過去のUXリサーチを管理する為のカスタマーインサイトリポジトリとは

Neil Turner

Neilは、イギリスのAstraZenecaで働くUXデザイナーです。現在さまざまなUXデザインのプロジェクトを率いています。

この記事はUX for the Massesからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

Building a customer insights repository

新しいプロジェクトを始めるたびに、そのドメインのクライアントについて知っている知識をすべて忘れてしまうとしたらどうでしょうか。クライアントが重要視しているものについてや、使っている製品やサービス、これまでに経験した問題、現在直面している課題についての知識すべてを失ったとします。

このような状況では既存のカスタマーインサイトを基に理論を構築することはできず、毎回いちから始め直さなければなりません。仕事としてはめちゃくちゃですが、多くのチームはその無駄な作業を甘んじてやらねばならないほど、既知のカスタマーインサイトを記録したり、まとめたり、共有し合うことを苦手としているのです。

どこにあるかわからないカスタマーインサイトを探すのは、まるで化石を見つけるような作業です。小さな断片を見つけることは簡単にできますが、それ単体ではインサイトとして十分ではありません。多くの場合、大昔のインサイトや顧客のペルソナ、とうの昔に失われたクライアント調査レポートといったものを探し出せるのが関の山です。

恐竜の骨の破片のように、組み合わせればならない細かい情報や要素は失われていますが、ゆっくりと時間をかければ、それらを繋ぎ合わせた全景が見えてきます。 もし興味があるなら化石を探すのは楽しいかもしれませんが、カスタマーインサイトを探すのは必ずしも楽しいわけではありません。

手に入れた顧客情報が地中深くに埋まったままにならないように、カスタマーインサイトリポジトリの構築を始める必要があります。この記事ではカスタマーインサイトリポジトリの定義や、Airtablereframerなどの無料ツール(編注:記事執筆時)を使ってリポジトリの構築を始める方法について紹介します。

カスタマーインサイトリポジトリとは

カスタマーインサイトリポジトリは、カスタマーインサイトを保存してまとめる場所のことです。加えて、それらのインサイトを必要なときに持ち出して伝える重要な役割を持っています。このリポジトリは、カスタマーインサイトの自然史博物館と見なしてください(ロンドン自然史博物館を知らない人のために説明すると、自然界のすべてを展示している巨大で有名な博物館のことです)。

カスタマーインサイトリポジトリは、誰でも顧客の情報を学ぶことができる場所です。既知のカスタマーインサイトを見つけて分析し、膨大なカスタマーインサイトの履歴の中から有効なものにアクセスすることができます。

カスタマーインサイトリポジトリは、カスタマーインサイトの自然史博物館のようなものです。(写真:Ungry Young Man

博物館がいくつかの階に分かれているように、カスタマーインサイトリポジトリも情報の階層を分ける必要があります。 これによって、膨大な情報から目当ての1つを探し出せるようになります。情報の階層分けは次のように3つに分かれます。

カスタマーインサイトリポジトリの階層

1. インサイト

1番上の階層は、電話調査やユーザーテストセッション、アンケート、フィードバックといった調査から得られた高度なカスタマーインサイトです。インサイトは多くの場合、ペルソナ共感マップJTBDマップ、バリュープロポジションといったドキュメント形式で保存されます。

2. 観察結果

2番目の階層は、それぞれの顧客の観察結果です。また、ユーザビリティテストで判明したユーザビリティの問題点や、カスタマーセッション、アンケートの回答といったフィードバックもこの階層に含まれます。観察結果をトピックごとに簡単に検索し、ソートして分類できるように、これらの情報には日付とタグが付いていることが重要です。

WeWorkのTomer Sharon氏は、このような個別の調査結果を「ナゲット」と呼んでいます。 しかし、「ナゲット」という言葉ではKFCを連想してしまうので、私は「観察」という用語を使うことにします。

3. リサーチデータ

カスタマーインサイトリポジトリの最下層にあり、強固な基盤を形成するのは、カスタマーリサーチの生データです。顧客と電話や会話をした際のメモ、ユーザーセッションの動画、顧客からのフィードバックやフォーラムのコメント、フィルタリングされていないアンケートの回答などが含まれます。

カスタマーインサイトリポジトリの構築

Nom NomDovetailといった、カスタマーインサイトリポジトリを素早く簡単に構築する優れたプラットフォームが増えてはいます。しかし、私が望んでいたすべての要件を満たすプラットフォームを見つけることはできませんでした。そこで私は、複数のツールを使用してカスタマーインサイトリポジトリを構築しました。これらのツールはすべて無料で利用できます(編注:その後、一部有料になりました)。

Confluence

Confluenceは、簡単にWikiを操作して高度なインサイトやそのアイデアを提示するため、または顧客とのインタビューのメモといった生データを貯めておくために使用します(OneDriveやGoogle Driveも顧客調査の生データを貯蔵するのに使用できます)。 ConfluenceやSharePointといったWikiにアクセスできないなら、WordPress.comなどのサービスを使用して簡単なWebサイトを構築して活用すると良いでしょう。

主にConfluenceを介してまとめられた顧客のインサイト

Reframer

Reframerは、Optimal Workshopが提供する優れた量的データの分析ツールです。現在は無料で提供されていますが、2019年5月以降は変わってしまうようです。Reframerを用いれば、リサーチでの観察メモを入力(またはインポート)して、あらかじめ定めた分類法に基づいてタグ付けすることができます。加えてタグ付けされたメモは、Reframer内で閲覧し、Excelスプレッドシートとしてエクスポートできます。

私は顧客調査の生データを個々の観察ごとに細かく分けて、一貫したタグを追加するためにReframerを使っています。このタグは観察結果を網羅したトピックを反映しています。こうすることでそれぞれの観察結果がメタデータと関連するため、後述のAirtableの中で結果を検索し、フィルタリングし、グループ化しやすくなります。

Reframerは顧客1人ひとりの観察結果をタグ付けするために使用できます。

Airtable

Airtableは、スプレッドシートとデータベースの間をつなぐ役割をします。これによって、情報のクロスリファレンスやフィルタリング、検索、トピックごとのグループ化が簡単になります。Airtableはとても優れていて使いやすいソフトなだけでなく、1200行あるシートの表が埋まるまで無料で使用することができます。

観察結果をReframerからエクスポートして、リサーチや参加者の詳細情報と一緒にAirtableに追加することもできます。

観察結果やリサーチの詳細はairtable.comを通して見ることができます。

カスタマーインサイトリポジトリの運用

カスタマーインサイトリポジトリを運用するならば、カスタマーリサーチを記録するときに多少の追加作業が必要になります。しかし長期的に見れば、その作業は十分に価値があるものです。カスタマーインサイトリポジトリを運用するプロセスは次のとおりです。

1. カスタマーインサイトを取得し、アップロードする

ユーザビリティテストでのやりとり、電話調査、アンケート結果なといった形でカスタマーリサーチの生データを収集し、ConfluenceやOneDrive、Google Driveにアップロードします。

2. カスタマーリサーチの詳細を記録する

電話調査やユーザビリティテストなどで得られたカスタマーリサーチの詳細を、Airtableに記録します。このとき、リサーチノートなどのカスタマーリサーチの生データへのリンクも合わせて書きましょう。Airtableの表には実施したリサーチの記録と、関わった顧客の記録を載せてください。

3. それぞれの観察結果を識別してタグ付けする

ユーザビリティの問題点や引用、アンケートの回答、観察結果といった個々のインサイトや結果を、Reframerを使用してタグ付けします。タグ付けされた観察結果はExcelスプレッドシートとしてダウンロードし、Airtableに貼り付けることができます。

4. 高度なインサイトをアップデートする

JTBTやペルソナ、対処すべきユーザビリティの問題などの高度なインサイトを、観察結果に紐づけアップデートします。可能であれば高度なレベルのインサイトから、その元となった電話調査のメモなどのカスタマーリサーチを参照できるようにしましょう。

まとめ

カスタマーインサイトリポジトリを構築すると、カスタマーインサイトの貯蔵場所が生まれます。それだけでなく、それぞれの観察結果を抽出してタグ付けするプロセスは、ペルソナやJTBD(Job-To-Be-Done)、バリュープロポジションといった重要なインサイトを得る役にも立つと私は信じています。自身のカスタマーインサイトリポジトリを構築しましょう。構築の作業は想像より複雑ではありません。これを構築することによって、インサイトをつねに新鮮に保つことができ、少ない手間で活用できるようになるでしょう。


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