UXデータを用いなければ、それはUXデザインではない

Micah Bowers

Micahはブランドデザインやイラストを用いてクライアントのストーリーテリングに貢献するアメリカのデザイナーです。

この記事はToptalからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

If You're Not Using UX Data, It's Not UX Design

UXデザイナーはさまざまな問題解決の手法を思うままに使うことができます。しかしその手法は、ユーザーリサーチに裏付けされたインサイトに基づいて発揮されなければいけません。ユーザー中心のデータがなければ、UXデザイナーは直感と経験を頼りに仕事を進めることになります。なぜこれが問題になるのでしょうか?

直感と経験は確かに貴重なアセットの一つではありますが、これらとUXデータはまったく異なります。直感や経験を頼りにデザインすると、「デザイナーが一番よく解っている」という危険な憶測が生まれてしまうのです。

残念なことに、多くのデジタルプロダクトがこの浅薄な憶測を基に作られています。そこで、私たちは次の規則を提示しようと思います。UXデザインはUXデータから始めなければなりません。デザインがリサーチで得られた知見や、実際のユーザーのインサイトに基づいていないなら、それはUXデザインとは呼べません。

デザイナーのあらゆる努力は、ユーザー体験という唯一の目標のためであり、その他すべての目標は二の次です。

デザインとビジネスにおける直感の問題として、直感により個人の特別なインサイトを見つけてしまうことで、他の直感をもってそれが違うということを証明することが不可能な点が挙げられます。デザインやビジネス、そしてその他の複雑な取り組みはコラボレーション可能と同時にエビデンスに基づいている必要があります(ツイート訳)

デザインから直感を完全に排除することはできません。しかし、UXデザイナーは直感と実際のユーザーのインサイトやUXデータとをはかりにかけてクリエイティブな決断をすべきです。

過去の成功は、UXリサーチの代わりにはならない

複雑なデザインの問題を解決した感覚を繰り返したり、自分のクリエイティビティやロジック、各プロセスにおける決断がユーザーの満足に繋がった経験を再現するのは簡単ではありません。

もちろん、デザイナーが以前のプロジェクトで効果的だった方法論やツールを使えば、過去の経験が将来の問題解決に役立つこともあります。これは素晴らしいことです。過去の仕事の経験を一掃して、新しいデザインに着手するのは愚かなことでしょう。

しかし過去の成功はあくまで1つの問題を解決したソリューションでしかなく、別の場面で大規模に適用するときには落とし穴にもなり得ます。もし現在のプロジェクトをUXデータ不在のまま進めようとしているのなら、危険は倍増します。

解決策

すべてのデザインの課題には固有のソリューションがあります。過去のデザインが達成したことについてポジティブな面とネガティブな面の両方から検討し、ソリューションに至った経緯を見直しましょう。結果ではなく、プロセスに注目するのです。

続いて、UXリサーチのプランを制作する際に検討で得られた結論を役立てましょう。優れたUXリサーチのプランがあれば、デザイナーとステークホルダーが同じ目標に向かうことができます。このプランには、プロジェクトで生じる疑問やタイムライン、適用されるリサーチ手法などが含まれます。

過去の実績でリサーチが果たした役割を理解することで、デザイナーは将来のプロジェクトでより優れたプランを実装できるでしょう。

UXリサーチは複雑である必要はありません。プロジェクトで生じる疑問や用いる手法は1ページにまとまります。(Glenn Carstens-Peters

ユーザーに親しみを感じることと、ユーザーの声を聴くことは別

1つの業界で長く働いていると、デザインしたものを使うユーザーについて、多くのことを知ることができます。こうした深い理解があれば、デザイナーはユーザーのニーズを予想し、ユーザーが本当に満足するプロダクト体験に近づけることができます。

しかしユーザーについて詳しくなると、実像とは異なる形でユーザーのことを一般化してしまい、プロダクトのUXを妨げてしまうかもしれません。

ユーザーの嗜好や期待は些細なことでも変わってしまうもので、時とともに変わっていきます。ユーザーについて長年凝り固まった理解をしているなら、改めてリサーチを実施するべきです。

解決策

既にあるユーザーに関する知識を、新たに行うプロダクトテストやフィールドスタディー、インタビューで得られた知見と組み合わせましょう。そうすることで、ユーザーがその環境の中でどのように振る舞うのかが明らかになり、実地体験なしでは理解しにくい文化的な影響を把握できます。

さらに、UXリサーチプロセスの一環として、デザイナーは「ペルソナ」を作る必要があります。ペルソナとは、プロダクトの代表的なコアユーザーを詳細に説明したものです。ペルソナ作成はUXデザインの中でもっとも基礎的なステップであり、ペルソナを用いることで特定のユーザーグループに対する戦略と目標を修正し、「誰のためにデザインしているのか」という疑問を解消することができます。ペルソナは1人の人間として描かれますが、多くの人々を観察して分析した結果をまとめた人物像です。

優れたリサーチに基づくペルソナは、次のようなものです。

  • もっとも重要なターゲットユーザーを表現した写真がある
  • コアユーザーの特徴や行動、行動、動機、目標、ニーズがまとまっている
  • デザイナーとステークホルダーが共通のユーザー像を持つことができる
  • デザイナーがユーザーにとってもっとも重要な機能はどれかを決める助けになる

ペルソナのおかげでUXデザイナープロダクトのコアユーザーに注目し続けることができます。(Miklos Philps

ヒューリスティック分析はUXリサーチではない

ヒューリスティクスとは、あらかじめ定義されたユーザビリティの原則(大まかな経験則やスタンダード、慣習)で、長い時間をかけて観察されテストされてきたものです。ヒューリスティック分析では、経験豊かな評価者がデジタルプロダクトからユーザビリティの問題を特定して、その深刻度を評価します。これによって、UXデザイナーは素早くデザインの欠点を知り、対処することができるのです。

ヒューリスティック評価は必要なものですが、ユーザーリサーチとは違って、デジタルプロダクトのデザインに必要なUXデータをもたらしてはくれません。ヒューリスティクスはあらかじめ定義されたものです。判断を下す際のベストプラクティスではありますが、実際のユーザーから得られるフィードバックの代わりには決してなりません。

Susan Weinschenk氏とDean Barker氏(Weinschenk and Barker 2000)は、ユーザビリティガイドラインとヒューリスティクスについて多くのソース(Nielsen's、Apple、Microsoftなど)を対象に調査を行い、チェックすべき20のユーザービリティヒューリスティクスを考案しました。

解決策

常にユーザーリサーチに基づいてプロダクトを作りましょう。リサーチを実施するまでは、デザインに着手したりヒューリスティック評価を行なったりしてはいけません。正しいプロセスは次のようになります。

  1. UXデザインプロジェクトは、ユーザーの行動の理由を知るために質的なリサーチから始めましょう。質的調査の結果は好みや感情といったもので、数値ではありません。インタビューやフィールドスタディー、エスノグラフィーといった方法で得られます。
  2. プロダクトやプロトタイプがユーザーテストで使えるようになったら、人々がどのようにプロダクトを操作するのか知るために量的なリサーチを実施しましょう。量的なデータは成功率やタスク達成率のような、計量可能なエビデンスに基づいています。アナリティクスやA/Bテスト、アイトラッキングといった手法で得られます。

携帯電話でソーシャルネットワーク端末でもあったMicrosoft Kinは、2010年の夏に48日間だけしか市場で生き残ることができませんでした。3年早く登場していたiPhoneによってユーザーはスマートフォンに精通していたため、ゲームもできずアプリもできないこのデバイスは、高まる期待性能を満たすことができなかったのです。

流行のデザインにはテストが必要

UXデザインに対する私たちの価値観はいつも同じとは限りません。あらゆるプロセスやツール、結果はつねに議論の対象になり、更新されています。すべてのデザイナーがスタンダードな方法論を採用したように思えても、思考や行動が覆されるような破壊的なアプローチを誰かが思いついて、常識は常に揺さぶられるものです。

UXデザインの分野では、つねに新たなデザイン理論や人気の流行が生まれていますが、一方でそれらは唐突に業界から排除されたり、ユーザーを困らせたりする可能性があります。すべての手法が必ずしも的確とは限りません。

ARは、特にECアプリにおいては無限の可能性があります。しかしUXデザイナーは、プロダクトのユーザー体験を向上させられるときのみ流行の技術を使うように注意すべきです。

解決策

既に確立されたデザインの原則と流行の手法とを照らし合わせて、どちらが自分のプロダクトに相応しいかを検討しましょう。その結果プロダクトをアップデートすることになったのなら、変化する機能についてのユーザビリティテストとヒューリスティック評価を組み合わせてください。

またUXデザイナーは、ユーザーフィードバックとエキスパート分析を次のように利用できます。

  1. 流行のUXを採用してもプロダクトの一貫性を保ち、ユーザーに利益をもたらすことができるのか判断することができる
  2. 自分のプロダクトの全体的なユーザビリティについて広く理解することができる

UXデータはデザインプロセスを通して集めることができる

すでにUXデータの恩恵を受けている人であれば、ユーザーリサーチがデジタルプロダクトのデザインにもたらす影響を実感したことがあるでしょう。推測が減ることで、目的に即した効果的なプロダクトの機能を作り、ユーザーの生活にポジティブな影響を与えることができます。

しかし、UXのプロセスに関与し続けるときは、注意を切らさないでください。デザイン作業を繰り返してプロジェクトが急速に進むようになると、データドリブンなUXが変化して、デザイナーなら誰もが知るような、思考が行き詰った状態に戻ってしまうことがあります。

解決策

リサーチはUXプロジェクトを通して実施し続けましょう。プロジェクトの初期では、ユーザーリサーチはチェックボックスに回答させるようなアンケートではいけません。あらゆるUXデザインサイクルの段階に、データを集めてユーザー中心のインサイトを獲得する機会はあります。

以下の表はUXデザインのプロジェクトのステップと、それぞれに対応するユーザーリサーチを示しています。ここで重要なのは、どのようなデザインの意思決定においてもユーザーのニーズが前提にあることです。

UXデザインのどのステップにも、デザイナーが活用できる使いやすく効果的なリサーチ方法はたくさんあります。(Nielsen Norman Group

データドリブンでないならUXデザインではない

UXデザイナーとは、スワイプやスライドを繋いで、うつろな目で画面を凝視するだけでシームレスな体験を編み出す、報われない仕事かもしれません。デジタルプロダクトには目に見えない多くのインタラクションが存在し、プロダクトが上手く機能しないときのみ表示される微細なデザインも無数に組み込まれています。もし称賛の量で仕事を判断するのなら、私たちは失望と自己満足しか得られないでしょう。しかしありがたいことに、もう1つ道があります。

ユーザーのニーズは、UXデザイナーの中心的な関心事でなければなりません。そうであるなら、称賛を求めることに価値はなくなります。ニーズに焦点を絞るためには、ユーザーリサーチを厳格に行うことだけが重要です。Steve Jobs氏も20年前にニーズがもっとも重要であると述べています。「顧客体験から始めて、それからテクノロジーに戻らなければなりません。」

データとリサーチは、UXの意思決定プロセスにおける根本です。ほかのすべての要素は補助でしかなく、優れたデザインを作ることからは逸脱しています。UXデータが欠落したあらゆる「UX」プロジェクトは、深刻な崩壊の危険をはらんでいるのです。


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