「うまくいくまでは、うまくいっているフリをする」という考え方は新しくはありませんが、UXならではのひねりがあります。プロトタイプの開発とテストの繰り返しを高速で行う能力があれば、すべての準備が整うまで、新製品を作った「フリ」をして、ユーザーのフィードバックを手に入れ、「プロダクトを製作」せずに改善することができます。低予算でうまくやるために非常に役立つ方法です。
Liz Gannes氏はGigaomの記事で、最近のうまくいくまで「うまくいっているフリ」をした提案者のうちAardvarkがもっとも成功していると伝えています。同社はやりたいことはありましたが、資金がありませんでした。
そこでAardvarkはなにをしたのでしょうか? 彼らは自動化されたプロセスのように見える手動のプロセスを作成しました。ユーザー同士を自動で結びつける代わりに、人の手でユーザー間のインタラクションを制御および促進しました。これにより、彼らの持つコンセプトはビジネス行うのに有効な方法であることを示したのです。
そのアプローチは効果がありました。その後、AardvarkはGoogleから5000万ドルで買収されたのです。大成功といっていいでしょう。
「うまくいっているフリ」をするUXのテクニック
UIの専門家で、UXアーキテクトであるEkta Srivistava氏は、UsabilityGeekの記事で、うまくいっているフリをするコンセプトをUXの仕事に導入するための素晴らしい手順を提供しています。それは、PR2Iプロセスです。一種のプロトタイピングの方式で、プロダクト製作の準備ができるまではプロダクトがあるフリをするための「フェイク」をすばやく作ることができます。
PR2Iプロセスとは
ユーザーに最大の価値を与えるプロダクトにたどり着くために、すばやくイテレーションをおこなうプロトタイピングのプロセスです。これは各段階を順番に進み、最後の段階に達したら始めに戻ることを、求めている結果が得られるまで何度でも繰り返す循環型のプロセスになっています。
このプロセスを始める前に、取りかかろうとしている重要なコンセプトをラフスケッチにすることから始める方法をSrivistava氏は提案しています。
第1段階:プロトタイピング
ちょっとしたユーザーリサーチをして、
ビジネスの要件かクライアントからの要求を入手しておく必要があります。そうすれば、それに基づいてプロトタイピングを進められます。詳細な要件が手に入れば、モックアップが作れます。モックアップは、プロセスの初期段階ではスケッチという形をとるでしょうし、プロセスが進むに従ってローファイなプロトタイプへと移行していくでしょう。
UXのベストプラクティスに留意して、それに沿ったモックアップ作りに努めるようSrivistava氏は薦めています。
第2段階:レビュー
プロジェクトの関係者全員を巻き込んで、彼らの期待しているものにプロトタイプを確実に合致させる段階です。うまくいっているものとそうでないものを詳しく書き留めておきます。そうすれば、プロダクトの改良がしやすくなります。
第3段階:リファイニング
なんらかのフィードバックが得られたら、それをはっきりと理解して、次のイテレーションの改良点リストに組み込みます。必要に応じて、またプロセスの第1段階に戻ります。
プロトタイピングの手法
プロトタイプがすべて同じように作られるわけではありません。以下のようなローファイまたはハイファイな手法にまとめることができます。
- スケッチ
- ワイヤーフレーム
- 細部を詰めたプロトタイプ
スケッチ
スケッチはもっともローファイな手法です。プロジェクトの開始時に役立ちます。作りやすく、周囲に配布しやすいです。あなたがコンセプトと要件を完全に理解できていることを、それほど苦労せずに周囲の人が確認することができます。
プロジェクトを進めるにつれて、スケッチはあまり助けにならなくなります。機能をスケッチでテストするのは難しく、プロダクトが複雑になり進化するにつれてスケッチでのテストには時間がかかるようになります。
ワイヤーフレーム
ワイヤーフレームは、プロダクトを計画するためのより複雑なアプローチです。コンピューターソフトウェアを使ってスケッチよりも詳しくワイヤーフレームを作れば、まさしくインタラクティブな部品を組み込むことができます。そうすることで実際に機能するアイデアかどうかの正式なテストがやりやすくなります。
一般に、ワイヤーフレームの段階では、プロダクトの最終的な外観はあまり重要ではありません。ワイヤーフレームをきれいに見せる必要はありませんが、ユーザーが使うときにどのように動作するか確認できるように、細部まで十分に作らなければいけません。
プロトタイプ
プロトタイプは実際に動かすことのできる完成品のモデルです。プロダクトの機能だけでなく、外観と操作感を模倣してデザインされます。ハイファイなプロトタイプをプロセスに導入するときは、プロダクトの完成まではまだしばらく遠い段階でなくてはなりません。プロトタイプはその性質からワイヤーフレームやスケッチよりも作成に時間とコストがかかります。
可能であれば、プロトタイプのコードを完成品に再利用するつもりでプロトタイプを開発することをSrivistava氏は薦めています。この段階ではコストがかさむ可能性がありますが、プロダクト開発の全工程においてはコスト削減となります。
まとめ
「うまくいっているフリ」をAardvarkの規模でおこなうのは勇気がいりますが、小さい規模で素早いプロトタイピングをおこなうのは、あらゆるUXの環境において意味があります。実際にモノを作らずにアイデアをテストすることは、これまでよりもずっと低コストで、リソースを効率的に使っておこなえます。
プロトタイピングを自動化するツールはたくさんあり、高価でないものもあります。つまり、賢いUXデザイナーやUXデザインチームなら、初期段階で多くの額を費やす必要なく、最終的な収益を大幅に高めることができるということです。