UX DAYS TOKYOから学んだ、UXデザイナーが意識すべき4つのこと

岡田孟矩

カナダの制作会社でデザイナーになり、UXデザインに従事。ドイツのベルリンにてフリーランスデザイナーとして活動後、日本に帰国。現在株式会社yappliのUX/UIデザイナーとして、WEBやアプリのデザインを手がける。

こんにちは、UX/UIデザイナーとして働いている岡田です。普段は管理画面のデザイン改善や、時にはアプリのデザインをしています。

先日「ビジネスのためのUX」をテーマとしたUX DAYS TOKYO 2019に参加してきました。そこでの学びについて、私自身の意見も交えながらいくつかピックアップして皆さんに共有したいと思います。

1. 調和の取れた組織運用

おそらく皆さんの多くは、良いUXデザインを作り上げたい、使いやすいプロダクトを提供したいと考えているのではないでしょうか。そんな皆さんは、あるプロダクトのUXデザインをするときにはまず何から考え始めますか? ユーザーインタビューの準備からでしょうか? それとも情報設計やブランドからでしょうか?

Adaptive Path社の元サービスデザイナーであり、現在リードデザイナーとして活躍しているNick Remis氏の講演『サービスデザインで現代的な体験の創出を』では、「プロダクトのUXを考えるとき、サービスの質の向上につい目がいきがちだが、会社組織のオーケストレーション(調和の取れた組織運用)の方がはるかに重要である」と述べていました。

たとえば、ユーザーが利用したとある宿泊予約サイトで上手く予約ができなかったとします。このときサポートセンターに連絡をしてすぐさま問題が解決されるのであれば、ユーザーの満足度は向上するでしょう。しかしもしサポートセンターからまったく返答がない、あるいは見当違いの案内をされた場合には、ユーザーは二度とそのアプリを使わないでしょう。

私自身もUXデザイナーになりたての頃には、Webサイトやアプリなどといったプロダクトの体験ばかりに目がいってしまい、それを取り囲む環境まで考えずにデザインしてしまうことがありました。Remis氏の講演からは目に見えるプロダクトだけではなく、プロダクト全体を支える会社組織の運用にまで範囲を広げたUXデザインを考えることが重要であると、改めて認識させられました。

またRemis氏は「デザイナーはオーケストレーションのためのファシリテーターである」とも述べています。つまり今後デザイナーには、プロダクトのUXを向上させるために、プロダクトそれ自体のUXに注力するだけではなく、それを作り上げる組織のファシリテーション能力まで求められると言えるでしょう。

2. 目的基づいた最適な機能

かつて私がエンジニアとして仕事をしていたとき、「自社の技術をどう使うのか?」とばかり考えていました。しかし、その考え方は間違っており「達成したい目的に対して適切な技術は何なのか」といった順序で考えることが大切なのだと、しばらくかかってから気がつきました。言い換えると、まず世の中の課題を捉えてから、その課題を持つペルソナに合わせた適切な手段を考えることが重要だということです。

ゲイツ財団初のUXデザイナーであるPlatz氏の講演でも、課題解決のための最適な手段について話しています。

彼女は音声UIにまつわる講演の中で、「なぜ音声を使ってデバイスを操作しなければならないのかの理由が必要」そして「どういったユーザーにとって音声という手段が必要であり、ビジネス的にもどのようなインパクトがあるのか考えることが重要」だと述べていました。

UXについて考えるときよく機能ありきで考えてしまいます。しかし機能はあくまで手段に過ぎません。最も重要なのは達成したい目標を設定し、そのターゲットとなるユーザーを考え、彼らにとって最適な機能が何かを考えることなのだと、Platz氏の講演を通して、改めて考えさせられました。

3. ビジネスの戦略や方針に則ったUXリサーチ

UXデザインにおいてUXリサーチはとても重要です。リサーチなしには、正確なペルソナもカスタマージャーニーマップも作れないでしょう。しかしながら、重要な項目であるにも関わらずUXリサーチを軽視したままUXデザインに手を出してしまう人も多くいるのではないでしょうか。

とはいえ、いきなりUXリサーチに取り組もうとしても何を調べたら良いのか、何を質問したら良いのか、作成した質問内容が本当に役に立つものなのかといった判断がつかないと思います。

今回Mule Design Studioの共同設立者で戦略ディレクターでもあるHall氏の講演『リサーチで最初の質問するべきこと』でも、ユーザー調査の重要性を説いています。Hall氏の講演内容で講演会の中で特に印象を受けた内容として「ユーザー調査で質問すべき内容は会社組織と共に考えなければならない」「質問される人が確信をもって答えられる質問内容でなければならない」「ただデータを集めて満足するのではなく、そのデータが本当に役に立つのか考えなければならない」の3つがありました。

ユーザー調査で尋ねる内容は、会社のビジネス戦略や方針に則った質問でなければなりません。そうでなければ、後々できたプロダクトが会社の戦略や方針とは方向性のまったく違うものになってしまいます。良質な質問内容を考え、集められたデータをうまく活用するためにも他部署間との協力は今後ますます避けられないでしょう。

4. 長期的にプロダクトを利用してもらう為の施策

私たちの目指すデザインは使用されることももちろん重要ですが、使用し続けてもらうことが最終的なゴールではないでしょうか? Webサイトやアプリのデザインも、高い広告費を払えば多くの人目に付き訪問数やダウンロード数を簡単増やせるかもしれませんが、それによって継続的にサービスを使ってもらえる保証はまったくありません。

Googleの 「シニア」UXデザイナーであるHiggins氏の講演『継続的ユーザーオンボーディング』でも、初回のUX設計だけではなく、長期的にユーザーに使い続けてもらうための施策の重要性を強く説いていました。具体的にはユーザーを、「初めてサービスを利用した」「サービスを少しだけ使用したことがある」「サービスがある程度使いこなせた」「サービスが好きになり使い続けている」などのユーザーのサービスに対する熟知度に分けて下に示したような施策を講じているとのことです。

UX DAYS TOKYO 2019 Krystal Higgins氏による『継続的ユーザーオンボーディング』の資料の一部

Defaults
はじめに何をすべきかユーザーを牽引する手法。ユーザーに大量のデータを入力する手間を省く。(例:テキストボックスやプルダウンメニューの初期値など)

Inline
同一の要素の中に紛れさせて説明する。(例:Instagramのストーリー部分に例となる要素を紛れこませたり、SNSのニュースフィードに紛れ込ますなど)

Reactive
フィードバックを返してユーザーを導く。(例:アップローダーにファイルをドラッグさせると、アップロードできる領域が青く光るなど)

Proactive
ユーザーに強制的に情報を送る。(例:サイトが開いたときに強制的に始まるチュートリアルやPUSH通知など)

On-demand
ユーザー自ら解決策を探す方法を提供する。(例:Q&Aなど)

これらの施策をユーザーにとって適切なタイミングで使うことが重要です。出すべきタイミングについては、会社全体でサービスデザインを考え、実際にサービスを使用しているユーザーへのインタビューを地道に行うことで探していきます。

まとめ

今回のUX DAYS TOKYOへの参加を経て、UXデザイナーはプロダクトのデザインだけではなく、会社組織のオーケストレーションも考えていかなければならないと感じました。もはやUXデザイナーと言う職業はサービスのファシリテーターであると考えても良いかもしれません。UXデザイナーはますます必要とされ、責任の重さを感じつつも、社会に大きな変化を与える職業だと考えるとなんだか胸が熱くなります。

平成という時代が終わり令和が始まりましたが、時代が変わっても時代の変化を見失わないよう、会社全体でユーザー調査やUXデザインに取り組む事が大事ではないでしょうか。


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