サービスやプロダクトのUXにおいて追うべき5つのKPI

Armen Ghazaryan

ArmenはUXに特化したプロダクトマネージャーで、滑らかで使いやすいデジタルプロダクトを作ることに強い情熱を持っています。

この記事はDesignmodoからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

5 UX KPIs You Need To Track

私たちは物事を測るのが大好きです。計測は物事の良し悪しを判断する私たちなりの方法です。状況のすべてを物語ることはできないとしても、数字は状況を素早く、簡単に評価する手助けをします。では、ユーザー体験を計測することはできるのでしょうか? 実は可能なのです。

ユーザー体験に払う労力は、ユーザーのインタラクションの品質や全体的な満足度を向上するといった、質的な成果に向けられます。しかし同時に、これらの努力を数値化し、進捗具合を測定しなければなりません。UXのKPIはこれらを測定するものです。

KPIとは何か

KPIとして知られる重要業績評価指標(Key Performance Indicators)は、組織が目標を定め、目標に向けた進捗を記録するのに役立つ計量可能な尺度です。

ユーザー体験に関わる目標に向けた進捗を反映するKPIが、UXのKPIと呼ばれます。

主なUXのKPI

ユーザー体験の指標は人間の行動や態度を反映するものなので、セールスやマーケティング、ファイナンスなどの指標とは少し異なります。この種の情報は数字に変換するのが多少難しいのですが、一方でUXのKPIからは、ユーザビリティの問題の規模や重要度に関する貴重なインサイトを得ることができ、時間の経過にともなう変化を追跡しやすくなります。

UXデザインチームは量的な指標と質的な指標という2種類のUXのKPIを選ぶことになるでしょう。

量的なUXのKPI

  1. 1. タスクの成功率
  2. 2. タスクにかかる時間
  3. 3. 検索とナビゲーションの使用量
  4. 4. ユーザーのエラー率
  5. 5. システムユーザビリティスケール(SUS)

質的なUXのKPI

  1. 1. 報告された期待値とパフォーマンス
  2. 2. 全体的な満足度

それぞれの指標について、どのように計測できるのか見ていきましょう。

1. タスクの成功率

タスクの達成率とも呼ばれるこの指標は、ユーザーが正しくタスクを達成した割合を示すパーセンテージです。ユーザーが特定のタスクをどれほど効率的に達成できているかを反映するパフォーマンスの指標の中では、恐らくもっとも頻繁に使われています。登録フォームの入力やプロダクトの購入といった、明確に定義された目標や到達点があるタスクであれば、成功率を計測することができます。データを集める前に、何をもって成功とするのかを定義しておくことが重要です。

正解したタスク数÷全タスク数

この指標ではユーザーが失敗した理由はわかりませんが、統計としては有効です。

また、ユーザーの初回の成功率を記録し、進展を追跡することも重要です。時間が経過してユーザーがそのサービスをより体験したことで、成功率がどのように変わるのか見ましょう。これによって、ユーザー体験の成功を測るもう1つの指標である、システムの学習しやすさを把握できるようになります。タスク成功率が高いほど、優れたユーザー体験です。

2. タスクにかかる時間

タスクにかかる時間は、タスクの達成時間やタスク時間と呼ばれることもあります。この指標は基本的にユーザーがあるタスクを達成するのにかかる時間を示しており、分単位や秒単位で表されます。時間のデータはさまざまな方法で分析し、表すことができますが、もっとも一般的なのはそれぞれのタスクにかかった時間の平均を示すことです。

この指標は問題の原因を突き止めるのに役立ちます。加えてこの指標は、繰り返し試行して同じ指標を比較することで、動的な視点からより多くのインサイトを得られます。

一般的にこの指標が小さいほうが、ユーザー体験の質が良いことになります。

3. 検索とナビゲーションの使用量

これは情報アーキテクチャやナビゲーションの効率性を評価するのに役立つ指標です。ユーザーがナビゲーションを通じて何かを見つけようとして迷ったとき、検索は基本的に最後の手段になります。

この指標は次のような方法で記録することができます。たとえば、ECサイトにおいて商品を見つけ、購入するというユーザビリティのタスクを設定したとします。このとき、このタスクのためにどれだけのユーザーが検索を使い、どれだけのユーザーがナビゲーションを使ったかを記録しましょう。

検索・ナビゲーションできたタスク数÷全タスク数

4. ユーザーのエラー率

エラーは一般的に、ユーザー体験を評価するのに効果的な方法です。エラーによって、どれだけ多くのミスが起こったのか、プロダクトの中のどの接点ミスが起こったのか、エラーの頻度と種類はデザインによってどのように異なるのか、全体を通して本当に使いやすいものは何なのかを知ることができます。エラーとユーザビリティの問題は深く関係しており、同じ存在だと言われることさえあります。しかし実質的には、ユーザビリティの問題がユーザーのエラーの原因です。

また、私たちが言う「エラー」とは「ユーザーのミス」を意味しています。たとえば、IPアドレスのフィールドにWeb アドレスを入力するとします。しかしここでも、どのような行動を間違いとするのか、部分的な間違いもエラーとしてカウントするのかを明確に定義することが必要です。

エラー率の計算には、タスクで見込まれるエラーの数や、計測する必要がある対象に応じて、いくつかの方法があります。たとえば、Webフォームでは入力フィールドが存在する数だけエラーが起こる機会があります。

1. そのタスクにエラーが起こる機会が1つしかないか、あるいは多くの機会があるけれどもその中の1つだけを追跡したい場合、たとえばパスワードのフィールドでは、エラー率の計算は次のようになります。

全ユーザーのエラー数÷全ユーザーがエラーする機会の数

2. タスクに対してエラーが起こる機会が複数ある場合には、すべてのユーザーについて平均のエラー発生率を記録したいと思うかもしれません。

エラー数÷タスクの試行数

例:5人のユーザーがオンラインでクレジットカード決済をしました。そのタスクにはエラーが発生する機会が7箇所あります。ユーザーはそれぞれ、2個、4個、1個、2個、3個のミスをしました。

このとき、オンラインでのクレジットカード決済というタスクにおける平均エラー発生率は次のようになります。

(2+4+1+2+3) / 7 *5 = 0.34*100 = 34%

5. システムユーザビリティスケール(SUS)

SUSはユーザーが認知したプロダクトのユーザビリティを調べるためにもっとも広く使われているツールの1つです。しかし、このKPIはユーザーサーベイに基づいており、統計データから単純に計算できるものではありません。測定にはユーザーの協力が必要なので、ユーザビリティテストの一部として実行しましょう。SUSはユーザーが知覚したプロダクトに対する満足度といった、質的なデータを計量するものです。10個の質問で構成され、ユーザーは同意の度合いを5段階で回答します。

SUSのデータを集計し、分析し、表示する方法について詳細な情報が知りたいなら、こちらのテンプレートで参照できます。

質的なKPI

質的な情報は一般的に数字そのものよりも集めるのが難しく、より価値があり有益です。したがって、質的なUXのKPIには、ユーザビリティテストやコンテキストに基づいたインタビュー、あるいは最低でもユーザーサーベイを実施して、実際のユーザーとコミュニケーションを取る必要があります。

この作業には多くの時間と労力がかかり、数字で計れるものでもありません。しかし、質的な情報はどのような組織にとっても重大な価値があります。

コンテキストに用いたインタビューから得られた莫大な情報をまとめたあとは、記録されたユーザーの期待値や、実際のパフォーマンスに対するユーザーの感想、そしてサービスを使うことに対するユーザーの全体的な満足度に焦点を絞らなければいけません。

先に紹介したSUSも、質的なデータを数値化するのに役立つツールです。

終わりに

UXのKPIは、必ずしもUXの専門家ではないステークホルダーやチームメンバーに進捗状況を示す効果的な方法です。また、数値化されたデータは理解しやすく、頭に入りやすいものです。UXの指標を使うことによって、私たちは進捗を数値化し、UXチームが実行したユーザビリティの変化に関する実際のROIを計算することができます。これはほかの方法では不可能です。

プロダクトやサービスの種類によって、それぞれのチームは異なる指標を選んで記録したり、あるいはUXをより効率的に計測できるような、新しい具体的なKPIを定義したりもできるでしょう。指標が計測可能で有用である限り、それらを使い続けることができます。


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