最適なタイミングを考慮したデザインをする

Sean McGowan

SeanはCodalの技術研究者兼ライターであり、UXデザインからIoTまで、幅広いトピックに関するブログ記事を執筆しています。デベロッパー、デザイナー、マーケターらと共に、Codalが最高品質のWebコンテンツを制作するよう執筆チームをサポートしています。

この記事はUsabilityGeekからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

Start Designing With Perfect Timing

デジタル領域において、速いことは良いこととほぼ同等の意味を成します。読み込み速度の速いインターネットブラウザにせよ、より速く食事を注文できる新しいアプリにせよ、デジタル体験のこととなると私たちはできるだけ早く目的を達成したいものです。

UXの世界も例外ではありません。デザイナーは物事をより簡単に、使いやすく、速くするために、非常にたくさんのSDLC(システム開発工程)をユーザーフローの合理化やプロセスの簡略化に注いでいます。

デザイナーのほとんどが「速い=良いUX」という規則に例外がある(体験にちょっとした難しさを加える効果が確証されている)ことは認識していますが、体験においては速さだけではなく、時間が重要な役割を担うことを把握しているデザイナーは一握りでしょう。

事実、タイミングはUXデザインにとって極めて重要であるため、Nielsen Norman Groupのユーザビリティのプロたちは、「Powers of Ten」1968年に撮影された短編ドキュメンタリー)の概念をベースとしたタイミングにまつわるシステムを作り上げました。

さて、あなたが作り出している体験は、ユーザーにとって使いやすいタイミングを提供していると言えますか? デジタルプロダクトの反応が遅すぎる(もしくは意外にも、速すぎる)か、どのように見極めていますか? タイミングを考慮しながら、どのように体験をデザインしますか?

覚えておくべき時間

Jakob Nielson氏の、UXデザインにおける「Powers of Ten」は、0.1秒から100年の全時間枠に渡って述べています。デザインで学ぶことは時間の数値が大きいほど抽象的になりますが(UXデザイナーが100年先まで考えてデザインしているとは考えにくいですが)、特に覚えておくべき重要なことは数値が小さい方です。

たとえば、0.1秒は、ユーザーがWebサイトの視覚訴求についておおよその判断をするのにかかる時間です。つまり、ユーザーが接しているプロダクトについて評価をくだすのにかかる時間は、たった0.1秒だけということです。

アイトラッキングの画面上で人間の目はポイント間を0.1秒もの速さで移動していきます(画像提供:IXD at Pratt Institute

非常に短い時間にみえますが、この時間枠はユーザーが直接操作をしているようにみせるために、体験がユーザーの操作に対して反応できる最長の時間でもあるのです。これ以上長くなると、ユーザーが直接体験しているという感覚を打ち砕いてしまいます。反応しているのはパソコン(もしくはスマートフォン)ということがわかると、ベールは剥がれ、ユーザー体験が損なわれます。そのため、応答時間は0.1秒か、それよりも速くすることが重要になります。

Nielson氏のUX Powers of Tenから、覚えておくべき重要な時間を抜粋します。

  • 1秒:新しいページを表示させるための最長時間
  • 10秒:反応を待っているときのユーザーの注意持続可能な最長時間(ページの読み込み時間が10秒以上かかると、ユーザーの離脱率が高まります)
  • 1分:ユーザーが簡単なタスクを終わらせるためにかけられるおおよその時間

ストップウォッチで測りながらUXデザインをする必要はありませんが、デジタル体験を分析したり構築するときには、これらの制限時間を考慮することが重要です。体験のタイミングがユーザーにとって利便性の高いものかどうかチェックする基準として、大いに役立つでしょう。

時間の感じ方は相対的である

Nielson氏は複雑な計算をおこない、具体的なUX基準を提示したかもしれませんが、ユーザビリティ、おけるタイミングについて従来とは違う観点を導いた人物はDave Malouf氏です。遡ること2007年、Malouf氏はタイミングがインタラクションデザインの4つの基本原則のひとつであり、さらに時間というもの自体は3つのサブ原則に分類されると仮定しました。

3つのサブ原則の中でもっとも直接的に使える原則は、体験のペースでしょう。このペースは、一定の時間内でユーザーがどのくらいの量を達成できるかを示します。

相対性理論に対しての説明を求められたAlbert Einstein氏は、「かわいい女の子と公園のベンチに1時間座っていても、1分間ぐらいにしか感じられません。ところが、熱いストーブの上に1分間座ってみてください。まるで1時間ぐらいに感じられるでしょう」と述べています。

この言葉の妥当性や比喩的表現が機能したかは置いといて、Einstein氏は、体感時間は実際の経過時間とは大きく異なる、という周知の事実であるコンセプトを巧みに表現しています。この感じ方の相違が、優れたペースで体験をデザインするキーポイントなのです。

Malouf氏は支払いの例を挙げ、達成までにかかる時間が同じ2つのプロセスでも、ユーザーにとって体感時間が異なることを説明しています。両プロセスとも同じ量の操作を要求しているにもかかわらず、入力フォームすべてを1つのページに配置した方が達成するまでの時間が長く感じると述べます。

そのため、消化しやすい大きさに支払いのプロセスを区切ることがベストプラクティスなのです。実際には1つのページに集約するよりも時間がかかるかもしれませんが、ユーザーが作業量をこなすペースは改善されます。

Madeのスッキリしたシンプルな支払いプロセスは素晴らしいペースを提供しています。(画像提供:UserZoom

ペースは、ユーザー体験の別のところにも関係しています。カルーセルやスライドショーの動きが速すぎると、ユーザーが表示された情報を読みとる前に画面から消えてしまいます。反対に、遅すぎると、それがカルーセルだと気づかれない恐れが出てきます。

時間で遊ぼう

SF映画や物理学の授業のように、ユーザー体験においても時間は一筋縄ではいきません。ユーザーのケースに大きく左右されるため、必ず当てはまる経験則や確実な行動原理を特定することは非常に難しいでしょう。

したがって、ルールの一覧を参考にするのではなく、あなたの感覚を優先したタイミングでデザインしてみましょう。時間的なレンズを通してユーザー体験を見ることは慣れないかもしれませんが、毎回、ユーザビリティに対して新たな観点をもたらし、魅力的なユーザー体験をデザインするための技法を増やしてくれるはずです。


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