データドリブンでユーザージャーニーを構築する

Jess Vice

Jess Viceはソルトレイクシティに住むUXストラテジストです。WebサイトのUXを向上させる方法を長年探求し、ほかの人の改善方法を学ぶことに熱中しています。

この記事はThe UX Boothからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

UX101: Complete Guide to Building Data-Driven User Journeys

ユーザー体験において、ユーザージャーニーは、実際の人間がどのように企業を認識し、どのように企業とやり取りするのか可視化したものです。カスタマージャーニーやジャーニーマッピングのプロセスと呼ばれることもあります。ユーザージャーニーの文書や図は、ユーザーの視点から、ブランドや製品とユーザーに生じる重要なインタラクションを示しています。

なにをするのか:行動マッピング

ユーザージャーニーとは、ブランドの資産や提供物の中でもっとも移動される頻度が高い経路のことで、人々がブランドを知ってからたどる道筋を示しています。ユーザージャーニーの中には、ブランドがユーザーに期待している道筋を表したものもあります。一方で、ユーザーがもっとも頻繁にコンバージョンしたり、もっとも頻繁に離脱したりする経路を表した、データドリブンなものもあります。

ユーザージャーニーをまとめる際には、アリの巣を想像してください。人間がブランドを体験したり、操作したりする可能性のある方法と場所をすべて描きましょう。すべての要素を1箇所にまとめて、ユーザーがブランドに出会った順に線を引いていきます。つまり、アリの巣が入ったガラスに密着して、アリが構築したルートを追跡し、それぞれの使用状況を判断しようとするようなものです。

ユーザージャーニーは、ユーザーフローよりも広範囲で一般的です。ユーザーフローは、Webサイトやアプリ、プロセスの中で特定のタスクを完了するまでにユーザーが進んだステップを図示したもので、タスクフローとも呼ばれます。対して、ユーザージャーニーは、ユーザーがブランドにたどりつくまでの道筋、達成するタスク、したがった経路を集めたものです。

多くの場合、ユーザージャーニーはフローチャートで表されますが、期限が迫っている際には書面で共有したり、ホワイトボードにスケッチしたりもできます。ユーザージャーニーは、オンラインや現実世界のブランドプレゼンスに適応しています。たとえばWebサイトやアプリケーション、電話のプロセス、店内の閲覧だけでなく、飛行機で国を横断したり、レストランで食事したりといった生活体験でさえ図示できるでしょう。新規ユーザーやリピーター、あるいは提携先や販売会社、サードパーティから流入する過程もジャーニーマップに描くことができます。

なぜするのか:コンテキストを把握する

そもそもなぜユーザージャーニーを考えなければならないのでしょうか?

ユーザージャーニーによって、ブランドを支えるすべての部門やチームが繋がることができます。また、消費者のために存在するので、まとまりのあるブランドイメージを獲得できます。ユーザージャーニーは、ブランドで起こり得る体験の全体像を強調する効果があります。全体的なコンテキストは、ユーザーがどこから来て、どこへどのように向かったのかを把握し、ユーザーが日常的に逃している体験を特定するのに不可欠です。

多くの場合、ユーザージャーニーの道筋から、体験の重要な詳細を知ることができます。たとえば、以下のことができます。

  • サイト構造や情報の記録のミスを強調する
  • 新しいコンテンツやページを作る機会を提案する
  • ブランディングとマーケティングを一貫させる際のギャップを特定する
  • カスタマーサービスの応答で生じた遅延や不通を示す
  • プロセスの見落とされたステップにある摩擦を明らかにする

ユーザージャーニーマップは、ユーザーがサイトやブランドとどのようにやり取りするのか仮説を立てるものではりません。仮説を立てて機会を正確に特定するための視覚的な証拠をチームに提供するものです。

「よりよいコンテンツ」や「より豊かな体験」という名目で作られたにもかかわらず、ユーザーが発見した向きとは異なる方向に追い込まれるだけのWebサイトがどれだけあるか想像してみてください。

どこで、だれかやるのか:プロジェクト初期

新しいブランドや体験の作成、既存ブランドの監査、古いプロセスのオーバーホールといったどのようなプロジェクトであっても、ユーザージャーニーは一般的にリサーチ段階で作られます。顧客のペルソナや競合調査、サイトマップは、ユーザージャーニーを作成する前に欠かせないデータです。しかし、時代遅れのブランドではユーザー体験で利用できるあらゆるデータが、実際に起こっている現象についてチームの理解を深めるために、マップに追加されるかもしれません。

ユーザージャーニーはほとんどの場合、UXチームやユーザーリサーチチーム、最適化チームといった、ユーザーの体験を一部始終記録した「人々のデータ」にもっとも密接するデータチームが担います。これらのチームが小規模であったり、新しかったりする場合は、ユーザーのニーズや経路に2番目に近いコンテンツ戦略チームが担当することが多いです。コンテンツ戦略家がUXの専門家と同じように豊富なデータと時間を調査に割けることは少ないですが、だからといってジャーニーマップの価値が損なわれるわけではありません。ユーザー体験を一貫させ、障壁を解消しようとするどのような試みであっても、ユーザーにとっては好ましいことです。そして、ユーザーにとって好ましいことはビジネスにとって好ましいことでもあります。

どのようにやるのか:データ収集

ユーザージャーニーマップを作る最善の方法は、構築する組織の役に立つことと、誠実な態度です。優れたユーザージャーニーマップであれば、ユーザーの開始地点、経路、離脱地点、プロセスの中にある障害や摩擦を強調しているでしょう。また、チームはユーザージャーニーマップから、顧客の作業時間や達成率、カスタマーサービスの電話のニーズなどに関するデータを掘り起こすことができるはずです。

まず、既存の顧客のペルソナや競合調査、サイトマップをまとめることから始めましょう。必要に応じてこれらのデータを見直し、更新して、大まかにサイトマップと関連付けてください。このステップは、それぞれのペルソナがどのページにもっとも反応しているのか書き出すのと同じくらい簡単です。ペルソナが対応していないページや、あまり価値がないようにみえるページを特定することは、次のステップをどこから始めるのか考える助けになります。

新しいユーザージャーニーマップを作成する際には、Google Analyticsやヒートマップツールからユーザーデータを収集します。定量的なデータがない場合はユーザーリサーチを実施しましょう。訪問地点、サイトやプロセスを通過するユーザーの経路、障壁(高い離脱率や間違ったクリックパターンなど)、トラフィック、離脱地点に関するデータを探しましょう。調査結果を記録し、パターンを強調してください。

調査結果をページごとに、閲覧数に応じて記録しましょう。記録は二次元の表やフローチャートにまとめられるでしょう。私はホワイトボードや紙の下書きから始めるのが好きなので、データのギャップや体験の曖昧な部分を特定する時間があります。ユーザーがどこから流入して、どこに向かうのか、どのような障壁があるのか明確になったら、完全なジャーニーマップの構築を始めましょう。

Webから流入する例

ユーザージャーニーの複雑さは、簡単な絵文字のスケッチから7段階のデータドリブンな視覚化分析までさまざまです。しかし覚えておくべきこととして、ユーザージャーニーが有効かどうかは、ジャーニーが伝える情報のみによって決まります。もしチームがWebサイト体験全体の摩擦を減らすことに関心があるなら、利用できるデータのもっとも詳細な部分まで掘り下げる必要はないかもしれません。ユーザーがどのように感じているか段階ごとに分析するだけで十分でしょう。

Web上に存在するユーザージャーニーの事例を、もっとも簡単なものからいくつか挙げてみます。

以下のマップは、肯定的な感情と否定的な感情の程度や、重要なステップが相対的にどれだけ簡単なのかすぐに把握することができます。

出典:Appcues

Smithsonianのユーザージャーニーマップは、博物館での人々の体験を段階的に説明したもので、マップの下にコンバージョンまでの段階が強調されたレイヤーが加えられています。

出典:TopTal

政府のWebサイトでの体験をまとめたカスタマージャーニーマップは、貴重な情報を階層化した好例です。彼は1つの画像の中で、タスクを完了するまでのステップ数や使用しているデバイス、ステップごとの体験の感想、改善の機会を専門的に伝えています。

出典:InfoToday

複雑な事例として、以下の大学の体験マップのようなユーザージャーニーは、情報の階層がいくつにも分かれています。ただし、このようなマップのユーザビリティは非常に低くいです。マップを見た人は提示された情報を理解するために非常に努力しなければならず、プロセスを改善する際の障害や機会を特定するために分析し続けなければなりません。

注意:一番下の部分は「機会」と表示されていますが、これらの機会を明らかにする際に、マップ自体が色や視覚的な手がかりを通じて貢献できるわけではありません。そのため、チームの参加意識を抑制しています。データを役立てる前に解説者を通さなければならないとしたら、このユーザージャーニーマップは、実際には最適化のプロセスに悪影響を及ぼしているかもしれません。

出典:Behance

独自のマップを作成する

ダイアグラムの作成は楽しいステップです。

注意1:このリサーチプロセスでよく発見されることとして、新規のユーザーやリピーターなど、作成しなければならないジャーニーマップが複数ある場合があります。それぞれ作れるのは素晴らしいことなので、まずもっとも一般的なジャーニーか、もっとも深刻なミスがあるジャーニーから始めましょう。

注意2:ソフトウェアに従事する前に、ジャーニーを数回ホワイトボードに書くことをお勧めします。私はLucidchartが気に入っていますが、draw.ioやGliffyといったツールも十分に機能します。SketchやInDesignのようなデザインツールも選択肢の1つであり、プロトタイピングツールのInVisionも、ジャーニーの図の作成に役立つワイヤーフレーム機能が提供されていると思います。UXPressiaのように、テンプレート化されたカスタマイズできるユーザージャーニーを最初から備えたサービスもあります。

  • 描く:ユーザーがブランドとやり取りする際にたどる主なステップを書き出しましょう。おそらく広告キャンペーンに対する反応から始まって、リサーチで見つけた最終的なタッチポイントに至るすべてのステップを描くことになります。
  • レイヤーに分ける:それぞれの主要なステップに関連して、よくある訪問地点、離脱地点、障害や摩擦の発生した場所、デバイス、ユーザーの感情、作業時間といった、調査で明らかになったブランドでの体験に影響を与えかねない要素を記入してください。
  • 反復する:これがもっとも困難なステップです。マップを見ている人がわかりやすいのように、重要な体験ともっとも一般的な感情を取り出しましょう。少し離れてコーヒーを飲んで数時間後に作業を再開するべきかもしれません。
  • 意識調査:ここまでの作業にまったく詳しくない同僚にホワイトボードを見てもらい、同僚が理解できるかどうか確かめてください。また、表示されているデータからソリューションを考え始めることができるかどうかを確かめてください。
  • わかりやすくする:発覚した問題点を書き留めましょう。そして、自分やチームが理解しやすい方法で、デジタル形式で記録してください。
  • 解決策を見つける:さらに数人を巻き込んで、ユーザージャーニーマップで強調された問題を修正し始めましょう。

次のステップ:ステークホルダーとの共有

誰がユーザージャーニーマップを見ても、流入地点や経路、離脱地点、障壁や摩擦の発生地点を簡単に理解できるように留意してください。また、ユーザーの感情、デバイス、タスクまでの時間、さらに詳細な情報も、組織の体験の中でユーザーが進む道を彩るのに役立ちます。ユーザーージャーニーを作る最終的な目標は、チームが体験を改善し、顧客の感情を高め、タスク完了までのステップを減らすことができる場所を強調することです。


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