UXデザインと倫理、社会的な影響を考える『Ethical UX Meetup』開催レポート

UX MILK編集部

モノづくりのヒントになるような記事をお届けします。

UX MILKの山本です。10/25(水)に株式会社ワンパクさんにて、「Ethical UX Meetup」というイベントを開催しました。

いつものUX MILKのイベントとは少し毛色の違うイベントでしたので、改めて開催の経緯や実際当日はどのように開催したかについて、ご紹介したいと思います。

開催の経緯

昨今、デジタルなサービスやプロダクトが世に溢れ、その社会的影響が語られる場面も増えてきました。サービスの倫理、道徳的側面。持続可能性、環境への影響。プライバシーやセキュリティ、人権の問題などさまざまな問題が語られています。これらの責任は誰が取るべきなのでしょうか?

イベント名にも入っている「Ethical(エシカル)」は、英語で「倫理的」「道徳的」という意味を示し、近年では環境保全の文脈で使われることも多い言葉ですが、広く「社会的な影響を考える」というニュアンスでも使われる言葉です。

UXデザインに携わる我々にとって、サービスやプロダクトのデザイン、そしてその先にあるユーザーのことを考える以上、倫理感や道徳感というものは避けて通れないものだと思います。

そして、そのデザインが世の中に出たときに、実際にそれを利用するユーザーだけでなくその周囲の社会にも目を向けていく必要があるのではないのか、UX MILKではそれを考える機会をまず作りたいと思い、このミートアップを企画しました。

こちらから伝えるよりも「皆で考えて議論する場に」

「エシカルUX」という言葉を使ってはみたものの、非常に大きいテーマですので、体系的なナレッジやノウハウを伝えるような場ではなく、皆でディスカッションして感じる課題意識を共有したり、日々携わっているデザインの中で何ができるかなど、まず身近なところから考えていく場を目指しました。

そのためエシカルUXについて、関心のある方、考えに共感してくれた方、公募で来てくれた方などに登壇してもらう「情報共有セッション」と、その話題を元に語る「みんなでディスカッション」で構成しています。

当日の雰囲気は主宰の三瓶のスライドをご覧ください。

主催の私たち自身もそもそも「エシカルUX」という表現を用いることが適切かどうかも考えているところなので、それすらも一つの議題として参加者の皆さんとシェアしました。

模造紙を使った情報の可視化

今回は議論を促進するために、ネットイヤーグループ株式会社の原田紘子さんにグラフィックレコーディングをお願いしました。セッションの記録というよりは、イベントを通して参加者が主体的に思考し、議論できるように視覚的にファシリテーションをしていただくようなイメージで進めてもらいました。

これに加え、イベントを通して問いたいテーマに関しては別途模造紙を作成し、参加者の皆さんには議論をしながら好きに書き込んでもらい、どのような議論が起こったのかを可視化しました。

情報共有セッション

ここからは実際のイベントの様子を紹介していきます。

情報共有セッションでは計6名の方から話題を提供していただきました。今回は初回ということで、エシカルデザインのトレンドや考え方などのベーシックな部分を前半の3名の方に語っていただき、後半3名の方はよりそれぞれがどうこのテーマに対して自分ごと化していくのかの考えをシェアしていただきました。

世界のデザイナーが身につけている「Ethical」の根底にある考え方

株式会社エクサ UXリサーチャー/デザインスプリントマスター 安藤 幸央さん

エシカルデザインと3つの問い

ustwo London ltd. Product Design Lead 中村 麻由さん

そのUXは社会にどんな影響を与えているのか

有限会社リズムタイプ 代表取締役 / 株式会社デジタルステージ CXO 栄前田 勝太郎さん

Ethical design for learner experience

Classi株式会社 UXデザイナー 松本 直幸さん

MITメディアラボとエプスタイン問題に見る日本人技術者倫理への緊急提言

株式会社Topknock WEBエンジニア Maa_Maaさん

Webアクセシビリティと普遍性 ~個人的なこれまでとこれから~

株式会社ワンパク テクニカルディレクター  道家 陽介さん

各セッションを一連の流れとしてグラレコでまとめていただいたものはこちらです。

作成:ネットイヤーグループ株式会社 原田紘子さん

みんなでディスカッション

情報共有セッションの間にはみんなでディスカッションする時間をはさみました。情報共有セッションで提供された話題や、参加者の皆さん自身が考えていることなどを、グラレコを見たり、壁の模造紙に書き込んだりしつつ自由にディスカッションしてもらいました。

3つの問いの模造紙は、最終的にこのようになりました。

あなたが思うエシカルって?

イベントのテーマが「エシカル」という大きい且つ定義もふんわりとした言葉だったこともあり、まずはイベントのチェックインとして、参加者がこの言葉に対して思うそれぞれの定義を書いてもらいました。最初は何を書いていいのか、皆さん苦戦していましたがイベントが進行するにつれて、ぽつぽつと書き込みが増えていきました。

あなたの仕事におけるエシカルって?

このイベントの本題でもある、「エシカルUXをどういった形で自分ごと化して、仕事などで実践していくのか」ということの第一歩として「あなたの仕事におけるエシカルとは?」という問いを用意しました。吹き出しなどでも書いていただいていますが、「社会に害を与えない」→「そもそも害って何?」や「リテラシー格差との戦い」→「格差があるとダメなのか?」など、次々と問いが生まれ、議論が白熱していました。

あなたが思う社会課題とは?

エシカルUXを考えるにおいては兎にも角にも社会に目を向けなければならないので、「あなたが思う社会課題とは?」という問いを3つ目に貼りました。

環境問題や地域格差、人口減少など幅広い話題があがりましたが、中でもエクサ安藤さんがシェアしていた「子供がYoutube動画ずっと見続けてしまうといったような、依存を引き起こすデザインは倫理的にどうなのか?」には共感・便乗される方も多く、サービスの依存性やダークパターンなどの問題はWeb・アプリ界隈である私たちにとっても身近に感じる話題だったようです。

開催を終えて

初めての試みでどうなるのか不安もありましたが、初回にも関わらず濃厚なアウトプットをシェアしていただいたスピーカーさん、活発に議論をしてくれた参加者の皆さんのおかげで多くの考えるきっかけを生む夜となりました。ご参加いただいた皆さま、会場を提供いただいた株式会社ワンパクの皆さま、改めてありがとうございました。

まだ具体的に解が出るものではないですが、海外ではもう当たり前のように語られるような領域ですし、1クリエイターとして常にアンテナを張っておきたいテーマだと思います。これからもこうして考えるきっかけを頻繁に作っていければと思っていますのでよろしくお願いいたします。

次回開催

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早くも次回、「Ethical UX Meetup #2」の開催が11/12(火)に決まりました。情報共有セッションは新たに6名の方が名乗り出てくれてますのでお楽しみに。ディスカッションの議題は1回目と同じものを考えています。ご興味のある方は、ぜひふるってご応募ください!

概要

【日時】11月12日(火)19:30~22:00 (19:15 open)
【場所】株式会社メンバーズ
【住所】東京都中央区晴海1‐8‐10
    晴海アイランドトリトンスクエアオフィスタワーX 37階
【費用】¥1,000

応募定員

定員40名

応募期限

11月4日(月) 23:59まで

 

イベント参加応募ページ

スピーカー募集

もしこのテーマで次回以降、話題提供されたい方がいらっしゃいましたら、下記フォームからご応募ください。「エシカルUX」やその周辺の話題で5分のライトニングトークをしていただきます。この企画は継続的にやっていきますのでぜひ皆さんのストーリーもお聞かせください。

あくまで「話題提供」ですので、気軽に知っていることを共有していただいたり、普段から抱えている問いなどを共有いただくのでもOKです。オンラインでの開催も考えていますので、東京以外の地方の方もぜひ名乗り上げてください。

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