探索的UXテストセッションは、Webサイト、アプリ、さらには実際のプロダクトのUXを探索して評価するだけでなく、ユーザーの観点に立って考えるようにチームを促す素晴らしい方法です。 上の写真は、Redgateの私のプロダクトチームが行った1時間のセッションの中で、初期のプロダクト設計を改善するための潜在的なユーザビリティ問題と、それに対する膨大な数の提案の一部を示しています。
この記事では、探索的UXテストセッションが非常に役立つ理由、それらを実行するのに最適なタイミング、および自分のチームでのセッションの進め方をご紹介します。
探索的UXテストとは?
探索的テスト(または「スクリプト化されていない」テスト)は主にバグの発見に焦点を当てていますが、探索的UXテストはプロダクトのユーザー体験(UX)の評価と改善方法の発見全般に関わっています。このテストは、ユーザーが実行する可能性のある行動の種類に対してプロダクト(またはプロダクト設計)を確認することによって行われます。たとえば、ECサイトでユーザーがどれぐらい簡単に特定のプロダクトを見つけて購入できるかを考えてみると良いでしょう。
探索的UXテストは、1〜2時間のセッションの一部としてチームで行うのが最適です。 初期のコンセプト、最終的な完成品まですべてに当てはめることができると同時に、実際のユーザーを対象にしたテストというよりも補助的な役割をするもので、下記のような目的で利用できます。
- プロダクトのユーザビリティとUXの評価
- ユーザビリティの潜在的な問題点を特定
- ユーザー体験を改善できる箇所を特定
- さらなる調査のための仮定と疑問点にハイライトをあてる
- ユーザーの観点に立ち、ユーザーとの共感を促す
探索的UXテストの実施
探索的UXテストには通常1〜2時間かかり、プロダクトまたはプロジェクトに取り組んでいるチーム全体が関わることが理想的です。セッションを定期的に(たとえば数か月ごとに)実施するか、もしくは主なユーザージャーニーを確立できるデザインを完成させた時点で一度、実施してみることをおすすめします。通常、セッションは次のように構成されます。
1. ユーザー、タスク、ペアの確認
2. タスクに対するプロダクト/設計のレビュー
3. 調査結果の照合、議論、優先順位付け
ユーザー、タスク、ペアの確認
プロダクトのユーザーを特定してそれを確認した上でセッションを開始します。 これは、グループ全体が関わるべきものです。既存のペルソナまたはユーザープロファイルがあれば、それらは出発点として役立つでしょう。
ユーザーのセットごとに、試行される可能性が高い上位3つ〜5つの行動を特定します。 たとえば、ECサイトの場合、次のような行動です。
1. 特定のプロダクトを購入
2. プロダクトに関する情報を検索
3. プロダクトの価格を取得
4. プロダクトの種類に関するアドバイスを取得
5. 過去の注文を取得
次に、ペア(または小さなグループ)に分割し、ユーザーをペアに割り当てる必要があります。 各ペアが1人または2人のユーザーとその動きを確認することが理想的ですが、できれば複数のペアが1セットのユーザーを確認するとよいでしょう。そうすることで、1セットのユーザーを複数のペアが評価することができます。
一部のペアは、ユーザー体験を評価するかわりに、バグを探す目的で、より伝統的なアプローチのテストを行うこともできます。このように異なる目的のテストにより、まれなケースよりも、ユーザーがどのような行動を起こす可能性がもっとも多いかを明確にすることが可能になります。忘れてはいけないのは、第1の目的はバグを特定することではないということです(思いもよらぬおまけを得ることもありますが)。大事なのは、プロダクトまたはデザインをできる限り実際の使用に近い状態でレビューすることです。
ユーザー行動に対するレビュー
実際に存在することが認識できたユーザー行動に基づいて、プロダクトをレビューするためにチームを各ペアに分ける必要があります。調査結果を記録するために(写真に示したように)ポストイットを使用することをお勧めします。ペアは気づいた点に必ずメモを残すようにし、それによって該当する画面またはデザインとメモが簡単に紐づくことになります。
また、気づいた点の種類によって異なる色のポストイットを使用するのも良いでしょう。たとえば、UXを改善するための提案の場合は緑、使いやすさに関する問題はピンク、さらに調査するための質問の場合は黄色、というように。(メモの例:このテキストはユーザーに理解されるだろうか?)
タスクの各ステップにおいて、全員に次のようなことを考えてみるよう、依頼するのも良いでしょう。
- ユーザーは何をすべきか、理解していますか?
- ユーザーはその方法を理解していますか?
- ユーザーは自分のアクションが正しいかどうか理解していますか?
経験則に基づいて考えるためにテーマを提供することも役立つということが分かりました。
下記は一部の例です:
明瞭でよく練られた構造のUI
UIが乱雑ではなく、コントロールや情報が多すぎるということもありません。UIのエレメントが整っていて、適切な間隔があり、ページの構造は理解しやすいです。
統一性のあるUI
UIは画面全体で統一性があり(スタイル、用語、色、間隔など)、必要に応じて一般的なUIコントロールなど、わかりやすく標準的なものを利用しています。
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探索的なUXテストに利用できる、ヒューリスティックデザイン評価セットのダウンロードは以下のリンクからどうぞ。
調査結果の照合、確認、優先順位付け
予測されるユーザー行動に基づいてプロダクトをレビューしたら、全員が集まって調査結果について話し合う必要があります。 その際の最適な方法としては、画面/デザインを印刷(理想的にはA3以上)し、メンバーそれぞれが経験したユーザージャーニーの過程で気づいた部分にポストイットを貼り付けてもらいましょう。これが難しい場合は、代わりにグループごとにアフィニティマップを利用することもできるでしょう。
各ペアは、それぞれが見つけたものを他のチームメンバーと共有するようにします。特に、もっとも重要な発見と思われるものと、ペア全体で共通の発見がある部分を共有します。チーム全体で問題に優先順位を付け、必要に応じて管理者たちをアサインし、セッションを終了します。下記のような項目は有用です。
- 今すぐ対処する必要のある点(例:ストッパーの表示)
- 近日中に対処する必要のある点(例:重要なユーザビリティの問題)
- 現時点では大きな問題にはならない点
調査結果に応じて行動を起こす
予備のUXテストセッションを実行することは非常に役立つ試みですが、調査結果に対して行動を起こさないと、その価値は半減します。次のステップとしては、UXの問題をプロダクトのバックログに追加する、または追加のワークショップを計画し、特定されたもっとも重要な問題に対処するためのアイデアを出し合うことなどが挙げられます。
まとめ
探索的UXテストセッションは、実際のユーザーによるテストの代わりとなるものではありませんが、プロダクト(または初期段階のデザイン)のユーザー体験を迅速に評価し、潜在的な使いやすさの問題を識別するための優れた方法です。 セッションは、チームがユーザーと共感し、ユーザーの観点に立ってプロダクトについて考えることを促します。独自の探索的UXテストセッションを実行してみましょう。あなた自身による発見にこそ、大きな意味があるのです。