人々がどのようにインターフェイスに対してインタラクションをするのかを見ることで、何が機能していて、どこの改善が必要なのかが分かります。
このような行動観察はユーザー体験を理解するために不可欠ではありますが、それだけでは不十分です。
プロダクトが本来の機能を果たし、適正な価格であり、信頼性があるからといって、必ずしも良いユーザー体験が提供されるわけではありません。
ユーザーは体験が複雑すぎるか、難しいと感じているかもしれません。たとえば、経理系アプリのような多くのB2Bソフトウェアプロダクトは、組織のニーズを満たし、信頼性がありますが、多くの手順と混乱を招くような専門用語のオンパレードによって、あまりいい体験を提供できているとは言えません。
優れたUXを作り出すためには、行動の理解や測定も去ることながら「態度(attitude)」についても同様のことをしなければなりません。
プロダクトの機能についてだけではなく、感情についても考えなければならないのです。態度はユーザーがプロダクトと対面したり対話したりしているときにどのように感じるかを説明するだけでなく、将来プロダクトやアプリケーションを使用する予定があるのかどうかの説明にもなります。
ユーザーの行動を理解し予測したい場合は、彼らの態度を理解する必要があります。では「態度」とは改めて何なのでしょう?
態度を3つの要素に分解する
態度とは、人、プロダクト、組織、または体験に対して好意的または好意的でない反応をすることを指します。人々は企業、Webサイト、そしてその体験について、常に賛否両論を持っています。
しかし、UXやユーザビリティの概念と同様に、態度は関連する要素を含む多次元構成要素と考えることができます。何十年もの間、社会科学の研究者たちは態度をモデル化し測定してきました。
態度を分解する最適な方法については議論がありますが、その中でも影響力のあるモデルの1つはABCモデルとも呼ばれる3者間の態度モデルです。
このモデルでは、態度は「認知」、「感情」、そして「意欲」の3つから構成されています。これらは「影響(affect)」、「行動(behavior)」、「認知(cognition)」(ABCモデル)とも分類されることもあります。
この概念を説明するには人々に馴染みがあり、そして態度がはっきりと分かれる3つの要素を使います。それは「ヘビ」と2つのブランド、「Apple」と「Facebook」です。
認知:ブランド、接点、または経験について人々が持っている確信。
- ヘビは齧歯動物の数を調節します。
- Appleは革新的なプロダクトを作ります。
- Appleのプロダクトは非常に高価です。
- Facebookは私を友人や家族と結びつけます。
- Facebookは自分のプロフィールに基づいて広告を表示します。
感情:ブランド、プロダクト、接点、または経験に対する感情。
- ヘビの周りにいると私は緊張します。
- Appleプロダクトは世界をより良い場所にします。
- Appleは私からできるだけ多くのお金を絞り取りたいと考えています。
- Facebookは私を私の家族とより親密になったような感覚にさせてくれます。
- Facebookは私のデータを不当に使用しています。
意欲(行動):人々がやろうとしていること。これは行動とも呼ばれます。実際の行動と混同されがちですが、振る舞いからくるものと考えてください。
- これからヘビを拾います。
- 私は母が新しいiPhoneを持つことを勧めます。
- 私は別のMacBookを買うつもりはない。
- 今夜私たちの休暇の写真をFacebookに投稿します。
- 今月はFacebookをボイコットするつもりです。
この3者間モデルの下では、態度は確信、感情、そして意図として考えることができます(図1参照)。これらは通常他のものと相関しています。
経験やプロダクトについての前向きな確信は、前向きな態度や好意と一緒になる傾向があります。しかし、相関性は必ずしも高いわけではないので、それらを分離し各要素がどのように異なる動作につながる可能性があるかを理解することには役立ちます。
たとえば、人々はAppleのプロダクトは高価だと思い(否定的な確信)、Appleがそれらを気にかけていると思い(肯定的な気持ち)、プロダクトを購入して推奨しようとすること(積極的な意思)ができます。
態度の測定
態度を直接観察することはできません。代わりに、私たちは自分たちが測ることができるものから推論しなければなりません。非言語的な行動(蛇の場合は心拍数など)を測定する方法はありますが、自己申告された測定値を利用する方が通常はるかに簡単です(そして多くの場合効果的です)。
標準化されたアンケートからの評価尺度がもっとも一般的な方法です。ユーザー体験の場合、これはSUS、SUPR-Q、UMUX-Lite、ネットプロモータースコア、および形容詞リスト(Microsoft Desirability Toolkit等)の項目になります。ここに態度の各側面を測定について考える方法があります。
認知:ユーザーの確信が賛成および反対意見を評価します(5点リッカート尺度等)。
- Appleのプロダクトは高価です。
- iTunesは使いやすいです。(SUSおよびUMUX-Liteの一部)
- FacebookのWebサイト内を移動するのは簡単です。(SUPR-Qの一部)
- 全体的に見て、Facebook市場での購入手順は非常に簡単/困難でした。(SEQの一部)
感情:影響を評価するために形容詞的尺度を使用し、同意/不同意の尺度を使用します(SUPR-Q、SUS、満足度、望ましさのツールキット)。
- Facebookの情報は信頼できます。(SUPR-Q)
- 次のうちどれがAppleを最もよく説明していますか?(Desirability Toolkit)
- 独創的
- 最先端
- 高価
- エリート
- 感動的
- 革新的
あなたは、態度の認知的要素と感情的要素の規模にかなりの重複があることに気付くでしょう。
意欲:将来の意図について訊ねます。
- Appleを友人や同僚にどのくらい推薦しますか?(NPS)
- 私は将来FacebookのWebサイトを訪れる可能性があります。(SUPR-Q)
図1は、態度の側面について考える方法と測定する方法を示しています。
態度を使い行動を予測する
態度をこれら3つの要素に分類すると、ユーザー体験を説明するのに役立つ一方で、行動を予測することもできます。以前の分析では、Webサイトのユーザー体験に対する考え方(確信と感情の両方を考慮したもの)が将来の購買行動を予測することが可能だということがわかりました。高い満足度がより高いレベルの忠誠心、購買意欲、そして最終的には購買につながるという証拠があります。
また、確信と感情(SUS)の両方が意図を予測(NPS)していたこともわかりました(図1にもこれらを結ぶ矢印が記されています)。NPS(行動意向)はソフトウェア産業の成長を予測し、14の産業のうち11の産業における将来の成長と相関していました。
行動を変えたい場合は、態度を理解して測定する必要があります。ユーザーが困難を経験したり、プロダクトが高価だったり、機能が欠けていたり(認知的)する場合、それは最終的に否定的な感情(影響)と使用頻度の低下および他人へと薦めない(意欲)ことへとつながり、最終的に人々は購入または使用をやめます(行動)。今後の記事ではこの関係を探っていきます。
実際の行動を変えるには時間がかかり、より良い代替手段の存在や切り替えコストなどの要因の影響を受けます。しかし、QuarkXpress(編注:かつてMacのDTPのデファクトスタンダードとも呼ばれたソフト)は新たな競争相手(AdobeのInDesign)の出現とともに認知、影響、意図がユーザーの行動の変化をもたらし、かつては優勢だったプロダクトと会社がこれらによって牙城を崩された格好の事例とも言えるでしょう。
要約とまとめ
この記事では、ユーザー体験における態度の役割について考察しました。
UXは行動であり態度でもある
ユーザー体験を理解するには、行動と態度の両方を説明する必要があります。観察だけでは、ユーザー体験が楽しいとも恐ろしいとも言えません。人々がどのように考え、どのように感じるのかを理解する必要があります。
態度には3つの要素がある
態度を表す主なモデルは認知、感情、そして意欲の3つの部分に分かれます。それはまたABCモデル(感情的、行動的、そして認知的)とも呼ばれ、態度は人々が確信していることUX(認知的)、感じていること(感情的)そしてやろうとしていること(意欲的)から成り立っています。
UXを理解するために態度を測る
SUPR-Qなどの一般的に標準化されたアンケートを使用して、態度の認知的要素および感情的要素を測定できます。態度の意欲的行動要素を評価するために将来の意図、購入する可能性、使用、および推奨すること(NPS)について尋ねます。
態度は行動を説明し予測することができる
人々が何を考え、何を感じているのかを理解するには、人々がなぜ行動し、将来の行動(購買行動など)、継続的な使用、および業界全体にわたるプロダクトの成長を説明するのが役立ちます。