マーケターもUXを優先すべき理由

Atman Rathod

Atman Rathodは、過去13年間にわたって運営されている大手Webおよびモバイルアプリ開発会社、CMARIX TechnoLabsの共同設立者です。テクノロジー、スタートアップ、起業家精神、ビジネスに関して執筆中です。

この記事はUsabilityGeekからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

UX Should Be A Priority For Marketers Too

UX(ユーザー体験)はデザイナーだけが考慮すべき領域だという考えはすでに古いものとなりました。長く使われる優れたUXをつくり出す役割は、いまやビジネスの目標を達成するためになくてはならないものです。そういったことから、UXはデザイナーとマーケターの両方にとって優先して考慮すべきことになりました。

この記事では、UXがマーケターにどのように影響を与えるかについてご説明します。

柔軟性を超えたUXと市場調査について

UXの重要な要素であるユーザーリサーチと市場調査との適切な関わり方を考えてみましょう。それぞれの実践は、調査の結果に基づいて最適なデザイン上の意思決定を行うため、お互いを補い合う関係として結びついています。

SimpleUsabilityが解説している通り、市場調査は、ターゲットとなる市場のブランドやプロダクトに対するロイヤルティ、その市場規模の測定に役立ちます。一方、UXリサーチは、ターゲットとなるユーザーの要望とニーズを特定することに焦点を当てていて、こちらはUXの測定と改善に役立つでしょう。同じ記事で書かれている通り、この2つのリサーチ分野は、それぞれの目的の達成に有用な、ペルソナの使用、ユーザー分析、競合他社に対する分析といった具体的な技術をみると、共通する点があります。

実際、市場調査を通じて、アプリのデザイナーはターゲットユーザーの好みについてもっとも関連性の高い洞察を得て、それに応じてアプリをデザインすることができます。一方、優れたUXデザインは、ユーザーにとって具体的なソリューションとして、アプリを売り込むのに役立つのです。

優れた顧客中心のUXデザインは、マーケターがターゲットとなるユーザーにリーチし、UXデザインに関するより多くの洞察を得ることに役立つのです。つまり、優れたデザインは市場調査の基礎となり、それがまた将来的にデザインをよりよくしていくのです。

マーケティングと販売の関係

UXデザインにはもっとも特徴的な側面として、対象とするユーザー側から強く要望されているものであるという点が挙げられます。そのため、プロダクトのデザインを最終的に決定する前に、ターゲットユーザーが好むものと好まないものを知ることが、ことのほか重要です。より多くのユーザーを惹きつけ、エンゲージメントを促進し、コンバージョン率(CVR)を向上させるのは、顧客中心のデザインによってこそ実現できることなのです。効果的なマーケティングキャンペーンの成功が、新たに獲得した見込み客の数によって最終的な評価をされるとするならば、優れたUXは、ビジネスを成功に導くためのもっとも大きな力となるのです。

圧倒的に素晴らしいUXのデザインを通じて、新しいユーザーを惹きつけることを考えるのであれば、次のような点を心に留めておかなければなりません。

ユーザビリティだけがUXではないし、その逆もまたしかり

ユーザビリティはUXになくてはならないものであり、優れたユーザビリティとは、UIの使いやすさ、パフォーマンス、視覚的な魅力によって定義されるものです。これに対しUXの範囲はそれよりもはるかに広く、ユーザーとデジタルプロダクトとのインタラクション全体に関わるものです。UXは、プロダクトを使用する際のユーザビリティ、UI、ユーザーの振る舞いや活動で構成されます。UXをつくり上げる上でユーザビリティがもっとも決定的な役割を果たしますが、他の側面がビジネスにおいての望ましい方向にユーザーを誘導できない場合は、そのUXにはまだ、最適化の余地があると言えるでしょう。

UXの積極的な推進はマーケティングの要求でもある

ターゲットとなるユーザー向けにつくられた優れたUXは、顧客満足度をクリアし、ビジネスの向上を促進するために極めて重要な役割を果たします。ユーザーに愛される優れたUXは、ライバルとの競争に打ち勝ち、脚光を浴びる方法でもあります。これが、UXがマーケティングにおいて重要な役割を果たすと言える理由です。

優れたUXはブランドへの信頼度を高める

優れたUXはユーザーに満足感を与え、そのユーザーがそのプロダクトを他の人々にすすめることにつながります。ユーザーがプロダクトについて活発に話し合い、書き込み、共有することで、素晴らしいアプリがたった一夜にして人気を博すことになるというストーリーが現実にあるのです。

UXデザインとデジタルマーケティングのバランスをとる

ビジネスのコンバージョン数だけに過剰にこだわりすぎると、デジタルプロダクトのUXがおろそかになることが多く、これは長い目でみるとプロダクトそのものに悪影響となるでしょう。一方で、モバイルアプリまたはWebサイトを価値のあるマーケティング資産とみなし、それに応じて優れたUXをつくり出すことを優先した方が、より売れるプロダクトに成長します。これが、UXデザインとデジタルマーケティングのバランスをとることが不可欠である理由なのです。

UXデザインの背後にいるマーケターの考え方

長期的な成長と成功を確実にするためにデジタルプロダクトを概念化すると、マーケターとUXデザイナーの考え方の違いが着実に小さくなっていきます。

UXデザインチームは、ユーザーがプロダクトを使用する際にどのように対峙し、行動するかに焦点を当てています。これに対し、マーケターもエンゲージメントの促進やコンバージョンの最大化を目指して、デザインの意思決定に加わります。

以下では、マーケターがプロダクトに成功をもたらせるよう、デザイン要素を訓練するのに役に立つ必須のツールをご紹介します。

顧客のペルソナ

デジタルプロダクトの中には、わずかな機能しか備えていないのに、特別な理由と目的のために特定のタイプのユーザーを惹きつけるものが存在します。これが顧客に関する洞察、人口統計、その他のタイプのデータに基づいて、マーケターがペルソナを作成する必要がある理由です。ペルソナを構築することにより、マーケターはユーザーに合った特定のデザイン要素や、その変更を支持する際の正しい根拠をもつことができるのです。

正確な洞察に基づいてペルソナを作成または調整する際には、Googleアナリティクスが優れたツールとなります。年齢、性別、場所、その他の人口統計カテゴリに基づいて顧客を分割することが可能です。また、類似アプリのヘビーユーザーとのインタビューも、デザインの決定に必要な、好まれる点、嫌われる点、動機およびその他の要因を知るのに役立つでしょう。

ユーザーテスト

アプリの使用状況で、実際のユーザーからのフィードバックを分析する必要があるでしょう。これをユーザーテストと呼びます。有効な戦略の一つは、まずはアプリに対して一定の信頼感を寄せていたり、長期的な使用価値を認識しているユーザーでユーザーテストを始めることです。そうすればユーザーを募集することも容易ですし、すでにそのプロダクトをある程度使用した経験があるからです。これらのユーザーがさまざまなレベルやユースケースでどのように行動するかを観察してみましょう。同様に、代表的なターゲットユーザーグループのユーザーでテストします。ペルソナは、これらが誰であるかを識別するのに役立ちます。このような新規ユーザーを観察することで、そのプロダクトのどの部分がもっとも好まれ、あるいは、好まれていないかを判断することができます。

7〜10人単位でのユーザーテストを実施すると、多くの使用パターンと、アプリのさまざまな要素の好き嫌いのパターンが確認できます。こうすることによって、エンゲージメントやコンバージョンを妨げているもっとも重大な欠点や障壁を知ることができるのです。

ジャーニーマップ

UXのさまざまな抜け穴やユーザーごとに異なる障壁に注目し続ける代わりに、デジタルプロダクト内のすべてのタッチポイントとインタラクションの領域を網羅する、包括的なユーザージャーニーマップを使用しましょう。このようなジャーニーマップは、ステップごとにユーザーのアクティビティとタッチポイントを評価するのに役立ちます。

大規模なジャーニーマップを扱うマーケターをサポートするには、ユーザーがコンバージョンに至るまでのプロセス全体を見渡すことができるドキュメントを添える必要があるでしょう。このマップにより、さまざまなタスクをそれぞれの専門家に割り当てて、インタラクションを改善することができます。

マーケターがもっとも注意を払うべきUXの要素

どのマーケターにとっても、デザイン要素の関連性を知っておくことは非常に重要です。それぞれのデザイン要素がマーケティングの結果にどのように影響を与えるか、あるいは、UXデザインにあまり影響を与えないのはどうしてか、といったことです。

みつけやすさ

マーケターはまず、プロダクトに関するオファーをみつけやすいものにする必要があります。ユーザーはさまざまな種類のコンテンツを探すときWebページを閲覧し、キーワード検索をかけ、SNSなどで呼びかけるなどの行動を起こします。このため、デザイン要素は、検索エンジン、アプリストア、ソーシャルメディア、その他の手段を通じてコンテンツをみつけやすくする必要があります。

卓越したビジュアル体験

優れたビジュアルは私たちの魂に永続的な印象を残すことから、UXの成功とマーケティングの成果にとって、きわめて重要であると考えられます。物語性のあるビジュアルはユーザーに魅力的な効果をもたらし、ブランドの迅速なプロモーションに役立ちます。一方、視覚的なストーリーテリングは、UIを魅力的に見せる効果もあります。

ブランドロイヤルティの促進

ブランドロイヤルティを促進することは、あらゆるデジタルマーケターにとってもっとも重要な目標の一つであり、優れたUXはその達成をサポートします。優れたパフォーマンスと魅力的なインターフェイスを備えた使いやすさは、顧客のWebサイトやアプリへの頻繁な再訪を促します。この満足のいくUXが、徐々にブランドへの信頼を醸成していくのです。

UXデザイナーとマーケターの共通の特性

現時点では、UXデザイナーとマーケターの間には、厳格な役割が割り当てられるというよりも、共通の関心事があると理解しているでしょう。これらの共通の要因や特性が、優れたデジタルプロダクトを提供するスマートなチームの一員として、それぞれがどのように機能するかということを示してくれます。

UXの最適化

UXデザインは、つねに一定以上のパフォーマンスを維持し、完璧とも言える体験を確保することに重点を置いていますが、一方マーケティングは、ブランドの印象を持続させることに重点を置いています。ブランドにプラスの影響を与える記憶に残るUXを提供することで、その両方の目標が1つに合わさるのです。

新規ユーザーの獲得

一般的にマーケターは、ターゲットユーザーと彼らが探し求めているものに注目しています。市場調査を通じてターゲットユーザーが好きなもの、嫌いなもの、好みなどを知ることにより、ターゲットユーザーが求めている要素をちりばめたUXを、デザイナーが提供できるのです。これが、マーケターとUXデザイナーが協力して新しいユーザーを惹きつけるためのソリューションと言えるでしょう。

ユーザーエンゲージメントを強化

マーケターは、ユーザーがコンテンツを検索し、利用するための適切な手段とツールを提供することにより、ユーザーのエンゲージメントを高めることに重点を置いています。UXデザイナーは、AR、VR、AI、機械学習などの最新テクノロジーを利用することで、ユーザーの期待に応え、エンゲージメント強化の面でサポートできるでしょう。

コンバージョンの強化

マーケターは、ユーザーが期待するインセンティブとプロモーションを提供することにより、ユーザーのプロダクト購入を促進します。そしてUXデザイナーは、より多くのコンバージョンにつながる積極的な行動をユーザーに促すために、完璧なページレイアウトとデザイン要素を提供して、この説得力を伴った努力でマーケターをサポートすることになるのです。

スムーズなカスタマージャーニー

マーケティングが素晴らしい成果をもたらし、ユーザーをWebサイトやアプリに誘導してきたとします。さてその次は、このユーザーが優れた使いやすさ、魅力的なUI、そして自分が望むものを容易に手に入れられるということに感動する番です。ここが、マーケターがトラフィックをもたらしたあとの、UXデザイナーの出番となるのです。

コンテンツ

多くのユーザーは、どれほどWebサイトやアプリの見栄えがよくても、有益なコンテンツが少なければ、長く滞在しようとはしないでしょう。そのため、コンテンツマーケティングが、マーケティングとUXデザイン要素のどちらにとってもきわめて重要な側面となります。UXデザイナーは、コンテンツの読みやすさと使いやすさを最適化する必要があります。

自動化

マーケターとUXデザイナーの両方が、行動、好み、嫌うもの、トリガーといったさまざまなユーザーの情報にアクセスする必要があります。この多面的なユーザーデータは、ユーザーの行動を理解し、適切にコンテンツとUX要素を提供するのに役立ちます。

マーケターはUXをどのように理解し、UXデザイナーと協力すべきか

デジタルプロダクトの成功のための、UXデザインとマーケティングがお互いを補い合うという役割はすでに確立されていると言えるでしょう。現在のデジタルプロダクトの文脈では、優れたUXを提供し、最大のマーケティングの成果を得るために、手に手を取って一緒に作業する必要があります。

市場調査は顧客の詳細を知るのに役に立ちますが、一方、ユーザーリサーチはUXを理解する上でもっとも関連性の高い洞察を得るのに役立ちます。マーケターとUXデザイナーの視点を組み合わせることで、より多くのエンゲージメントとコンバージョンに向けた適切なUXをつくり上げることができるのです。

この点で、市場調査とユーザーリサーチは、デジタルプロダクトの適切なUXを形づくる際に、次の側面を考慮する必要があります。

  • デベロッパーとデザイナーは、デジタルプロダクトの開発のあらゆる段階で、消費者の特定のニーズに対応する必要があります。
  • プロダクトの開発プロセスは、アジャイルかつインタラクティブで、つねに先を見越した開発手法に沿っているべきです。

この点で、マーケターは、消費者が望むものについて、正しい方向性でUXデザインのインプットを継続して強化するべきです。ユーザーに関する洞察とユーザーの要望をうまくミックスし、UXデザインに組み込むことは非常に重要となります。

UXデザインに多面的なストーリーテリングのアプローチを組み込むことも、デジタルプロダクトの成功に重要な役割を果たします。たとえば、さまざまなレイアウト、画像、コピーなどを組み合わせた、多くの方法でブランドストーリーを伝えることが可能です。ですから、ストーリーテリングのさまざまなやり方において、対象とするユーザーについての適切な見通しをもつことがアプリの成功にとってもっとも重要なことです。UXデザインはつねにブランドストーリーテリングの決定的な部分であり、マーケティングのメッセージは卓越したデザインによってのみ伝えられるのです。

最後に

UXはすでに、成功をおさめているブランドの多くのデジタルマーケターにとっての優先事項となっています。マーケターとUXデザイナーがそれぞれ果たす役割は、将来の顧客中心のデジタルプロダクトを形づくるために、引き続き補い合っていくのです。


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