「想定外の楽しみ方」をするユーザーを見る、新規事業でのUXリサーチ

池田 朋弘

UXリサーチを専業とする株式会社ポップインサイト代表取締役および株式会社メンバーズ執行役員。2008年に株式会社ビービットに入社しユーザーテストを数百人実施、2012年に日本初のリモートユーザーテストサービスを立ち上げ5,000調査以上を実施。

UX MILK特派員のポップインサイト池田です。UXの第一線で活躍されている方々へインタビュー&対談し、最新のノウハウをお届けする「UXリサーチ最前線」。今回は、ファンコミュニティサービス「fanicon」をゼロから立ち上げたTHECOO株式会社の星川さん・城さんに、toCサービスを立ち上げて改善していく中でのUXリサーチについてお話を伺ってきました。

0からサービスを立ち上げる中での徹底したユーザー理解の取り組みや姿勢は、UXリサーチを行う上でも役立つと思いますので、是非参考にしてみてください。

写真左:城さん、写真右:星川さん

faniconは「ファン同士が盛り上がれるコミュニティ」

池田:今日はよろしくお願いします。まず初めに「fanicon」について教えていただけますか?

星川:faniconはアーティストやタレント、インスタグラマー・YouTuberなどのインフルエンサーの活動を、コアなファンと一緒に盛り上げていく会員制のファンコミュニティアプリです。タレントが自身の会員制コミュニティや、配信コンテンツを作成し、その会員費やイベント参加費から、収入を得るような仕組みになっています。

2017年12月にオープンして、今ではファンコミュニティが約1,000個、月間アクセス数が1,000万程あるサービスになっています。App Storeのセールスランキングで4位になったこともあります。

いわゆる「0→1」のフェーズは乗り越えて、これからもっと沢山の方に使っていってもらいたいぞという「1-10」のフェーズにあるプロダクトです。

城:最初は星川くんと僕の2名だけの体制で立ち上げましたが、いまでは開発・営業・カスタマーサクセスの3部門計20名のチームで動いています。

サービス開始からわずか4ヶ月のピボット

池田:faniconは、最初から「ファンコミュニティが伸びる」と考えて作ったサービスなんですか?

星川:いえ、最初から考えていたわけではありません。実はサービスを立ち上げたときは、ファンコミュニティではなく、「タレントとファンが1対1でコミュニケーションが取れる」ことを売りにしていました。

しかし実際にサービスを始めてみると、タレントが1人で全部を対応するのは大変という声も上がり、このまま広げていくのは難しいと感じたんです。

そこで、方向性を「ファン同士でもコミュニケーションが取れるコミュニティ」に切り替えたのが今の形の始まりです。

城:faniconは2017年4月に立ち上げたんですが、2017年8月には、すでにコミュニティの方向に舵を切っていました。方向性の転換については、ユーザーのことを知っている星川くんの判断を信じていたので、開発としては「いかに早く、新しいコンセプトを試すか」に注力しましたね。

「想定外の楽しみ方」をしているユーザーを見つける

池田:「ファン同士でのコミュニケーション」ができるコミュニティへと方向転換したということですが、どのようにしてそこに価値があると気づいたんですか?

星川:きっかけは、faniconユーザーのTwitterを見ていた時に、そのユーザーがファン同士のLINEグループを作っていたのを見つけたことでした。僕もそのLINEグループに参加してみたら、グループ内にタレントは参加していないのに、ファン同士でとても盛り上がっていたんです。

この様子をみて、元々提供していた「タレントとファンの間でのコミュニケーション」だけでなく、「ファン同士のコミュニケーション」にも価値があることに気づきました。

城:toCのサービスの立ち上げが得意な知人とも、「想定外の使い方をするユーザーを見つけるのが大事」だという話をしています。

その方はサービスを作ったら、完成度が低いタイミングでも何百万円もの広告費を使ってユーザーを獲得し、その中で「面白い使い方」をしている人を探すと言っていました。ユーザーがなぜそんな使い方をしているかを知り、その使い方に合わせて、サービス自体を変えていくそうです。

星川:新しいサービスを立ち上げて間もないときには、ユーザーは使ってくれなくて当たり前なので、最初から細かい数値を分析したり「なぜ離脱したか」を考えることはほとんど意味がないと思います。それよりも「使ってくれている人が、なぜ使ってくれているのか」に注目して、その理由を徹底的に掘ることが大事です。

コミュニティの活性化とマネタイズの両方を叶える「共通ミッション」

池田:「ファン同士で盛り上がる」ことがfaniconの価値ということですが、「盛り上がりやすい状態」を作るために、どのような取り組みをしているのですか?

星川:タレントやファンが一緒になって取り組める「コミュニティの共通ミッション」の導入は、取り組みのひとつです。定期的にミッションを伝え、達成すると運営側から「ファングッズ」などのプレゼントが届く仕組みになってます。

共通ミッションには、「ライブ配信を毎日やる」のようなタレント側が頑張るものと、「いいねを1,000回押す」のようにファン側が頑張るものの両方を用意しています。

池田:面白いですね。これはどういった背景から、導入したんですか?

星川:ファン同士での話題のきっかけ作りと、ファンがお金を払う機会を増やしてファンビジネスとしても盛り上がるように、との考えから導入しています。

ファン同士で集まってコミュニティを形成したときに、最初はタレントの話題で盛り上がれても、何もしないとだんだんネタが無くなってしまうんです。そうすると、「オススメのグルメ」など関係ない話題に逸れてしまい、徐々にコミュニティが廃れてしまうといった懸念がありました。かといってタレントの話だけするよう、強要することも難しいです。

また、タレント側では、ファンからの会員費やイベント参加費でファンビジネスが成り立っている反面、直接的に「お金を払って欲しい」とは言いづらいという悩みがありました。

池田:共通ミッションを運営側から出すことで、その両方を解決しているんですね。運営側からのプレゼント経費などの、マネタイズはどうしているんですか?

城:課金することでミッション達成の労力を削減できる仕組みを提供することで、売上が上がる仕組みを作っています。

たとえば「100万いいねを目指そう!」というミッション達成のために、無料でいいねを押し続けるだけでなく、5,000いいねを100円で購入することもできる、といったものになっています。

オフィスでのオフ会を通してユーザーを理解する

池田:盛り上がりやすい場づくりのために、他に工夫したことはありますか?

星川:オフ会がしやすい仕組みを作ったことですね。faniconでは、立ち上げ初期の余裕がないときから、オフィスにオフ会ができるスペースを用意して、オフ会の開催を推進していました。

ファン同士が盛りあがるには「仲良くなる」ことが重要です。そのためには、オンラインのコミュニティ上でやりとりするだけではなく、実際に会うのが1番早いと思っています。

城:「オフ会開催」がサービスの中に自然に組み込まれている状態は、自画自賛ですが、とても面白いと思っています。

星川:色々なタレントやファンの方と話していると、「なるほど!」と気付きが得られますので、オフ会には僕も積極的に参加するようにしています。学ぶことの多いユーザーとは連絡先を交換し、新機能を作るときなどに質問しやすい関係を作っています。

池田:なるほど、オフ会の場でユーザーリサーチをしているのですね。質問しやすい関係をつくるためのコツはありますか?

星川:質問しやすい関係性を作るコツは、「相手に合わせてコミュニケーション手段を使い分けること」です。ゲーム系YouTuberならDiscord、若いファンならLINE、アイドルの中年ファンなら電話と、なるべく相手に合わせるようにしています。

タレントをプロダクトマネージャーとして採用

星川:良いプロダクトを作るためには、自分自身がサービスを使い尽くすことも大事です。僕も、少なくとも1日2時間はfaniconを使うようにしています。ただ僕の場合、ファンとしての利用になってしまうので、どうしてもタレント側の気持ちにはなりきれないという課題感がありました。

そこで去年の12月から、プロのダーツプレイヤーの関根さんに、タレントとしてファンコミュニティを作った上で、その経験を活かしてプロダクトマネージャーとしてチームに入ってもらいました。今ではタレント側のニーズは彼女が一番よく知っており、改善案をどんどん提案してくれています。

星川:また他にも、オフ会に参加してくれたfaniconユーザーの学生や、Twitterでfaniconのことをつぶやいてくれている学生にDMを送って、インターンとしてプロダクトづくりに参加してもらうこともあります。

参加してくれる学生インターンは、faniconについて忖度なくストレートなフィードバックをしてくれますし、仕事も積極的に行ってくれて、とても助かっています。

池田:なるほど。ユーザーであるタレントやファン側の気持ちを想像して対応するのではなく、実際のタレントをチームに引き入れたり、サービスへの関心の高いユーザーを巻き込んでいくのも、ひとつの手法としてあるんですね。

まとめ

toCサービスを成功させるためには、いかにユーザーを知ることが重要かがとてもよく分かるインタビューでした。

インタビュー前半の「想定外の使い方を知る」は、ハーバード・ビジネス・スクール教授のクリステンセン氏の「ジョブ理論」という本の中でも推奨されている方法そのものでした。

また、「学びの多いユーザーと接触しやすい状態を作る」という取り組みは、リクルートの「創刊男」として有名なくらたまなぶさんが「創刊男の仕事術」という本の中でお話されている「感性が優れた数人の”炭鉱のカナリア”を見つけるために会っている」という話を通じます。

ゼロからの立ち上げに限らず、以下のようなUXリサーチを実践してみると、大きな成果が出そうです。

  • 「想定外の楽しみ方」をしているユーザを探そう
  • オフ会などで実際のユーザーに会おう! 「炭鉱のカナリア」を見つけたら、継続的に連絡を取る関係性を作ろう
  • プロダクトは自分で徹底的に使おう! 自分がユーザーでない場合は、ユーザーをチームに入れるのもあり

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