速さやタイミングを意識して体験をデザインする

Sean McGowan

Sean氏はCodalのテクニカルリサーチャー兼ライターで、UXデザインからIoTにいたるテーマのブログを著しています。また、デベロッパー・デザイナー・マーケッターと共に働き、Codalが促進的な最高品質のウェブコンテンツを制作することを確かなものにするため、Codalのライティングチームを支援しています。

この記事はUsabilityGeekからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

Start Disigning With Perfect Timing

画像元:Depositphotos

デジタル分野において、「速い」ということは正義です。読込み速度の向上を謳うインターネットブラウザであれ、食材のより早い注文方法を提供する新たなモバイルアプリであれ、デジタル体験に関していうと、私たちはより早くゴールを達成したいのです。

UXの世界でも、この命題は事実とするに足ります。デザイナーはSDLC(Software Development Life Cycle=ソフトウェア開発ライフサイクル)のかなりの部分をユーザーフローの効率化と作業プロセスの単純化に投じており、その目的はあらゆることを簡単に、ユーザーフレンドリーに、そしてすばやく行えるようにすることです。

大抵のデザイナーは「速い=良いUX」ルールに例外があることを知っています。それにも関わらず、速さやその根源である時間が体験において果たす役割を理解している人は、ほとんどいません。

実際は、タイミングはUXデザインにおいてきわめて重要です。NNGのユーザビリティ指導者たちはかつて、「Powers of Ten」を基礎としたシステム体系全体を作成しました。

それでは、現在作成している体験がユーザーフレンドリーなタイミングとなっているか確認したり、デジタルプロダクトの反応が遅すぎるか(もしくは意外とあるのが、速すぎるか)を知ったり、タイミングを念頭に置いてユーザー体験をデザインするのには、どのようにすればよいのでしょうか?

覚えておくべき時間

Jacob Nielson氏が作成した、「Powers of Ten」を基礎としたUXデザインに関する時間設計の体系は、0.1秒から100年にいたるあらゆる範囲に適用できます。この体系に記されているデザインの要点は、時間スケールが上位に近づくにつれ、少し抽象的になっていきます(すべてのUX製作者がこれからの100年の時間設計を念頭に置いてデザインしていくことになるとは思いません)。覚えておかなければならないのはより短期間の項目です。

たとえば10分の1秒は、ユーザーがWebサイトの視覚的訴求についておおまかな判断を行うのにかかる時間です。10分の1秒とは、インターフェイスを伴っているプロダクトについてユーザーがおおまかに意見を形成するのにかかる時間なのです。

1/10はスクリーンを追うときに人間の目がある点から別の点に動く速さです(画像元:IXD at Pratt Institute

わずかな時間ですが、10分の1秒というタイムフレームは、ある体験がユーザーのアクションへ応答するのにかかってよい、最長の時間でもあります。

すなわち、アクションによって表示された応答はユーザーにより直接引き起こされた応答であるとユーザーがみなしうる時間です。どんな応答も10分の1秒以上かかると、体験を直接引き起こしているのはユーザー自身だという幻想がユーザーからなくなってしまいます。応答に10分の1秒かかるということはつまり、その応答を生み出しているのはPC(またはスマートフォン)だということが明らかになり、体験を覆い隠していたベールが上がり、ユーザー体験が損なわれるということなのです。したがって、体験の応答が10分の1秒以下であるということは、体験においてきわめて重要なことです。

Powers of Tenによれば、それ以外の覚えておくべき重要な時間は、以下のとおりです。

  • 1秒:新しいページが表示されるのにかかる最長時間
  • 10秒:体験の応答を待っているときに、ユーザーの集中力が持続する最長時間(すなわち、ページの読み込みに10秒以上かかれば、ユーザーはインタラクションをやめる)
  • 1分:ユーザーが簡単な作業を終えるのにかかるべき、大まかな時間

UXデザインを行う間、机にストップウォッチを置いておく必要はありません。しかし、デジタルでの体験を分析したり、プロダクト独自の体験を作成する際は、このような制限時間に従うことが不可欠です。このような制限時間は、ユーザーフレンドリに関する体験の時間設計をチェックするときに、優れたベンチマークとして機能します。

すべては相対的

Nielsen氏は絶対的なUXベンチマークを与えるため、たくさんの数値を試してきたのかもしれません。しかしDave Malouf氏は、ユーザビリティにおけるタイミングを考えることができるもう1つ方法を提供しています。

かつて2007年、彼はタイミングが4つのインタラクションデザインの基本要素のうちの1つであり、なおかつタイミングの時間自体を3つの下位要素に分解できると仮定しました。

時間の3つの下位要素のうち、もっとも直接的に使用できるものの1つは「体験のペース」です。体験のペースは、一定の時間間隔内にユーザーがどれだけ多くのことを達成できるか、で表されます。

アインシュタインが相対性理論を説明するよう求められたとき、「公園のベンチでかわいい女の子の隣に座っている1時間は、1分間のように経過する。しかし、熱いストーブの上に座っている1分間は、1時間のように感じられる。」と彼は答えたとかつて報告されました。

この引用の妥当性について、すなわちこの比喩が相対性理論にどれだけうまく当てはまっているのかについて、私はコメントできません。しかしこの比喩は、私たち皆が真実であると知っている、「感じる時間の長さはしばしば、実際に経過した時間とは異なる」という概念をうまく描写しています。そのような感覚的な時間と実際の時間の相違は、良いペースの体験をデザインするための重要な要素です。

Malouf氏は決済の例を用いて、実際はフォームフィールドを埋めるのに同じ時間しかかからない2つの作業がユーザーにはどれだけ違って感じられるかを説明しています。たとえ決済作業が同量の動作しか必要としていなくても、すべてのフォームフィールドを1つのページで埋める場合はページが分かれている場合に比べて長く感じられることでしょう。

より消化しやすい固まりごとに決済作業を分割することが最良の方法となるのはこの相違のためです。作業の分割は、ユーザーの作業のペースを改善します。ユーザーの費やす時間が、作業を1つのページに集約した場合より長くなるおそれがあってもです。

Madeの明瞭でシンプルな決済作業はすばらしいペース設計です(画像元:UserZoom

ペースの設計は、他の形でもユーザー体験に現れます。速く動きすぎるカルーセルやスライドショーをデザインすると、ユーザーはスクリーンから消えるまでに、その情報を理解することができません。また、遅く動きすぎるようにデザインすると、カルーセルであることがユーザーにまったく認識されないおそれがあります。

時間を考える

まさにSF映画や物理学の授業のように、ユーザー体験における時間は扱いづらい存在です。時間設計はユースケースに大きく依存しているため、常に当てはまる経験則や確かな公理を突き止めることが困難です。

したがって、ルールのリストを参照しようとするかわりに、タイミングを念頭に置いてデザインしてみましょう。時間のレンズを通してユーザー体験をみることは奇妙に思えるかもしれません。しかし、その視点がいつも、ユーザビリティに新鮮な感覚を提供し、ユーザー体験を促進するもう1つのデザインツールをツールボックスに加えてくれるのです。


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