UXを専門外の人に説明するために準備しておくべきこと

Interaction Design Foundation

Interaction Design Foundationはグローバルにデザインレベルの向上を目指す、デンマーク発の非営利団体です。

この記事はInteraction Design Foundationからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

How to Advocate and Evangelize User Experience

UX(ユーザー体験)は徐々に認知され始めています。それでも、UXがなぜ重要なのかや、実際に何を意味するのかを説明しなければならない機会はまだ多いです。したがって、論拠を示せるように事例や画像を準備しておくべきでしょう。製品やサービスの開発にUXがどのように関連しているかを例示するには、ケーススタディがとても効果的です。あるいは、図表を用いるのも、UXをわかりやすく説明する良い手段でしょう。

UXの分野を視覚的に解説する際には、いくつもの分類や型があります。しかし実際にはUXは、専門外の人々にとって高度に専門的で曖昧な概念です。UXとは正確にはどのような意味なのでしょうか? 哲学でしょうか、プロセスでしょうか、それともガイドライン、基準、規律でしょうか? UXはそれらすべてを指す言葉だと答えたら、同僚や上司、顧客、あなたの祖母はきっと困惑するに違いありません。

誰にでもわかるようにUXを説明するには:鳥の目

UXストラテジストやUXデザイナーでしたら、友人や家族に自分の仕事について説明を求められた機会があったでしょう。その説明は成功しましたか? 今でも「実際に何をしてるのかわからない」、「もう1回説明してくれる?」といった反応を受けていませんか? そのようなときは、大枠を説明して、彼らの生活に近しい具体例を挙げましょう。

UXとは、人間と製品やサービスとのインタラクションのあらゆる側面を考慮することです。実際にどのように使用されるかを想定せずにデザインされた製品の画像などは無数にありますので、手始めに、もっともわかりやすい事例、もしくは相手にとってより近しい事例を選択して見せてみるといいでしょう。

たとえば、下の画像をご覧ください。このトイレや階段が、ユーザー体験を念頭に置いてデザイン、設置されたものではないことは明白でしょう。これらの使いにくいデザインは、私たちUXデザイナーの制作物とは正反対のものです。私たちの制作物はインタラクティブなものですが、それでもこれらの例を挙げることでUXの要点を説明することができます。また、普通のテレビリモコンや駐車場の料金精算機を事例に挙げてもいいでしょう。どちらも大抵優れたデザインではありません。

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「You Had One Job!」というWebサイト(http://hadonejob.com/)は、ユーザー体験を考慮せずに、あるいは何も考えずに作られたようなものの画像を集めるのに最適です。

上司を説得するための戦略とプロセス

UXをよりわかりやすく説明する主張と画像を集められたら、経済的、財政的な議論に進むことができます。たとえば、UXのROI(投資利益率:Return On Investment)に関する事例は、ステークホルダーや意思決定者を説得するのにとても効果的でしょう。しかし、上司にプロジェクトの適切なタイミングでUXを取り入れてもらいたいなら、より簡潔に説得しなければなりません。上司を説得するのが早ければ早いほど、より良い結果を招きます。そのためにも、要点を固めて素早く行動を起こしましょう。

The User Experience Professionals Association(UXPA)は、製品開発プロセスにUXを取り入れることで会社が得られるメリットを、わかりやすく具体的にリストアップしています。以下のメリットは的を射ていて、専門家協会からの裏付けもあるものです。

  • 生産性の向上
  • 売上と収益の向上
  • 研修とサポートにかかるコストの削減
  • 開発にかかる時間とコストの削減
  • 維持コストの削減
  • 顧客満足度の向上

UXを導入すれば、結果的に収益が上がることは確かですが、お金以上の価値があることも伝えなくてはなりません。Adaptive Pathの共同設立者で、現在はJawboneのシニアディレクターであるPeter Merholz氏は、「ユーザー体験は戦略的なフレームワークであり、製品とサービスの課題にアプローチするためのマインドセットである。その点で、シックスシグマ(Six Sigma:1980年代に開発された品質管理手法)や総合品質管理(TQM:Total Quality Management) と同種のものである」と定義しました。彼の意見では、「製品とプロセスの質を継続的に向上させるための統合的な哲学」というTQMの定義は、UXにも当てはまります。

Merholz氏は主張をさらに強めて、「UXデザインの専門家のようなものは存在しない」と結論づけています。多くの人は、UXの専門家はたくさんいると反論するでしょう。しかし、UXとはマインドセットやフレームワークなので、必要になる観察と理解、創造のプロセスはさまざまな能力や職務に分解できるのです。

UXのプロセスはUX戦略とUXデザイン、言い換えれば「問題を発見する場」と「問題を解決する場」というように明確に二分できます。またインサイト、アイデア、実装というように3つに分割することもできるでしょう。UX戦略からUXデザインに移行するのは、アイデアの段階です。この段階では、問題が解決策とマッチします。

UX戦略、つまり問題を発見する場は、プロジェクトの中で非常に高難度の段階です。問題を理解し、ニーズを見つけ、現象を解釈しなくてはなりません。この段階では、UXデザイナーは会社のゴールを理解し、ユーザーリサーチを計画して実施して、ステークホルダーに資金を提供してもらえるよう制作物を作ります。

作者 / 著作権保持者:Headspace Design 著作権条項とライセンス:無断転用禁止  掲載元

同僚に話すべきUXの要素

Jesse James Garrett氏による「UXの要素」という構造は、2000年に誕生したにもかかわらず、未だにUXの原則を伝えたり広めたりするのに有効です。彼のわかりやすく簡潔なイラストによれば、UXはいくつかの階層をもち、概念の段階から完成の段階、あるいは抽象の段階から具体の段階に分かれています。

これはUXを完全に表現してはいませんが、同僚にUXを説明する際には最適です。彼らには、あなたがどんな専門知識をもち、与えられたプロジェクトで何ができて、普段どのような仕事をしているのかを知ってもらう必要があります。

 

作者 / 著作権保持者:Jesse James Garrett 著作権条項とライセンス:無断転用禁止 掲載元

それでも信じない人には奥の手のISO 9241-210

自分の視点からしか物事を見ない、あらゆる異質なものを恐れているような人にも出会ったことがあると思います。この種の人々に対処するために、UXの専門家は必ずある能力を備えていなければなりません。それは共感力です。彼らの立場になって考え、彼らが私たちに歩み寄れる方法を見つけ出す必要があります。

ある一節を引用しましょう。

コミュニケーションにおいてもっとも重大な問題は、相手の話を聞くとき、理解するためではなく、返事をするために聞いてしまうことです。

相手が既にこの引用文のような態度なのはほぼ確実なので、自分たちまで受動的にならないようにしましょう。彼らのペースに合わせて、少しずつUXのマインドセットに引き込みましょう。彼らと打ち解け合うために、先述のWebサイト「You Had One Job」の写真が使えるかもしれません。しかしそれだけではなく、より説得できる強固な主張も必要です。たとえば、ヒューマンインタラクティブシステムの規格、ISO 9241-210や、インタラクティブシステムのための人間中心設計、 Part 210は、ユーザー体験においてもっとも重要な規格です。

この基準を説明するのにもっとも適したツールはおそらく下の図です。この図はUXのプロセスを簡潔に表しており、さらに、ユーザー中心のデザインを制作する際に重要な6つの原則も示しています。

  • デザインはユーザーやタスク、環境への明確な理解に基づいてなされる
  • ユーザーはデザインから開発まで関係している
  • デザインはユーザー中心の評価に基づいて生まれ、改善される
  • プロセスは反復する
  • デザインはユーザー体験全体に対応する
  • デザインチームは、多くの分野にわたる専門技術と視点をもつ

作者 / 著作権保持者:The Standard Interaction Design Process 著作権条項とライセンス:無断転用禁止 掲載元

公式の基準を使うことで、UXの原則を裏付け、UXがただの「どうでもいい」領域ではないことを示すことができます。この基準をUXを伝えるツールの1つとして用意しておきましょう。

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