安易に「いいね!」を集める時代はそろそろ終わらせなくてはなりません。すべては、何の悪意もない「いいね!」とツイートから始まりました。それから数年経った結果、ユーザーを数値化する政府と、広告収入のために無意味な行動へと操作される大衆が生まれてしまいました。
しかし、このままで良いはずがありません。今こそ、私たちデジタルプロダクトに携わるデザイナーが、仕事の水準を上げて、真のゲートキーパーのように行動すべきときです。
私たちがデザインすべきなのは、エンゲージメントを高めるためにユーザーを誘い出す非倫理的な行為や安っぽい仕掛けではありません。人と人とが繋がり、有意義な形で協力し、より良い世界を作るために助け合うことができるような、プロダクトに全力を尽くす必要があります。
私たちデザイナーは、この問題に重大な責任を負っています。どのようにプラットフォームをデザインするのか、どのような社会的規範を設定するのかは私たち次第だからです。この記事では、私が見つけた優れた例をいくつか共有し、私のUXデザイン会社の事例もいくつか紹介します。私の会社では、クライアントのプロダクトにも私たち自身のプロダクトにも、有意義な社会的機能を備えられるように尽力しています。
険悪なフォーラムを有益なコミュニティに変える
Stackoverflowは意味のある社会的なインタラクションの例として、私が気に入ってるものの1つです。90年代のプログラミングのフォーラムに参加していた人なら、初心者がほとんど共感やサポートを得られなかったことが思い出されるでしょう。Stackoverflowは2008年に登場しました。ゲーミフィケーションの方法を適用することで、プラットフォームに建設的に参加するようにし、敵対的な環境を見事に解消したのです。
Stackoverflowでは、56万人の登録ユーザー全員が公に評判スコアを持っていて、バッジを集めることもできます。ユーザーの評判は、コミュニティに貢献するたびに上がっていきます。Stackoverflowはベストアンサーを目立たせ、ユーザーに対してお互いに理解しやすい回答を心がけるよう働きかけています。
私たちが作った「UXfol.io」は、デザイナーがオンラインでUXポートフォリオを作ることができるWebアプリです。UXfol.ioをデザインする際、Stackoverflowのアプローチから多大なインスピレーションを受けました。
このツールを作成するとき、私たちのチームは何か特別な機能を加えたいと思っていました。あちこち探しましたが、BehanceやDribbbleといった有名なプラットフォームからはインスピレーションがほとんど得られませんでした。これらのプラットフォームでは、自分の仕事を気に入ってもらうために他人のデザインプロジェクトにコメントしている人がほとんどだったからです。
そこで、そのような基本的なソーシャル機能を付けるのではなく、私たちはユーザーが必要としているものを突き止める実験を始めました。
私たちはユーザーがより良いポートフォリオを作る手助けがしたかったので、アーリーアダプターが作った最初のポートフォリオを題材に考えてみました。私たちは彼らに、ポートフォリオに対するフィードバックと改善方法のヒントを書いたメールを送りました。
その結果、アーリーアダプターはそのメールを本当に気に入ってくれたので、そのあと私たちは「レビューを求める」のボタンを作りました。レビューは引き続きメールで送っていましたが、このボタンのおかげでニーズの存在を実証することができました。偶然にも何百ものレビューを手動で書いたので、有効で建設的なフィードバックの書き方もわかりました。
次のステップは、ユーザー同士がレビューを送り合うようにすることです。私たちはカルマポイントを導入しようと思いました。そうすればユーザーは、自分が利益を得る前に公共の利益に貢献しなければなりません。「いいね」やスター、コメント欄ではなく、私たちが自らポートフォリオのレビューを書く中で学んだことを駆使して、レビュアーに効果的なフィードバックを書いてもらえるようなフォームを作ります。
「Airbnb」もまた、私たちに多大なインスピレーションを与えてくれました。彼らのレビューフォームは、デザイナーがインタラクションを構築しようとする際の好例です。ユーザーは最小限の努力で優れたコンテンツを作ることができます。
Airbnbでホストをレビューするとき、ゲストは安全性や清潔さといった頻繁に抱える問題のリストから選ぶことができます。部屋が汚いという問題を選択すると、続いてフォームで追加の質問に答えることで、問題の性質を具体的にし、どの部屋が汚れていたのかを明らかにできます。レビューではすべてが迅速に処理され、文字をタイプする必要さえなく、選択肢から選ぶだけで終わります。
また、Airbnbは、公の場所にレビューを書く前にホストに個別でメッセージを送ることを勧めています。というのも、ホストが公に恥をかく前に問題を解決するチャンスを得られるからです。
ユーザーを効果的に繋ぐ
ファッションブランドに対してインフルエンサーマーケティングのプラットフォーム「StyleLike」を作成したときは、潜在的なユーザーにインタビューすることから始めました。インスタグラムのセレブたちと、彼らがブランドとどのように協力していくのかについて大変な議論をしました。
すると、奇妙なことが起こりました。多くのインフルエンサーが、私たちが伺ったほかのインフルエンサーと繋いでくれるよう頼んできたのです。私たちはデザイナーらしく、ごく自然に「いいですよ。でもなぜですか?」と聞き返しました。
そこで、ほとんどのインフルエンサーの職業生活が孤独であることがわかりました。彼らはこのプラットフォームでお金を稼ぐ方法を発見したインスタグラムの初期のユーザーです。しかし、彼らは「普通」の仕事を辞めた途端、自分の経験を共有したり教え合ったりする社会的なコミュニティを失ってしまいました。
そこで私たちは、リーダーボードといった競争力のある技術を用いる代わりに、インフルエンサーがお互いを見つけ、話しかけ合えるようなインターフェイスを用意しました。自身が参加しているキャンペーンを基にヒントを共有しやすいようにし、さらに彼らが協力して新しいキャンペーンを始めやすいようにしました。これらすべてのソーシャルな機能によって、真の深い人間同士のつながりが生まれました。私たちに本当に必要だったのは、ユーザーの声を聞き、彼らが求めているものを見つけ出し、意味のあるインタラクションのために選択肢を提供することだったのです。
社会の大きな問題をディベートで解決する
「Kialo」は、気候変動やベーシックインカム、NFLプレーヤーの抗議といった問題について議論ができるWebサイトです。好き勝手にコメントすることはできません。すべての意見はツリー状に配置され、ユーザーは賛成意見と反対意見の間を体系的に移動します。
Kialoの試みは、過度に興奮して感情的に論じることなく、冷静に合理的に難しい問題を解決しようとすることです。ほとんどの人はこの機能が到底役に立たないと考えるでしょう。一方でこれは、デザインが人々に理性的で深い会話をうながすプラットフォームを作成する素晴らしい実験でもあります。
どのように有意義なソーシャル機能を作るか
世界中のデザイナーが責任を果たして、自分たちの作品に有意義なソーシャル機能を追加し続けていくだろうと信じています。新時代のソーシャル機能は今まさに生まれる段階にあり、数多くの発見と実験が必要です。もしこの倫理的なデザインムーブメントに参加するつもりなら、次のいくつかのヒントを参考にしてください。
想像する
有意義なオンラインのインタラクションを考えたいときは、実社会での事例を考えましょう。
デザイナーは、5分置きにランダムな人物から自分の作品を消費したり褒めたりすることを要求される、あるいは頼まれるようなイベントに行きたいと思いますか? では、このイベントに別の段取りがあったらどうでしょうか? 興味を持った相手に対してのみ、個室でお互いの仕事についてフィードバックを与え合うことができるとしたら?
オンラインのインタラクションが実社会ではどのように機能するかを想像することで、ある種のインタラクションを促進しうる仮想空間を作ることができます。
スケールさせる
ソーシャルな機能をより大きなスケールで想像してみましょう。
もし何十万、何百万の人がその機能を使うとしたらどうでしょうか? あなたが考えるソーシャルな機能は、どのようにこれらの人々に影響を与えるのでしょうか? ある人にとっては役に立つ機能(投稿にたくさんの「いいね!」を集めること)が、ほかの人にとっては不安とストレス(ほかの人と同じように自分を愛してくれない)になるかもしれないことを認識してください。デザイナーは機能をリリースする前に、このような社会的影響について考えなければなりません。
自分のプロダクトがより広い環境に与える影響を検証する際に役に立つのが、FacebookのプロダクトデザイナーであるMaheen Sohail氏が記したEthical Design Thinkingです。このガイドは、さまざまな行動や環境について体系的に調べ、想定される副作用について考えることに役立ちます。
プロトタイピングする
最後に、古き良きプロトタイプを作るという方法も役に立ちます。
私の経験では、ソーシャルな機能のプロトタイプを作る最善の方法は、メールやチャットといった、すでに存在するコミュニケーションツールを使って作成することです。これらのツールを使えば、実際のユーザーとやり取りすることができ、さまざまな社会的インタラクションを試してフィードバックを集めることができます。
上述した通り、私たちはデザインポートフォリオのレビューツールのプロトタイプを作るために、メールを使いました。これらのメールでの会話から、私たちはユーザーが何を好み、どのようなレビューを受け取りたいのかについて多くを学びました。のちにこれらのインサイトから、私たちはユーザーが優れたレビューを書く手助けをするソフトウェアの機能を作ることができました。
結論
有意義なソーシャル機能を作ることは単に「いいね!」ボタンを付け加えるより難しいです。しかし、注意深く考えれば、プロダクトを通じて真のコミュニティを作ることができるため、労力を投資する価値はあるでしょう。
もし、すでに有意義なソーシャル機能に従事している人がいたら、ぜひコメント欄で教えてください。