効果的な競合分析のためのガイドライン

Neil Turner

Neilは、イギリスのAstraZenecaで働くUXデザイナーです。現在さまざまなUXデザインのプロジェクトを率いています。

この記事はUX for the Massesからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

A UXers guide to competitor reviews

「優れた芸術家は模倣し、偉大な芸術家は盗む」

Pablo Picasso氏

私は自分をPablo Picasso氏のような偉大な芸術家と評するつもりはありません。それどころか、優れた芸術家と言うのもはばかられます。

しかし、私もまた、多くの作品を制作した盗人です。念のため付け加えますが、銀行強盗や空き巣といった悪い方法ではなく、よいデザインを盗むのが好きなのです。私は収集家みたいなもので、さまざまな素晴らしくて美しいものを、自分のコレクションとして集めています。収集は主に、自分が引き受けたプロジェクトについて学習する、競合分析の段階で行っています。

競合分析はデザインのひらめきを獲得できるだけでなく、ユーザーに開かれたほかのプロダクトやサービスの可能性についてアイデアを得るためにも重要です。また、ユーザーが適用するかもしれないメンタルモデル、物事が現実世界でどのように機能するか考えるプロセスについてインサイトを得られることもあります。

競合分析は優れたUXデザインを作成するために必須のステップです。そのため、私は何年もの間にもっとも便利だと発見したことに基づいた短いガイドラインをまとめてきました。競合分析などを実行する際に、貴重なUXの活動を最大限に利用するためのヒントやアドバイスを説明します。

競合分析を実行する

プロジェクトの初期に実行する

先に述べた通り、私は着手するプロジェクトの一部で、つねに競合分析を実施することにしています。競合分析は毎回実施するようにしましょう。分析はプロジェクトの早い段階で、発見の段階の最中に実施するべきです。早期に分析を実施すると、デザインプロセスに知見やひらめきを与えられるだけでなく、ユーザーが私たちの提供物と比較するだろうプロダクトやサービスの種類を特定する助けになります。

分析時間を決める

領域が多岐にわたるので、何週間も分析に時間をかけてしまうかもしれません。しかし、いくら有用だとしても、競合分析はデザインの過程の1つのステップでしかないのです。時間をかけすぎてはいけません。私は1~2日程度で十分済みますが、デザインスプリントやアジャイルスプリントでは半日か数時間しか掛けないこともあります。

分析者は多いほどよい

競合分析を実行するときには、できる限り多くの分析者を参加させましょう。異なる視点を増やせるだけでなく、ほかの人を別の領域に熱中させ、競合がどのようにデザインの課題に取り組んでいるのか考えてもらえるでしょう。優れた方法は、グループとして評価する競合を特定し、そのあとチームの中でこれらの評価を分割して担うことです。

ユーザーがどの競合を利用しているのか把握する

分析すべき競合はどのように決めればいいのでしょうか? まずは、ユーザーにどのプロダクトやサービスを使っているのか尋ねることから始めましょう。簡単なアンケートは、往々にしてユーザーに質問する素晴らしい方法です。また、アンケートは初期のユーザーインタビューの一部として調査する分野かもしれません。ForresterEconsultancyといった会社がまとめた市場調査も出発点として最適です。あるいは、どのアプリやWebサイトがもっともユーザーに人気があるのか調べるくらいシンプルでもよいでしょう。

直接の競合製品だけでなく、関連製品も分析する

レビューする競合のプロダクトやサービスの範囲を決める際には、直接の競合他社だけに限定しないようにしましょう。たとえば、私が旅行サイトのチェックアウトプロセスをデザインし直すプロジェクトに取り組んだとき、自動車メーカーやオーダーメイドの家具メーカーといったほかの業界では、どのようにユーザーが複雑なプロダクトをWebサイト上で検討できるのかを見てみました。これによって、自分たちの分野に適用できるかもしれない興味深いデザインのアイデアやアプローチを発見することもあります。

競合を実際に利用してみる

時間の制約によってはできないこともありますが、競合のプロダクトやサービスを分析する最善の方法は、それを実際に体験することです。サービスデザインの世界では、機知に富んだサービスサファリという名前で呼ばれています。たとえば、もしフィットネスアプリをデザインしているなら、現在の主要なフィットネスアプリをいくつか使用してみながら分析してみてもいいでしょう。

プロダクトやサービスを実際に体験することは、競合を分析する最善の方法です。

重要なユーザーの仕事や作業に焦点をあてる

競合を分析する際には、深夜にテレビをザッピングして興味のあるものを探すように、闇雲にプロダクトやサービスを見て回ってはいけません。そうではなく、ユーザーの主要な目的やタスクに焦点を当ててください。ユーザビリティレビューのように、ユーザーがなにを達成しようとしているのか定義することから始めましょう。

次に、プロダクトやサービスがユーザーの達成をどの程度助けているのか見てみましょう。たとえば、ポッドキャストアプリを評価しているなら、ポッドキャストを聴く、新しいポッドキャストを探す、お気に入りのポッドキャストの新しいエピソードを見つけるといったタスクを検討することができます。

たくさんの画像を保存する

私は競合他社をレビューする際にあちこちで写真やスクリーンショットを撮っていると、まるで観光客のように喜んでしまいます。競合分析の際に見つけたものを素早く取得してレビューするには、画像がもっとも優れた方法だと思うので、同じようにやることをおすすめします。私が画像の取得に利用している好きなスクリーンキャプチャアプリの2つがWindowsで利用できるScreenHunterと、Macで利用できるSkitchです。

情報は一箇所に集める

競合分析を実施する際には、すべての素材を一箇所にまとめておくと非常に便利です。競合分析をどこか一面に展示して保存するのが理想的ですが、リモートチームや、熱心なオフィスクリーナー、整理整頓に厳しいオフィスマネージャーもいるので、つねに可能ではありません。このような場合は、MuralMilanoteなどのツールを使ってネット上にボードを設置しましょう。また、Sketchは、ネット上に競合他社の素材の大規模なコラージュを作成するのに最適なツールです。ポストイット形式のメモやコメントを添付して、すべての画像を内包するようにしましょう。

テンプレートを捨てる

競合分析 テンプレート」 とGoogleで検索すると、表のテンプレートが非常にたくさん表示されるでしょう。しかし、すべて文章形式で画像に対応していないので、私は以下のParimala Hariprasad氏が提案するようなテンプレートは好みません。競合分析を実施する際にはテンプレートを捨てて、画像とポストイットのようなメモを使うことを推奨します。

競合分析のテンプレートはやめて、画像やポストイット形式のメモを使いましょう。

プロダクトだけでなく、機能でも整理する

上のテンプレートを見ればわかるように、ほとんどの競合分析は機能ではなく、会社ごとに分類されています。この問題点は、定められた機能やデザインパターンでは、異なる競合他社を比較するのは非常に難しいことです。かわりに、ナビゲーションやトップページなどの機能ごとに素材を整理しましょう。

機能ごとに整理する優れた方法は、写真やスクリーンショットをユーザージャーニーの段階に合わせて図示することです。以下のモバイルフィットネスアプリの例を参照してください。プロダクトやサービスのユーザージャーニーを簡単に追うことができるように、それぞれの競合ごとに行を変えてください。

ユーザージャーニーの段階に合わせて写真やスクリーンショットを図示することは、競合を機能ごとに簡単に比較する優れた方法です。

傾向や共通するデザインパターンを探す

競合分析の際には、共通の傾向やデザインパターンを確認してください。たとえば、競合するモバイルアプリをレビューするなら、共通の機能やアイコン、用語、ナビゲーションスタイルなどが特定できるかもしれません。もっと優れた方法があると思っていても、ユーザーは似たような慣習にしたがったデザインを期待している可能性が高いです。したがって、トレンドに逆らってしまうと、彼らの確立されたメンタルモデルに反するかもしれない点に注意してください。

競合のユーザーを調査する

ユーザーから直接知ることができる以上、どの競合のプロダクトやサービスが最高のパフォーマンスを発揮しているか推測する必要はありません。usertesting.comwhatusersdoのようなリモートテストツールを使用すると、競合のWebサイトやモバイルアプリのパフォーマンスを調べる迅速なユーザー調査を、素早く設定することができます。対面でのユーザー調査を実施したい場合は、私のユーザビリティテストのヒントやガイドラインをまとめた記事をチェックしてみてください。

リモートのユーザー調査や対面のユーザー調査を実施することは、競合の製品やサービスがどのように機能しているのか解明する優れた方法です。

競合分析を活用する

チームとして分析について議論する

競合分析を実施し、大量の画像やスクリーンショット、メモなどを整理できたら、チームとして集まって、発見したことを評価しましょう。理想的には、一覧できるように現実世界やネット上にまとめた競合分析のデータの周りで実施するべきです。チームの中で、どのような興味深いアイデアやデザインを見つけたのか議論しましょう。競合の中から盗むべきもの、つまりインスピレーションを得るべきものはどれでしょうか?

やみくもにアイデアやデザインを模倣しない

チームが競合のアイデアや機能、デザインパターンを模倣すべきどうか十分に考えず、盲目的にコピーしているのを何度も目にしたことがあります。ハンバーガーメニューが好例でしょう。つねに表示されるナビゲーションバーのほうが基本的には優れているにもかかわらず、少し前まではどのモバイルアプリにもハンバーガーメニューがありました。

アイデアやデザインが機能していることを知っている場合を除いて、そのまま模倣する際はとても注意が必要です。競合が長い時間をかけてデザインをテストしたと仮定したのかもしれませんが、その仮定はつねに正しいとは限りません。

結論

競合分析を実施すれば、デザインのインスピレーションを獲得できるだけでなく、ユーザーのメンタルモデルや、ユーザーに開かれた別のプロダクトやサービスの可能性についてインサイトも得られるでしょう。これらのヒントやアドバイス、ガイドラインに即して、プロジェクトごとに競合分析を実施すれば、優れたデザインを盗めるだけでなく、競合より優れたユーザー体験を提供できるようになります。


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