コンテンツデザインに欠けがちな要素として、検索意図(Search Intent)というものがあります。
SEOの話題に少しでも触れると、不快に感じる方もいるかもしれません。SEOばかり指摘するのは、自分のアジェンダを押し通し、うぬぼれた指標を追い、ユーザーニーズをまったく考慮しないスパムのようなものです。最悪の場合、SEOが優れたユーザー体験と完全に対立してしまうことさえあります。
しかし、必ずしもそうなるとは限りません。優れたUXは検索エンジンの段階から始まっていることも、また事実です。最近の調査によると、Webサイトトラフィックの半数以上がオーガニック検索から生まれているといいます。つまり、良いかどうかにかかわらず、SEOは体験全体の一部に過ぎません。
ユーザー重視のSEOは、優れたデザイン、コンテンツ、コード選択というそれぞれの要素が、重要な場面で相乗効果をもたらすように適切に組み合わせることで生成されます。ユーザー重視のSEOは公開直前のWebコピーにかける魔法ではないのです。実際、ナビゲーションラベルや内部リンク構造、コンテンツヒエラルキー、構造化データといったSEOの重要な要素はコンテンツデザインに組み込まれてしまうため、最終デザインでの変更は不可能に近いでしょう。
コンテンツデザインとSEOは相互に排他的ではない
コンテンツデザインはユーザーがどのように行動するのかを描写するので、SEOにおいても重要です。GoogleはWebサイトが有益かどうか判断するために、アルゴリズムの中に行動シグナルを採用しています。直帰率、平均滞在時間、クリック率や、訪れた最初のページで検索意図を満たすことができず検索結果ページに戻ることを指す「ホッピング」といった指標を駆使して、Googleはユーザーがサイトのコンツンや体験から価値を得ているかどうか分析しています。
Google Pandaアルゴリズムがアップデートされたことをご存知かもしれませんが、Googleは単にコンテンツが高品質かどうかを判断するためにアルゴリズムを使っているわけではありません。Googleは検索結果がユーザーの期待に応え、ユーザーの検索意図を満足させ、満足な体験を提供しているかどうか検証しています。
優れたUXとエンゲージメントを誇るWebサイトは、検索結果で上位に表示されます。 ―Rand Fishkin氏
検索意図はコンテンツデザインに欠かせない
コンテンツでは、ユーザーの検索意図、つまりユーザーがどのように検索し、何を重要視しているのかを示すデータが重要です。検索意図は、恐らくユーザーリサーチの中でもっとも十分に意識されていない概念の1つでしょう。検索意図は私たちが検索意図分析と呼ぶプロセスである、ロングテールキーワードのデータから識別されます。
ユーザー検索意図を分析すると、以下のことが把握できます。
- どのようにユーザーが検索しているか
- 特定のトピックにおいて、どの情報を重要視しているか
- どのような単語を使って表現しているか
インタビューやジャーニーマッピングと同じように、検索意図分析もユーザーリサーチの一種であり、ユーザーのニーズを理解するために活用できます。しかし、検索意図分析は検索データであるため、数字や検索ボリュームといった説得力のある事実が裏付けてくれます。よく使われるフレーズやキーワードが何かを調査するキーワード検索と似ていますが、検索意図分析はより複雑です。
キーワード調査や検索ボリュームは、検索の可視性(visibility)を改善し、事業の成功やトラフィックを手に入れるのに役立つデータとして活用されることが多いでしょう。このような調査の成果は、ページごとに固有の専門用語に焦点を当て、その専門用語をページのコンテンツに含めるキーワードターゲティングが一般的となります。
一方、ユーザー検索意図分析は真逆の理論を提唱しています。「どれくらいトラフィックの増加が見込めるか?」ではなく、「ユーザーはどのように検索しており、彼らの探す情報を提供できる体験をデザインするにはどうすればいいのか?」と問うのです。可視性の獲得よりもユーザーニーズを最優先することで、間接的に検索結果の上位に表示させる最善策になります。
ユーザー検索意図について
検索意図の重要性を主張するSEO専門家であるAJ Kohn氏は、検索意図は能動的なものと受動的なものの2つに分類できると言います。たとえば、誰かが「フェニックス地域の自転車用のトレイル」を検索したとします。そのユーザーにページを提供するなら、当然フェニックス近くのトレイルに関連したページでしょう。そして、もしユーザーがエリアに希望する自転車道を見つけられないと、離脱してGoogleに戻るはずです。これが能動的な検索意図です。
他方で、受動的な検索意図は明確に表現されません。たとえば、「フェニックスの自転車用のトレイル」を探しているなら、難易度などを知るために、トレイルのレビューにも興味があるかもしれません。このように、主な検索キーワードに関連するユーザーの興味が、受動的な検索意図です。受動的な検索意図はロングテールキーワードから割り出されます。というのも、検索ワードにニュアンスを含めたり、検索ワードの言葉を追加したり変更したりするほど、私たちはより正確にユーザーの興味やニーズを把握できるからです。
能動的な検索意図と受動的な検索意図を同時に満たせたときにはじめて、サイトの価値やユーザー体験、検索効果が向上し始めるでしょう。
検索意図を理解するには
しかし、検索意図を十分に理解していないデザインも非常に多くあります。SEO対策は、いまだに情報アーキテクチャ(IA)やデザイン、開発の決定がすべて終了したプロジェクトの最後に行われています。それぞれのチームはサイロ化されていて、責任が重なり合う部分でも十分にコミュニケーションがとられておらず、さらには自分たちが今している仕事が実際はSEO対策であることさえ気づいていない場合もあります。
SEOはコンテンツデザインの一部であり、コンテンツデザインはSEOの一部であることをほとんどの人は実質的な意味で理解していません。
コンテンツデザイナーやUXデザイナーがWebコンテンツや制作済みのデザインに検索意図を活かす方法や、検索戦略の視点を追加する方法を学ぶことは不可欠であり、デザインを向上させる秘訣です。
検索意図の分析方法
検索意図を割り出すことは大変で細かい作業ですが、それほど難しくはありません。検索意図が把握できれば、インサイトを活用して、ビジビリティやUXの向上につながる、きわめて有益なコンテンツデザインとSEO対策を実現できます。
補足:技術的なSEOの重要性
SEOがコンテンツデザインの一部であり、コンテンツデザインがSEOの一部であることは間違いありません。ただ、誤解してほしくないのは、コンテンツやデザインの意思決定以外の背後でも技術的なSEOの作業は進行していることです。JavaScriptのレンダリングや正当なリンクの構築、ページ表示速度、hreflangタグといった多数の作業があります。しかし、今回の記事では技術的なSEOを掘り下げることではなく、コンテンツデザインとSEOが重複する点に焦点を当て、双方の分野から検索意図に対処する重要性を探っていきます。
人々がどのようにサイトを見つけるか理解する
検索意図を明らかにするために、まず、ユーザーがサイトにたどり着く検索の種類について把握することが重要です。Google Search ConsoleはGoogle Analyticsよりも掘り下げたデータが収集できる最適なツールです。
もう1つの優れた情報源は自分のサイトで人々がどのように検索しているのか分析することです。これらのデータから、探しにくい情報や、サイトの構造の深くに埋もれている情報、存在しない情報について読み取ることができます。
業界内の検索意図を分析する
現在人々がサイトをどのように見つけているのか把握できたら、視点を広げて、業界全体ではトピックやプロダクト、サービスがどのように検索されているのか調べましょう。自分のサイトに関わるすべてのトピックでこの調査をする時間がないなら、まず、事業の優先事項やニーズの大きい重要なトピックから始めてください。調査結果からどのように行動すべきか判断してから、次のトピックに移りましょう。
この調査では、ロングテールキーワードのデータを入手するために、キーワード検索ツールが必要になります。Moz Keyword Explorer やUbersuggestといった素晴らしいツールがたくさんありますが、中でも私はKeywordtool.io.を好んでいます。ただ、検索ボリュームのデータにアクセスするには有料版にアップグレードする必要があります(このあと説明しますが、検索ボリュームはとても重要です)。
検索ツールを使うときは、まず業界でもっとも検索されているキーワードフレーズ(ルート用語)の1つから始めてみましょう。先のツールは調査するルート用語それぞれに対してたくさんのロングテールキーワードを生成します。これらのキーワードはGoogleが記録した、ユーザーが実際に検索した用語をGoogleが記録したものです。
注意点として、これらのツールのアウトプットは、インプットに左右されます。そのため、さまざまな角度から調査すべきです。人気のルート用語から類語を特定し、関連するトピックを調べましょう。用語を入力するときは、単数形や複数形、単語の順番の入れ替えといった別のバージョンも試してください。
ユーザーインタビューでルート用語と検索行動を特定する
今後ユーザーインタビューを実施するなら、人々がどのように検索しているのか知ろうとすることがとても有効です。ユーザーが過去に同じようなプロダクトやサービスをどのようにWebで見つけたのか実践してもらいましょう。ユーザーがどのように様子を表現するのか注意深く聞き、ユーザーが使用する言葉を正確にノートに記しましょう。これによって、貴重なルート用語を数多く発見できます。
たとえば、人々はプロダクトやサービスに関連するルート用語の検索よりも、抱えている問題やシナリオに関連して検索していることがわかるかもしれません。その場合、ルート用語には問題の解決策や答えだけではなく、問題自体に基づいたキーワードも追加することも必要です。
実践例
たとえば、生命保険のプロダクトについて検索するとしましょう。まず、ルート用語である「生命保険」をキーワード検索ツールに入力し実行してみます。
今回の例では、キーワードツールは、「生命保険」を含む約1,200個のロングテールキーワードを生成しました。とても素晴らしい結果です。ここでの目的はキーワードリストを見通して、「生命保険」というカテゴリーに共通する検索意図の話題を特定することです。
生成されたリストでまず目につくのがコストに関する話題です。
この作業には時間はかかるかもしれませんが、プロダクトやサービスにおいて、検索数のもっとも多いルート用語やキーワードに関連する結果だけでも読み取ることが必要です。私たちが探しているのは、ルート用語に関連する修飾語が意味するテーマです。ツールを使用することで、これらの修飾する単語を太字で簡単にスキャンできます。
以下の例では、ユーザーがコストや見積もり、レートに関する情報を探していることがわかります。生命保険を判断する際にもっとも重要になる情報であるため、理に適っています。
さらに分析を続けると、検索が定義に関連する検索意図を示していることから、保険の専門用語を理解しようとしていることや、生命保険の種類の違い(終身保険や貯蓄型生命保険など)を検索していることが読み取れます。
「生命保険は本当に必要か?」、「生命保険は投資価値があるか?」といったように、率直に生命保険に価値があるかどうかを判断しようとしている人もいるようです。
調査が終了するころには、生命保険の税金に関する質問や、近所のエージェントに問い合わせる方法といった新しいテーマが次々と明らかになっています。「生命保険」というキーワードデータを見通すだけで、重要な検索意図の話題がいくつか発見できました。実際は、この調査方法の結果から、膨大な量の重要な検索意図のカテゴリーやサブカテゴリーを把握することができます。
検索意図のテーマを集計する
理想的には、重要なトピックやプロダクト、サービスすべてを調査する必要があります。最終的には大量のデータを分析することになるでしょう。ピボットテーブルを活用すると、検索意図の分類ごとに検索ボリュームを合計し、ユーザーが何を重要視しているか、どのくらいの人が重要視しているかを明確にすることができます。
これにより、キーワード検索ツールのフレーズや個々の検索ボリュームだけでは把握できない、受動的な検索意図のすべてのカテゴリーで関心を抱いている人々の総量を月ごとに算出することができます。この情報は優先順位を判断する際に非常に便利です。
検索意図の話題ごとに検索ボリュームを総計することで、コンテンツの価値の裏付け、承認を得て、優先順位を決めることができます。
検索しやすいコンテンツデザインを実現する
ユーザー検索意図分析で特定した検索意図の話題を、サイトにあるコンテンツや体験のコンテンツデザインのチェックリストのように扱いましょう。
- コンテンツがユーザーのニーズに対応しているか?
- 対応できていない場合、既存のページで対応するべきか、それとも新しく作る価値があるか?
- ページの主題に関連する受動的な検索意図にコンテンツが適切に対応できているか?
- 対応できている場合、コンテンツは有益で使いやすいか? サイト構造やナビゲーションの中で情報が見つけやすく配置されているか?
さらに、次の作業も実行しましょう。
- 検索意図を活用して、IAとページコンテンツ双方に表示するべき上位のタスクを特定しましょう。これは検索にも有益です。サイトのどこかでトピックについて言及しない限り、検索結果で順位付けされることはありません。IAやページ、セクションまでにもスペースを用意することで、トピックにおけるビジビリティがさらに向上します。
- 検索ボリュームを利用して、IAやナビゲーションでコンテンツをどこに配置するべきかを判断し、サイトにおける情報の階層を判断しましょう。
- Webコピーやナビゲーション、カテゴリーラベルで使用している専門用語が、人々が表現するのに使う用語と合致していることを確認します。
検索意図の知識を持つことは強力です。ユーザーがサイトに何を期待するかについてインサイトが得られるだけでなく、IAやカテゴリーラベルから重要なページコンテンツや情報の階層まで、体験全体を通して有意義なコンテンツのデザインを指示するための説得的なデータを手に入れることができます。検索意図の可能性は無限大です。