UX MILK編集長の三瓶です。皆さんいつも飲んで(読んで)くれてありがとうございます。
実は最近UX MILKを取り巻く環境が少し変わり、改めてこれって何のためにやっているんだっけなどと、色々と考えをまとめたりしていました。せっかく新年度ですので、久々に少しコラムめいた記事をさらっとお届けできればと思います。
「UXデザイン」の話を始める前にすべき話
前段ですが、UX MILKなんで、これから「UXデザイン」の定義の話をします。
これに関しては常に議論が巻き起こり、時には論争にまで発展することもありますので正直あまり気が進みません。面倒くさいですよね。ぶっちゃけ、僕でさえなんだっていいだろう、と吐き捨てることもあります。
ですが何を血迷ったか、そんな呪いの言葉を自分から背負ってしまったのが私のプロジェクトなんで、ちゃんと向き合っていこうというのがこの記事の趣旨でもあります(半分くらいジョークです)。
そんなわけで皆さん、UXデザインについての主義主張はおありかと思いますが、まずは気分を落ち着かせてください。皆ベクトルは違うかもしれないけど同じUXを良くしたいライトサイド側の部類だと思うんで、まずはフォースの力を信じる者同士、仲良くしましょう。
UXデザインという言葉の定義は確かに広く、さまざまな捉え方があることは多くの方が知るところだと思います。そして大抵どれも間違っていないはずです。
広義なのか狭義なのか。インタラクションなのかビジュアルなのか。マーケティングなのかブランディングなのか。全部含まれているのでどんな話も関連付けられてしまいますね。
大事なのは、誰かとそういった話をするときに自分がどういった立場・見方で語っているのか、コンテキスト(文脈)を相手と共有することだと思います。そこの些細なズレが摩擦を生んでしまうので気をつけなければなりませんが、そういうもんだと、ひと呼吸おいてすり合わせをすると話しやすいのかなと思います。
最近では「UXなんて言葉は使わない」という方も多いですが、詳細の議論をしていったらそういうことにもなるのも理解できます。とはいえ、ここまで広まるくらい便利な言葉であることも事実なので、願わくばそれをタブーワードのように扱わないでほしい、というのが呪いを背負った者の願いであります。
UX MILKの言う「UXデザイン」って?
ではUX MILKの場合、UXデザインをどう捉えているのかというと、それを語るためにもまずはメディアのスタンスからお話しします。
メディアのスタンス
UX MILKの配信スタンスとしては、UXデザインに関するさまざまな意見・主張に触れてほしいというのが第一で、今までUX MILK(というか僕)自身が「UXデザインとは〇〇だ」と定義をしたことはほぼありませんでした。むしろ、さまざまな著者のさまざまな定義をあえてごちゃまぜで取り扱っています。
UXデザインというのはそもそも正解があるような領域だとは思っていませんし、皆さんが向き合うべきユーザーに対する答えは、詰まるところ自分で見つけるしかありません。日々の記事を参考程度に飲んで(読んで)頂いて、常に思考停止せずに悩み続けることが正しいデザインの向き合い方だと考えています。
メディアのスコープ
それでも敢えて、UX MILKとして言ってみるならばUXデザインは「ユーザーが触れる・感じることすべてをきちんと、彼らに向けたデザインにしてあげること」くらいの広義な定義で捉えています(ただ、繰り返しますが日々の記事に関してはその記事の著者の主張を曲げずにそのまま配信していますので、色々な流派が見て取れるかもしれません)。
UXデザインはどうしても「デザイン」という言葉に引っ張られ、グラフィカルなものであったり、UIのことを指しているのだと世間には思われがちですが、それだけではなくコンテンツ、企画、マーケティング、エンジニアリング、カスタマーサポートまで、UXデザインは全職種に関係するものだと思っています。
プロダクトやサービスにおけるユーザー体験/経験はすべてのタッチポイントが関わってくるので、チーム一丸となってユーザーと向き合う姿が理想と考えています。
更に言うと、今はユーザーの課題解決をしようという風潮が強めに出ていますが、本当はそこから先にある、ユーザーが思いもよらなかった新しい価値を導き出せるところにUXデザインの真の面白さがあると思っています。
何のためのUXデザイン?
さて、言葉の定義に十分に触れたと思うので次へ。
そもそも僕たちは何のためにUXデザインをするのでしょうか。
ある日うちの社長にこれを聞かれ、漠然と「世の中のあらゆるユーザー体験をもっと良くしたいから…ですかね」的なことを言ったのですが、そう言うとこんな答えが返ってきました。
「良いユーザー体験ってのは人によって違うじゃん。極端な話、他人を蹴落としてまで金儲けに走ることが幸せな人だっているし、その人のユーザー体験をよくすることで不幸になる人もいるかもしれない。三瓶はそんな世界を作りたいの?」(確かこんな感じのことを言っていた)
そんなこと言われても…とその場では思ったのですが、確かに一定の思想や哲学がないと、そういった人も出てきてしまうよな、と納得しました。そういった意味では、今までUX MILKはビジョンはほぼないようなものだったので、次第に恥ずかしい気持ちになりました。
UX MILKが目指す世界観
そこから考えをまとめて言語化するのに時間がかかったのですが、その過程の中で、自分が最初に何故UXデザインに興味を持ったかを立ち戻ってみました。
僕がそれまでやっていたデザインといわれる仕事は、どちらかというと感覚でしか判断できなかったことに対し、UXデザインではユーザー体験を考慮して設計することで、人に行動を促してそれが価値提供となることが面白いと感じたことを思い出しました。
僕は音楽をやるのですが、人の生活は常に楽しく心豊かなものであるべきと思っていて、つまらないことはしたくないし、細かいことはいいから皆ハッピーに生きればいいと思ってます。そんな背景もありつつ、どうやったらこの先もっとハッピーにクールに生きれるかなと考えたとき、ひねり出されたのは以下のようなビジョンでした。
UXデザインによってテクノロジーとヒトが共生し、持続可能な世界をつくる
いきなり真面目か。自分でもテンションの差にびっくりしますが、ここから先は真面目です。
社会へもたらす影響に責任を持つ
今後も多くのテクノロジーが登場する中で、僕は社会がどうあるべきかをより考えるべきだと思っています。
「テクノロジー」とか書くと、WebやアプリのUXデザインなどからは一見少し遠い世界観のように思えるかもしれません。ですが、今やWebやアプリは生活の一部ですし、今後もデバイスやUIはより生活に溶け込んでいくでしょう。そして僕たちはそれらをデザインするとき、個の「ユーザー体験」よりも「社会」をより意識していかねばならない段階に来ていると思います。
たとえば、VR、AI、ブロックチェーンなどの先進技術、結局僕たちの生活にどう役立つんでしょうか? そうなったときに社会はどう変わるのでしょうか? まだ世界的にも技術専攻の話が多いですが、それを生活にどう落とし込むかというのは紛れもなくUXデザインの領域ですよね。
そして先ほどの話じゃないですが、いくらUXが向上して生活が便利になったとて、倫理を外れてまでそれをやるのか? それが自分たちの子供や孫の世代が住めない世の中にするようなことを本当にやるのか? という、いわゆる「倫理的(=Ethical)」であったり「持続可能(=Sustainable)」かどうかという議論もあります。
「持続可能」という言葉を用いたのは環境資源などの問題もそうですが、たとえばサービスを使い続けることで精神が疲弊していくことなども嫌ですよね。今だとSNS疲れなどといいますが、今後もテクノロジーの台頭によって、人のつながりや関係性、心豊かさといったものが脅かされることは出てきます。
そういったときにいち早く警鐘を鳴らすべき人こそ、UXデザインに携わる僕たちなのではないでしょうか。
UX MILKでは皆さんの行うデザインの先により良い社会があればと割と本気で願っています。
まとめ
大きなことをひとしきり語ってみましたが、まだまだUXデザイン業界も小さく、目下ではWebとアプリの領域を出ていなかったり、道のりはまだまだ遠いです。まだまだUXデザインの考え方も世間的に広めていかなければならないですし(言葉が広まるかどうかはどうでもいいですが)、UX MILKはそこに少しでも作用できるようにやれることを一つ一つやっていきますので、今後ともお付き合いいただければ幸いです。
ちなみに、皆さんも「何のためにUXデザインをするのか?」と、考えるきっかけになれば嬉しいです。
今日も一日がんばるぞい。