私たちデジタルの専門家は、自分たちがなにをする必要があるかは理解していますが、他人を説得するのは苦手もしれません。この記事では、私が見つけた他人を説得させる効果的な技術をいくつか紹介します。
仕事をするためには、同僚や経営陣、ステークホルダーを味方につける必要があります。簡単に例を挙げるだけでも、以下のような事態が発生し得るでしょう。
- デザインの承認を得る
- サイトのリデザインを承認するよう経営陣を説得する
- 時代遅れのシステムをリプレイスする承認を得る
- 新しいデジタルチャネルの予算を確保する
- 新しいデジタルガバナンスの導入について合意を得る
考えられる事態はまだまだあります。
私たちががなにをすべきなのか知ることは簡単です。しかし、その必要性を他人に理解してもらうことは困難です。説得することは非常に難しいため、私の仕事の大きな割合を占めています。私は企業に赴き、経営陣に対して社内のデジタルチームが長年説明してきたことを実行するよう説得しています。
では、どうすれば承認を得ることができるのでしょうか? この記事では、私が使っている技術をいくつか説明したいと思います。うまくいけば、それらの技術はステークホルダーと仕事をする際に役立つでしょう。
1. 協力者をみつける
決して1人でアイデアを売り込んではいけません。もし1人で実行すれば、ほぼ間違いなく失敗するでしょう。そうではなく、ビジョンを共有する仲間をみつけてください。
仲間なんて存在しないと思っているかもしれませんが、実際には存在します。彼らはまったく同じビジョンをもっていないかもしれませんし、同じ方法で表現しているわけではないかもしれません。しかし、同じものから利益を得る以上、彼らも同じことを望んでいるのです。
たとえば、UXを改善するためのサポートを得たいとしましょう。その場合、改善された体験から恩恵を受けることができる人を探してください。
UXが向上すれば口コミも増える可能性が高いので、たとえばマーケティングチームはより満足すると考えられます。口コミが増えれば、マーケティングチームが評価される指標である見込み顧客数も向上するでしょう。
同様に、カスタマーサポートスタッフもサポートの負担を軽減できるため満足すると考えられます。つまり、顧客の満足度が高いほど苦情が少ないということです。
UXという用語を知らなかったり、そのコンセプトすら理解していなかったりするかもしれませんが、それでも彼らは利益を得ることができます。
2. 協力をうながす
次に、ビジョンを形成する作業に、多くの人を巻き込みましょう。自分が意図した解決策ではなくなるかもしれないので、難しいことは理解しています。しかし、答えを導くのに関与する人数が多くなるほど、彼らは多くの投資をするでしょう。
ソリューションの考案に関与していると、ソリューションを拒否する可能性が低くなり、ほかのステークホルダーに対して擁護する可能性が高くなるので、参加をうながすことは重要です。
デザイナーがいつもこの間違いをするのを私はみてきました。彼らは1人でデザインを作成し、クライアントに提示します。しかし、クライアントは作成に関与していないので、提出されたデザインを突き崩すことに達成感を得ます。
デザインにおいて協力は特に重要です。なぜなら、皆それぞれがルックアンドフィールのあるべき姿についてイメージをもっているからです。デザインに対する私たちの視点はすべて異なるため、デザイナーがデザインを提示しても、人々が期待するものではないでしょうし、ひどく驚かせてしまいます。
しかし、クライアントをワイヤーフレームやムードボードなどに関与させることで、彼らの期待も満たし始めるので、デザインはそれほど衝撃的なものにはなりません。
3. 語らずに提示する
デザイナーが得意とすることは、自分たちのアイデアについて語ることではなく、それを提示することです。説得するのではなくなにかを見せることで人々をワクワクさせるというのは、素晴らしい戦術です。
もしDisneyのスタッフが、RDFチップをサポートするためにパークの改装に10億ドルが必要だと経営陣に話していたら、彼らは笑い飛ばしていたでしょう。
説得するために、彼らはプロトタイプを作成しました。チームは倉庫を小さなパークに改装し、新しい技術を加えることで、この体験がどれだけ魔法のようになるかを経営陣に示しました。
人々を仲間にしたいなら、長いレポートを書くのはやめましょう。代わりに、感情的なレベルで彼らに共感してもらえるものをつくり出してください。提案したいことについて彼らを乗り気にさせるものが必要です。
4. 利己的な利益に焦点を当てる
人々を刺激する方法について説明します。
なにかを売り込むときには、売り込む対象の人々の利益に焦点を当てましょう。
UXの専門家がこの間違いをおかしているのをよくみかけます。UXデザイナーはユーザーが得られる利益を伝えることでステークホルダーを説得しようとしますが、その試みは大抵効果がありません。企業にとっての利益を提示したとしても、戦略として見込みがないことが多いです。
そうではなく、私たちの提案が、話している相手が所属する組織にどのような利益をもたらすかを重視しなければなりません。たとえば、マーケティングの責任者と話しているなら、提案がどのように口コミの数を増やすのか伝えられるかもしれません。一方で、財務管理者と話している場合は、コスト削減に焦点を当てることが得策でしょう。
5. 分割統治を行う
人々の利己的な動機をターゲットにする際の問題は、往々にしてグループに提案するということです。そのため、個人に合わせてメッセージを送ることはできません。
この問題の解決策は分割統治です。理想的は、グループミーティングは全面的に避けることです。部屋にいる全員が提案について議論すると、コントロールを失いやすくなり、そのアイデアを拒絶するように他人を説得する中傷者がいることさえあります。
個別にミーティングをすると、自分がすべてのフィードバックを返す立場になるので、権力を維持できます。それにより、相手の意見から行動に移すべき要素を選択して強調することができます。
もちろん、必ずしも個人的に会議を開けるわけではありません。グループミーティングが避けられないときは、事前にすべての重要な参加者とミーティングを開くようにしましょう。
これによって、他の参加者が会議に参加する前にに、伝えたいメッセージを調整して彼らを味方につけることができます。そうすれば、協力者とミーティングに参加することができ、うまく行けばミーティング自体が形式的なものにできるでしょう。
6. 予測可能な反対意見を回避する
グループプレゼンテーションをする際に念頭に置くことの一つは、予測可能な反対意見に先手を打つことです。つまり、誰かがなにかに問題を抱えているとわかっているなら、その問題が提起されるのを待っているのではなく、それについて自問し、反論を考えてください。参加者が言及しないことを望むのは愚策です。
反対意見に先手を打つべき理由は、グループダイナミクスに対応するためです。誰かが意見に異議を申し立てたときには、すでにくさびが打ち込まれています。彼らは「あなたの意見は酷いと思う」と言っているのです。
この時点で説得力のある反論を提示したとしても、異議を申し立てた人は自分の立場を変える気がないかもしれません。というのも、自分の間違いを認めなければならず、面目を失うからです。申し立てたのが組織の先輩であれば、撤回は特に難しいと感じます。
しかし、先輩が発言する前に反対意見に先手を打っておけば、彼らは同僚の前で面子を潰されることなく、自由に私たちの考え方に耳を傾け、自分の立場を変えることができます。
7. 潜在的な反対意見の理解に努める
どのようなアプローチを採用しても、つねに反対意見に直面します。反論を受けたら、言葉通りに理解しないように注意してください。
人々は必ずしも自分の意図を言いません。たとえば、上司と権力争いをしているといった、まったく関係のない理由から提案を拒否する人がいるかもしれません。そのような人は、単に本当の動機を隠すために反対意見を投げています。
さらによくある状況は、発言者が反対意見を述べるのがあまり上手ではない場合です。たとえば、あるステークホルダーが提示されたデザインを見て、「色が気に入らない」と言ったとします。なぜ彼は気に入らなかったのでしょうか?
人々が反論を投げたときには、根本的な問題を見つけるために深く掘り下げる必要があります。個人的にその色が好きではないのでしょうか、それともターゲットの顧客が否定的に反応するのを心配しているのでしょうか?
私たちが彼らに理由を明かすように求めなければ、根本的な問題を特定して対処することはできません。どの色が受け入れられるかは、推測の域を出ないでしょう。
8. リスクへの対応
最後に、リスクについて話さずにこの記事を終えることはできません。ほとんどの提案は、一般的に時間や金銭を消費するにあたって、何らかのリスクをともないます。しかし残念なことに、人々は非常にリスクを嫌います。現状を維持するほうがより簡単で安全だからです。
このようなリスクの受容に対する本能的な抵抗には、2つの対処方法があります。
まず、次のステップに進むことをステークホルダーに頼むだけで、知覚されるリスクを減らすことができます。たとえば、プロジェクト全体ではなく、実現可能性を実証するためにプロトタイプに従事してもらいましょう。あるいは、一部の参加者だけに提案の実現を推奨することもできます。
コミットの程度を小さな段階に分けることで、より受け入れられやすくなります。また、人間は一度1、2段階進み始めると、中断する可能性が低くなります。
もう一つの方法は、提案を受け入れるよりも、行動しないリスクを高くみせることです。行動しないことのコストを強調する必要があります。たとえば、ステークホルダーが計画を承認しないと、売上に影響したり、プロジェクトを逃したり、コストが増加したりするかもしれません。
魔法の解決策はない
当然、プロジェクトの承認を妨げるすべての障害を克服する魔法の解決策はありません。この記事でまとめた技術でさえも、実践するにはかなりの労力が必要です。
ステークホルダーを納得させるのは大変な仕事で、不可能なことに感じられます。しかし、不満を募らせても意味がありません。私たちは、一人ひとりが努力し共に働くことが現実であり、決して他人の提案を盲目的に受け入れることはありません。
私たちは自分たちのアイデアに価値があることを証明する必要があり、内部の駆け引きの荒波を乗り切れるエキスパートになる必要があります。