サービスデザインの概要と方法論

Interaction Design Foundation

Interaction Design Foundationはグローバルにデザインレベルの向上を目指す、デンマーク発の非営利団体です。

この記事はInteraction Design Foundationからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

Service Design - Design is Not Just for Products

Author/Copyright holder: Marcel Münch

サービスデザインは、ユーザーや顧客のニーズにより適したサービスをデザインすることです。サービスに関係するすべての行動や設備、意思伝達、人々、素材を精査し、サービスのクオリティだけでなく、サービス提供者と顧客のインタラクションを改善します。

サービスデザインの目的は、サービスの収支や持続可能性を維持しながら、もっとも顧客に適した方法でニーズを満たすような、フロントエンドとバックエンドの戦略を構築することです。ユーザーフレンドリーで、かつ市場競争力があるサービスが理想的だと考えられています。

サービスデザインはさまざまな専門分野から構成されます。もっとも一般的な分野には、エスノグラフィ、情報科学、インタラクションデザイン、プロセスデザインなどがあります。

サービスデザインは、新しいサービスの開発や既存のサービスのパフォーマンス改善にも利用されます。Carnegie School of DesignのMatt Beale氏は次のように述べています。

「デザインとは、何かを利用者にとってより良く正しくすることです。」

サービスデザインの概略

1982年、「サービスデザイン」という用語はLynn Shostack氏によって誕生し、サービスデザインはマーケティングとマネジメントの一環であるとされました。企業は社内のプロセスがそれぞれ互いに、どのように影響し合うかを詳述する「サービスブループリント」を作るべきだと彼女は提案しました。サービスブループリントは、当初サービスデザインにのみ利用されていましたが、現在では経営効率を管理するツールにもなっています。

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サービスブループリントでは、それぞれのプロセスが互いに与える影響を明確に記述します。

その後1991年に、KISD(Kohn International School of Design)のMichael Erlhoff教授が、サービスデザインをデザイン分野とみなすことを提案しました。彼はさらに、サービスデザインについて教育する大学の国際的な複合企業と、この分野に関与する学者や専門家のネットワークを形成しました。

そしてこのネットワークの中で、次のような定義が構築されました。

サービスデザインの定義

「サービスデザイン」は新しい分野でありながら、既存の学問の一部でもあり、サービスの生産性やクオリティを向上させることができます。

サービスデザインは、以下のものに対して体系的でクリエイティブなアプローチを提供します。

  • 競争力を保てるよう、組織のニーズを満たす
  • 上昇し続ける顧客の選択肢とクオリティに対する期待に応える
  • 技術革新を活用してサービスを生み出し、提供し、消費する可能性を拡大する
  • 持続可能性を維持するために、逼迫した環境的課題、社会的課題、経済的課題に対応する
  • 革新的な社会モデルと行動をうながす
  • 知識や知見を共有する

また、彼らはサービスデザイナーの役割についても提示しました。

サービスデザイナーの役割

サービスデザイナーは次のことができます。

  • ほかの専門家には見えないものを視覚化し、表現し、演出し、まだ存在しない解決策を描く
  • ニーズと行動を観察して解釈し、実現可能なサービスの機能をつくり出す
  • 体験に基づく言葉でデザインの品質を表現し評価する

また、サービスデザインがどのように機能すべきか、目標を立てました。

  • サービスデザインは便利で、使いやすく、魅力的で、効率的で効果的なサービスを作り出すことを目指す
  • サービスデザインは、成功に欠かせない要素として、顧客体験とサービスのクオリティに焦点を当てた、人間中心のアプローチである
  • サービスデザインは、戦略やシステム、プロセス、タッチポイントのデザインをまとめて決断する、総合的なアプローチである
  • サービスデザインはユーザー指向、チーム基盤、そして学際的なアプローチや手法を統合した、体系的で反復的なプロセスであり、それは常に学び続ける前提にある。

これらの定義は、長年にわたって少しずつ進化してきましたが、サービスデザインの根幹にある精神であり、サービスデザイナーがすべき役割であることに変わりません。

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サービスデザインの方法論

Morelli氏は2006年に、サービスデザインの方法論を3つの方針で運用することを提案しました。

  • 分析ツールを活用してサービスの利用者を認識し、定義する
  • サービスのシナリオを定義し、利用者とのインタラクションを反映するため、利用状況を設定して順序付ける
  • 必要に応じてダイアグラムと文字要素でサービスを表現し、すべての物理的な要素、利用者、インタラクション、シーケンスを示す

分析に使われるツールには、社会調査、エスノグラフィ、人類学などがあります。これらの分野には膨大な種類のツールが存在しているので、サービスデザインのプロジェクトに適切なツールを選ぶ際には、注意が必要です。

デザインツールを使用して、サービスブループリントを描き、サービスに含まれるインタラクションの性質や特性を決定しましょう。これらのツールは、サービスのシナリオや使用状況の設定にも活用できます(ただし、これらに限定されません)。

デザインツールはソフトウェアのデザインに使われるツールと似ているため、デザイナーの方はほとんど問題なく使いこなせるでしょう。サービスデザインでは往々にして、これらのツールの対象範囲が広くなり、マネジメントの技術(カイゼン、ジャストインタイム方式、統合的品質管理など)にまで及ぶことに注意してください。多くのサービスシステムでは、顧客とのやり取りが曖昧に定義されているため、本来工業用である品質管理法を選ぶ際は難しい選択を迫られます。

サービスブループリントを描くことは、サービス範囲の導出に役立ちます。ストーリーボードは多くの場合に推奨できるツールですが、必ずしもこれを使う必要はなく、デザイナーはサービスとプロジェクトに適したツールを選択するべきです。

まとめ

サービスデザインは、プロダクトデザインと同じくらい重要です。UXデザイナーは、WebのプロダクトがWebサービスに進化するにつれて、サービスデザインがますます重要になることがわかるでしょう。幸いなことに、UXデザインとサービスデザインで使う基本的な技術は似ています。これらは多少スコープが違うだけなのです。

Author/Copyright holder: _dChris . Copyright terms and licence: CC BY 2.0
サービスデザインと既存のUXの方法論は似ているため、UXデザイナーは、この分野でチャンスを見出せるでしょう。

参考

Lynn Shostack氏の出版物は、「How to Design a Service」から閲覧できます。European Journal of Marketing 16(1):49-63. "Design Services that Deliver." Harvard Business Review(84115): 133-139. They are available in hard copy only.

サービスデザインブループリントについては、Wikipediaを参照してください。

Morelli氏の作品は、「Designing product/service systems. A methodological exploration」でご覧になれます。Design Issues 18(3): 3-17, 「Developing new PSS, Methodologies and Operational Tools.」 Journal of Cleaner Production 14(17): 1495–1501.

Design4ServicesのWebサイトは、サービスデザイナーにとって優れたリソースです。


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