監査は会計監査と同じように実証的な手法で既存の状況を解明し、ヒューリスティックに基づいた改善提案をします。デジタルプロダクトの場合は、ユーザーを中心とした改善を提案します。UX監査によって最終的に、どのようにしてユーザーが目標を達成しやすいWebサイトやアプリに改善してコンバージョンを上げるかがわかります。

この記事はチームがUX監査の基本を身につけるための、初心者向けガイドラインです。また外部にUX監査を依頼するメリットやその限界についての理解を手助けするガイドラインでもあります。

UX監査では何をするのか?

まず、UX監査自体について説明しましょう。UX監査中には何を行い、どのようにしてユーザビリティテストの結果と合わせて解釈するのでしょうか? UX監査中、プロダクトの拙い点や良い点を分析するために、監査人は様々な手法やツール、指標などを使います。

  • ビジネスとユーザー目標のレビュー
  • コンバージョン指標
  • カスタマーケアのデータ
  • 売上データ
  • トラフィック/エンゲージメント
  • UX基準の順守
  • ユーザビリティヒューリスティック
  • メンタルモデル
  • ワイヤーフレームとプロトタイプ
  • UXのベストプラクティス

ユーザビリティテストとUX監査は違います。UX監査は、あらかじめ決められた基準や目標から問題点を推測する一方、ユーザビリティテストはユーザーの行動から問題点を推測します。もし基本的な指標が手に入らないのであれば、監査人はユーザビリティテストをおこなうかもしれません。しかしその結果はそのまま解釈するのではなく、長期間集めた他のデータと結びつけて、業界の基準やプロダクトの目標と比較し評価に用いるでしょう。

UX監査で何がわかるのか・限界はなにか?

UX監査がWebサイトのUX面での悩みすべてに効く万能薬でないことを指摘しておく必要があります。UX監査に基づく提案を実行できなかったり、継続できないのであればこの効果はありません。また、社内チームでUX監査をおこなうには、他の業務に遅れが生じるくらいの相当な時間と労力を注ぐ必要があります。

不具合を抱えるWebサイトやアプリの問題のすべてをUX監査が解決できるわけではありませんが、以下のような質問に答えるために使うことができます。

  • 何が機能して、何が機能していないか?
  • どの指標が集められており、どの指標を集める必要があるのか?  
  • データからどのようなユーザーのニーズがわかるか?
  • すでに試みられたことはなにか? 
  • それはどのような影響を指標に与えたか?

効率的に行われたUX監査は、プロダクトに多くのメリットをもたらします。直感ではなく実証的な根拠に基づいて、現実的に実行できるものとしてどのようなフォローアップをするべきかを教えてくれます。戦略的なデザインプランの支援をしたり、将来的に手直しをして使える指標を提供してくれます。またユーザーがなぜそのような行動をしたのか、将来どのような振る舞いをするのかといった仮説を立てるのに役立ちます。

とりわけ注目すべきメリットは、UX監査の結果すべきことが明らかになったフォローアップを行えば、コンバージョンと投資対効果の向上に繋がるということです。

UX監査はいつ誰がやるべきか?

Tim Broadwater氏は、UX監査を実施するときの確かな経験則としてLibUXの記事で「Webサイトやアプリなどのリデザインプロジェクトの最初期段階でUX監査はおこなうべきだ」と述べています。

この「リデザイン」という言葉が重要です。なぜなら、UX監査は長期間稼働していて調査すべきデータが蓄積されているプロダクトやサービスに対しておこなわれるのが一般的だからです。新しいプロダクトや新機能は、全体的にUX監査をするのではなくユーザービリティテストで試すことが多いです。

一般的に、UX専門チームのいない会社がよりUX監査の恩恵を受けます。というのは、社内にUXチームを持つ会社はプロダクトの評価とUXの手直しを継続的におこなっているからです。

資金面に余裕があるならば、UX監査を外部に委託することを勧めます。社内チームにとってプロダクトと一定の距離を保つのは難しく、無意識下の先入観が監査の妨げとなってしまうためです。

監査人を招く費用をNate Sonnenberg氏がおおまかにまとめています。それによると、1名に2〜3日の監査を依頼するなら1,000ドルまでで、UXチームが1カ月かけて監査して詳細でゴールに沿ったインサイトを提供する場合は1万ドルに達する可能性があります。ただ、Nate氏によれば、2〜3週間の監査で問題の80%を見つけられるので、初めて実施する場合はこの期間で十分だということです。

外部に監査を頼むための予算が足りないとしても、打つ手がまったく無いというわけではありません。さまざまなツールを使いながらUXのベストプラクティスと基準に精通することで、客観的な手順を踏んで社内でUX監査をおこなうことが可能です。

UX監査を始めるにあたって必要なことを見ていきましょう。

UX監査の実施に必要なことは何か?

UX監査のチームは、デザイナー、開発者、製品戦略担当、経営陣など、職種をまたいだ人々でを構成するのがよいでしょう。また、作業と期限に関して決定をくだす監査のリーダーを指名することも実施に役に立ちます。

ほかのプロジェクトと同じように、以下について最初から同意を得ている必要があります。

  • 監査の目的(コンバージョン、投資対効果など)。
  • 期限。監査は理論的にはいつまでも続けることが可能なので期限を設けることは大切。
  • 時間・人員・費用などの資源をどれだけ監査に使えるか。

プロセスの全体像を描く

土台の準備ができたら、次はプロセスのおおまかな全体像を描く段階です。俯瞰的に見ると、UX監査には次の6つの段階があります。指標と素材の収集、結果の確認、データ整理、傾向の評価、調査結果の報告、そして裏付けのある提案です。

指標と素材の収集

UX監査のうちでもっとも難しい部分はおそらく最初のステップ、つまり適切な素材の収集でしょう。もし監査を開始する前に目標が適切に決められていれば、どんな情報が必要かがわかります。あとは、その情報を与えてくれる指標が何であるかを考えるだけでいいのです。

既存の情報をチームメンバーと共有し、手に入っていない有益な指標をメンバーに追跡させれば、このステップは簡単です。

ここでUX監査で役に立つ指標と素材を紹介します。

  • プロダクトのヒューリスティック評価:カスタマーの視点から見るために、プロダクトの認知的ウォークスルーを実施しましょう。ユーザーの目標達成を妨げるものに注意を払って特定し、メモに取ります。プロダクトに関する知識がこの作業を難しくすることを認識しておいてください。ニールセンのヒューリスティックなど確立された評価基準に基づいて作業をおこなえば、問題発見に集中する助けとなるでしょう。
  • Webサイトとモバイルアプリ分析:ヒューリスティック評価で質的データが得られるように、分析ツールでは必要な量的情報が得られます。トラフィック参照元やフロー、傾向といったGoogleアナリティクスの基本的な機能については、ほとんどの人が慣れておいた方がよいでしょう。さらに高度な機能では、サイト内のユーザーフロー、コンバージョンと離脱のホットスポット、サイトを訪れる前と後のユーザーの行動などが明らかになります。KissmetricsやCrazy Eggといったツールでは、ヒートマップや解約率などの機能で基本的な分析がおこなえます。アプリの分析は、Googleのモバイル向けアナリティクスでも、Mixpanelなどの専用ツールでもおこなえます。傾向を評価するためには、独立のデータを監査するのではなく、かならずアナリティクスの過去のデータを十分にさかのぼって分析するようにしてください。
  • コンバージョン率または売上高:もしWebサイトやアプリがECを前提としたものであれば、売上やダウンロード数がUX監査の役に立ちます。たとえば、Justinmindでは、プロトタイピングツールをダウンロードしたブログ読者の数と、どの投稿ページからダウンロードしたか、を測定しています。これによって、Justinmindの幅広いユーザー体験にマッチしているか、ユーザーのペインポイントに対応できているか、などに関するインサイトが得られます。
  • 関係者へのインタビューまたはユーザー調査:外へ出て現実の人々と話もしなければいけません。プロダクトオーナーや開発者など内部のプロダクト関係者へ、プロダクトプランのもとになったインサイトや製品要求仕様、現在取り組んでいる課題などを問うインタビューから始めてください。また、彼らがUX監査でなにを知りたいかを尋ねることで、監査実施において信頼や好意的な態度を醸成することができます。マーケティング部門かセールス部門がユーザー調査を実施したことがあるかどうかも調べてください。UX監査で利用できるコメントや意見が調査結果に大量に含まれていることが多いからです。そのフィードバックを、画面単位や作業単位でカテゴリー分けして、重要度に応じて整理しましょう。
  • 以前にリリースしたプロダクトの要求仕様書:アプリケーションの元々の要求仕様が手に入れば、なぜそのプロダクトがそのような設計になったのかを時間をかけずに理解する助けになります。さらに、実行可能な提案をまとめるときにその情報が役立ちます。

この段階で一度立ち止まって、ユーザビリティテストで集められた質的データを確認することが可能です。たとえば、チェックアウトの手続きが複雑だと顧客は感じていることが以前のユーザー調査で判明していたなら、ユーザビリティテストを実施してその裏付けをとれるかどうか調べられます。

収集した素材の整理方法

スプレッドシートで整理しましょう。第1のステップで入手した情報はすべてひとつの表にまとめて記録すべきです。そのスプレッドシートをクラウドにアップロードしてください。そして、疑問やアイデアをそれに関連する指標の横に並べて、協働作業用の生きたドキュメントにしましょう。

スプレッドシートに何を記入すればいいかわからなければ、以下のテンプレートを試してみてください。

トレンドと傾向を調べる

データからインサイトを獲得しなければならないときは神経がすり減るものです。しかし、指標から意味のある変化を読み取ることは、本記事のテーマを超えた奥深い問題です。データマイニングやカードソーティング(これらはUXアーキテクトだけでなく、どのような量の情報収集にも最適です)、さらにインサイトインキュベーションなど、情報の意味を理解するのを助けてくれる方法はいくつかある、ということだけは言っておきましょう。UX調査のパターン発見について詳しく知りたければ、UXmattersのSteve Vaty氏の投稿を確認してください。

調査結果の報告

データマイニングでインサイトを得たら、次はユーザー体験の現状について仮説を立てるときです。なぜユーザーはステークホルダーが望むものとは違う行動をとるのでしょうか。獲得したインサイトと以下の4つのプロダクト成功要因を比べましょう。

  • 関連性:Webサイトやアプリはユーザーのペインポイントに正しく向いていますか? プロダクトを見たユーザーが期待したことと現実の間にギャップはありませんか?
  • 価値:ユーザーにとっての価値は明確で説得力がありますか?
  • ユーザビリティ:プロダクトのインターフェイスに曖昧な点や不確実な点はありますか? 何をすべきかカスタマーは直感的に理解できますか?
  • アクション:コールトゥアクションはははっきりと目に入りますか? 適切な形になっていますか? ユーザーに行動を促していますか?

裏付けのある提案をする

ここまできてようやく、データに基づいたUX改善のための提案を書くことができます。大切なのは可能な限り適切な提案にすることです。わたしたちは、「Describing Usability Problems: are we sending the right message?」でJoseph Dumas氏、Rolf Molich氏、Robin Jeffries氏が提供している提案方法を気に入っています。

  • プラスの面を強調する
  • 困っていることをうまく表現する
  • ユーザビリティに関する専門用語を避ける
  • できるだけ具体的に説明する

もっと実質的なレベルでいえば、全体的な変更のための場所を示すだけではなく、提案に具体例を添えることを忘れないようにしてください。

たとえば、IntechnicのUX監査レポートのサンプルでは、提案の中には「フォームとリソースに関しては、クリックの回数に従って整理しなおす」ことと「ナビゲーションのドロップダウンメニューから画像を取り去る」ことが含まれています。デザイン開発チームに対して、単にアプリがユーザー体験に失敗した箇所を批判するよりも、解決策を提案することの方が前向きで効果的な方法です。

基本的なUX監査キット

どのようなUX監査キットを使うかは、プロダクトと最終目的次第です。しかし、以下のリソースと活動は監査を始めるにあたって必要なものをすべて提供してくれます。

まとめ

UX監査は社内で実施するなら時間と人的資源の点、また外部のUX監査のプロに委託すればかなりの投資が必要になる点から軽々しく始められるものではありません。

しかし、特にコンバージョンが伸び悩んでいて、ユーザーの声がプロダクトの改善に反映されていない場合は、Webサイトやアプリにとってメリットがあることははっきりしています。UX監査を実施することで、データに基づいた重要な変化をアプリケーションにもたらし、ユーザーの満足と投資対効果の両方を向上することができます。


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