ユーザーがより「頑張らなくていい」体験を考える

Paul Boag

PaulはUXのデザイナーでありデジタルトランスフォーメーションの専門家です。彼はユーザーを促進するためのウェブやソーシャルメディア、モバイルの活用を、非営利やビジネスの分野で手助けしています。

この記事はboagworldからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

How to Design a More Effortless User Experience

だれもがユーザー体験を楽に感じるものにすることを目指していますが、そう考えることをやめれば、もっと他にできることがあるのではないでしょうか?

ここ数年でユーザー体験のデザインは飛躍的に進歩しました。デジタルの世界におけるビジネスの成功の鍵は、すぐれたカスタマー体験を提供することであることは次第に受け入れられてきています。時間に余裕のないユーザーは使いづらいインタラクションに我慢することは好まず、提供された体験が快適なものでなければサイトを離脱してしまうことを企業は理解しています。

ユーザビリティテストとユーザー調査も盛り上がりを見せています。 Steve Krug氏の著書『Don't Make Me Think』といった書籍は、ユーザーの代弁として綴られた1冊であることから、ユーザー体験の責任を負っている多くのチームへの真言となりました。

『Don't Make Me Think』は現代のUXデザイナーの真言となりました

もちろんデザイナーの戦いはまだ続いています。クライアントと経営陣は、長期にわたる成長の中でコスト削減に気を取られることがよくあります。短期のコンバージョン目標がカスタマーの長期維持をひそかに蝕んでいるというケースがまだ見受けられます。

しかし、私たちはUXデザインのベストプラクティスを戦略的に実施するための戦いを未だに続けていますが、ユーザー体験を優先する必要性はほとんどの人に受け入れられています。

では何をすればいいのでしょうか? UXデザイナーの仕事は終わったのでしょうか? 戦いには勝ったのでしょうか?

既存の考え方に挑戦する

戦いはまだ始まったばかりだと、私は言いたいです。残念なことにUX分野のデザイナーのほとんどが、どこまでやればいいのかを必ずしも理解しているわけではありません。私たちデザイナーがつくり上げた体験は、たとえそれが最善を尽くしたものであっても、私たちが思っている半分も快適なものではないのです。

Webサイトやアプリ、システムへのログインという簡単な例を見てみましょう。UXデザイナーとして、私たちはそのプロセスをもっと楽にしようと懸命に戦ってきました。ユーザーにパスワードを表示して、パスワードを復旧させるプロセスをスムーズにしています。たとえ相手が情報システム部門であっても、彼らがセキュリティ上の理由から要求する複雑なパスワードは、常に必要なものとは限らないということを説得してきました。

パスワードを表示できるサイトの数は増えていますが、そもそもユーザーはなぜパスワードを入力しなければいけないのでしょうか。

しかし、パスワード問題の解決が始まったとは考えていません。結局のところ、たまにしか使わないシステムのパスワードをユーザーに覚えてもらおうとしているのです。たとえユーザーがそのシステムを毎日使っていたとしても、なぜ身元を証明したり、データをいくつも入力したりしなければいけないのでしょうか? こういったことは依然として弱点のままです。

思考を制限するユーザー体験に関するある種の前提を、私たちは盲目的に受け入れてしまっているのです。

デザイナーの問題は、ある種の前提を疑うことなく受け入れてしまうということです。たとえば、ユーザーはパスワードを入力しなければならないということに盲目的に同意しています。しかし、なぜそうしなければならないのでしょう? Slackにパスワード入力は必要ありません。メールでリンクが送られてきて、それをクリックするだけです。

Slackは登録したアドレスにメールを送信することでパスワード入力の必要をなくしていますが、そのメールをチェックして応答しなくてはいけません。

しかし、Slackでさえユーザーの行動が必要なこともあります。なぜシステムには私が私であることが「わからない」のでしょう? なぜ自分自身を証明する必要があるのでしょう? パスワードの入力でどれだけ人生を無駄にしているか考えてみてください。何十億人分もの人生です。パスワード入力だけのことに、人生のどれほどの時間が費やされているのでしょう!

たとえば私が気に入っているApple Watchの機能を見てみましょう。私のMacに近づくと自動的にロックを解除します。事前に時計を開いているので、Appleは私が本人であると推測してMacのロックを解除します。Webサイトでは同じようなことがなぜできないのでしょう?

Apple Watchは何もしなくてもあなたのMacのロックを自動的に解除します。

「行動させない」という考え方を受け入れる

Apple Watchの例にそれほどの説得力を持たせているのは、ユーザーである私に何も要求していないという点です。何もする必要がありません。「考えさせない」を超えて「行動させない」に移っています。システムが予測してユーザーに反応するという新しい時代です。

Apple Watchは健康状態についても同じことをしています。心拍数をチェックして問題がないことを確認するように要求してきたりしません。その代わりに、定期的に心拍数をモニターします。私は何もする必要はありません。

Smart Homes」に関する最近の記事で述べたように、HP Tangoプリンターも同じです。インクの量が少なくなっても注文する必要はありません。プリンターが自動的に発注し、インクが届けられるのです。

私のプリンターはインクの量が減っても注文する必要はありません。プリンターが自動的に発注します。

会計ソフトはどうでしょう。かつては、取引をすべて手入力しなければなりませんでした。その後、銀行口座から取引記録を手動でインポートできるようになりました。現在では何もしません。取引記録は単に現れては自動的に追加されるだけです。

UXデザイナーはインターフェイスを避けたがる

UIデザイナーとUXデザイナーの違いです。前者はインターフェイスをデザインし、後者はそれを完全に避けようとします。

UIデザイナーはインターフェイスをデザインする。UXデザイナーはそれを避けようとする。

確かに、ときにはそういったことを妨げる技術的な制限はあります。しかし大抵は、誰もそうしようと考えなかったからです。たとえば日産リーフです。運転している道路の制限速度がダッシュボードに表示されます。また、最高速度を設定できるスピードリミッターも装備しています。しかし、制限速度に合わせて自動的にリミッターがかかることはなく手動で調整する必要があります。

日産リーフは制限速度を把握していますが、自動的にその速度にスピードリミッターを合わせることはできません。ドライバーは常にスピードリミッターを調整する必要があります。

もちろん特別なセンサーや高性能な機械学習が必要な場合もありますが、常にというわけではありません。単に「良識のあるデフォルト設定」を設けるかどうかの問題である場合もあります。

「良識のあるデフォルト」を設定する

たとえば、国名のドロップダウンメニューを各ユーザーに選択させる代わりに、もっともよく選ばれる国をデフォルトに設定したらどうでしょうか。これによって、その国からの訪問者は何もする必要はなくなります。

メールの購読解除はどうでしょうか? 企業が1回のクリックで簡単に購読解除できるようにしていると私たちはとても嬉しいです。しかし、そもそもあるユーザーが半年間もの間メールを1通も開きさえしていないことを企業が知っている場合、なぜユーザーが購読解除をする必要があるのでしょうか? ユーザーの購読を解除し、好きな時に再購読できるオプション付きの自動メールを送るだけならそんなに大変なことではないでしょう。

メールを読んでいないユーザーの購読を自動的に解除することでユーザー体験とメーリングリストの質を高めることができます。

国の選択肢と購読解除の例で、自動化された行動を無効にする方法もユーザーに提供していることに注目してください。ユーザーから操作を奪うよう提案しているのではありません。何か別のことをしたがったり、自ら操作することを好むユーザーもいます。気持ちよく1日を過ごしたい大多数のユーザーのためにできる限り自動化すべきだと言っているのです。

ユーザーの行動を減らすためにできることは何か?

さらに例を挙げることもできますが、考えはおわかりいただけたと思います。そこで、私からあなたに課題を出しましょう。自分のWebサイトやアプリなどを見て、ユーザーの行動を自動化するためにできることは何かを考えてみてください。


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