UXリサーチの各種テクニックとその活用法

Michael Craig

Michaelは経験豊富なデザイナーであり、リサーチに基づいたデザインプロセスにより、ユーザーの満足を第一に考えたUXを実現しています。

この記事はToptalからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

UX Research Techniques and Their Applications

自分がなにをしているのかがわかっているなら、それは研究とは呼ばない。そうは思わないかい? – Albert Einstein

ユーザーリサーチは、UXのプロセスの一部となるかなり前から存在していたものです。1900年代初頭、Frank Gilbreth氏とLillian Gilbreth氏によってモーションスタディが世に知れ渡るようになりました。効率についてより深く理解するために、彼らは建築現場で働くレンガ職人たちを観察することで、宇宙の一部である人々の動きを研究したのです。モーションスタディは、記述、体系的分析、および作業方法を改善するためのさまざまな手順で構成されたものでした。

それは悪名高き時間動作研究につながり、のちに、現代のユーザーリサーチへの道のりを切り開き、系統的で調査を目的とするユーザー観察を通じて、プロダクトを改善する手段として利用されるようになったのです。

以降、ユーザーリサーチは大幅に改善されました。アプリからキッチンブレンダーに至るまで、UXを向上させ、いかにして注目を集められるかを研究する、専門のデザインチームが組み込まれるようになったのです。

ユーザーリサーチがデザインプロセスの基本に取り入れられたことは、デザイン改善のための大きな力となりました(参照: Apple)。

ユーザーリサーチを取り入れる以前には、プロダクトは実用性を追求し、UXに注意を払うこともありませんでした。そしてこれは、(まれに)機能的なデザインを生み出すこともありましたが、ほとんどはユーザー中心のアプローチが考慮されず、プロダクトのベストプラクティスは仮定に基づいたものとなり、よいプロダクトとは言えないものでした。

UXリサーチがなかったら、ユーザーは純粋に実用面だけを追求したプロダクトを使い続けていたかもしれません(参照: C.Scott Wyatt)。

「リスクを減らすことが我々の目的で、最終的にそれはユーザーリサーチによって可能なことなのです。」と語ったCventのシニアユーザーリサーチャーであるAshley Sewall氏はさらに次のようにも述べています

「デザイナー、プロダクトマネージャーおよび開発者たちはリスクを減らすために、的確な決定を下すのに十分な情報をもち合わせるべきです。」

UXリサーチの実施方法とUXリサーチのアセットのつくり方に関する情報はたくさんありますが、これらのアセットをどのように利用すべきかについての情報はほとんどありません。それはテクニックではなく、よりよいUXと改善されたプロダクトデザインにつながる結果をどのような方法で導入するかを知ることなのです。

UXリサーチの方法とフレームワーク

それらがどのように導入されるのかを説明する前に、いくつかの一般的なユーザーリサーチの方法をみてみましょう。

ペルソナと共感マップ

ここでご紹介するUXリサーチを効果的に行うためにはまず、ユーザーが誰であるかを知る必要があります。そのためには、ペルソナと共感マップが重要な役割を果たします。

ペルソナと共感マップは、コアユーザーが誰で、そのユーザーがなにを考えているかをよりよく理解するためのガイドとして機能するものです。これは通常、デザイナーがなにをすべきか、うまく行っていない箇所、ユーザーがどう感じるか、ユーザーがなにをしようとしているのかなどを知る目的で使われます。

優れたUXリサーチ戦略は、ペルソナと共感マップから始まります (参照: Miklos Phillips)。

ユーザーインタビュー

ユーザーへのインタビューは、さまざまな方法(対面、フォーカスグループなど)で実行できる1対1のセッションですが、SkypeやZoomなどのビデオアプリを使用してリモートで行われるケースが増えています。もう1つの一般的な方法は、ゲリラ的に行うインタビューです。ユーザーリサーチャーは、無作為に選択したユーザー(コーヒーショップなど)で「ちょっと立ち寄る」スタイルのインタビューを実施するものです。

ユーザーインタビューは、貴重な情報を得るために多くのスキルを必要とします。 UXリサーチャーの目的は、特定のトピック、プロダクト、サービスなどについてユーザーがどのように感じているかについての情報を得ることです。話すことよりも聞くこと、質的なフィードバックを記録し、誘導するような質問は避けるべきです。

調査によると、5人へのユーザーインタビューによって問題の80%が明らかになるとされ、もしこの5人がペルソナをもとに選択されたユーザーである場合は、その結果がさらに正確なものであることがわかっています。

アンケート

アンケートは計測が容易で、低コスト、そしてリサーチのプロセスの初期段階で定義したペルソナに適合するユーザーから、特定の情報をすばやく収集できる方法と言えます。

アンケートの強みは同時に、弱点でもあります。簡単で費用がかからないため、このアンケートを利用することでそれ以上のUXリサーチを怠ることになる危険性があります。アンケートは確かに優れたツールですが、それだけに頼るべきではありません。

カードソート

カードソートは、人気のあるもう1つのUXリサーチ方法であり、Webサイトやアプリの情報アーキテクチャを決定するのに役立ちます。それらは、オープン、クローズ、またはハイブリッドのいずれかとなります。ユーザーには、リサーチャーが独自に選択するか(オープンカードソート)、事前に作成されたもの(クローズドカードソート)のいずれかからカテゴリに当てはめられるよう、一連のアイデア/トピックが表示されます。

カードソートは、ユーザーが情報アーキテクチャをどのようにみるかについて、UXリサーチャーがよりよく理解するためのものです。

カードソートは、アンケートやインタビューと同様に、ペルソナに合致しているユーザーに対して行う必要があります。

A/Bテスト

もっとも効果的なパターンを見つけるためにデザインのバリエーションをテストする必要がある場合、主にコンバージョンの最適化に使用されるA/Bテストも、定量的なUXリサーチの方法として取り入れることができます。

ユーザーにはデザインの異なる2つのバージョンが提示され、どちらかを選択できます。これは、たとえばボタンとリンクなど、機能についてユーザーがもっとも使いやすいと感じるものを判断する役割も果たします。

A/Bテストでは、テスターのグループを切り替えることをおすすめします。1つのプロダクトを同じ人がテストすることにより、先入観や慣れが生じやすくなるためです。

ユーザビリティテスト

デザイナーが一定のユーザーグループに対してプロダクトがどのように使用されるかを観察したい場合、ユーザビリティテストが実行されます。

ユーザビリティテストを行っている間、ユーザーはタスクを完了し、UXリサーチャーはその過程を観察してメモを取ります。リサーチャーはユーザビリティの問題を見つけるために、定性的および定量的データを収集します。

ユーザビリティテストは、Webサイトまたはアプリを使用するときに生じる問題をUXリサーチャーがより深く理解できるようにするためのものです(参照:Leonel Foggia)。

効果的なユーザビリティテストを行うには、どのユーザーペルソナが適しているかを考え、プロセスの早い段階で募集することをおすすめします。多くの場合、これらのユーザーには報奨金が支払われますが、一部のUXリサーチャーは、これがテストの結果に強い偏見をもたらすと考えています。たとえば、報奨金目当てにテストに参加するユーザーが出てくることなどです。

UXリサーチによる結果の実用化

UXリサーチで得たデータの結果を分析し、それに基づいて行動を起こす努力がない限り、リサーチに関連したすべての作業は無駄なものとなってしまいます。

UXリサーチを科学的方法の一部と考えるとしたら、次のようなフォーマットとなるでしょう。

  • 観察する:インタビュー、アンケート
  • 仮説を立てる:仮定のうえで、プロトタイプを作成する
  • 実験を行う:ユーザビリティテスト、A/Bテスト、カードソート
  • データの分析:定性的/定量的フィードバックの分析結果を取り入れる
  • 調査結果を報告する:チームおよびクライアントとのディスカッション
  • 結果を再現するために外部から人材を招き入れる:共同作業と反復

上記の各UXリサーチメソッドを利用して収集されたリサーチデータから、実用的な洞察を適用するいくつかの方法を考えてみましょう。

ペルソナと共感マップの適用

ペルソナと共感マップはUXリサーチャーたちにとって、利用しやすいシナリオであり、体験マップとストーリーボードのキャラクター、およびアイデアの中心として利用できる強力なツールと言えます。

たとえば、「せっかち・時間がない・つねに急いでいる」ことを示すペルソナ属性がある場合、このユーザーが時間を節約できるよう、プロダクトにショートカット機能をデザインとして取り入れることができます。

ペルソナのもう1つの用途は、ユーザー(プロダクト、エンジニアリング、マーケティング、販売、カスタマーサービス)を同じページに集め、ユーザーが誰であるかを把握することです。これにより、より統一されたUXが促進されるのです。

ユーザーインタビューのデータ導入

ユーザーインタビューにより、定性的データを取得することができます。このデータを利用して、パターンやテーマを識別するプロセスであるテーマ分析などのフレームワークを活用することができます。

ユーザーインタビューは、定性的データを収集するための基本的なUXリサーチメソッドの1つです(参照:Oxford Computer Consultants)。

たとえば、アプリケーションによって作成された一連のレポートのフィードバックを取得するためのユーザーインタビューがあります。

ユーザーインタビューが完了し、カスタマイズのテーマを示すテーマ分析を使用してデータが分析されます。ここで、ユーザーがレポートをカスタマイズし、より詳細に制御できるようにしたいと願っていると仮定するのです。この仮定は、さらにUXリサーチでもテストすることができます。

ユーザーインタビューのもう1つの実用例は、聴いて観察するということです。ユーザーは、インタビュー中に口頭でのサイドコメントや言葉以外のジェスチャなど、多くの手がかりを与えてくれることがあります。これらの観察結果によって、ユーザーが実際にどのように感じ、考えているかについての洞察を得ることができるのです。

アンケート結果の採用

アンケートは、フレキシブルな一連のデータを提供してくれます。アイデアとしては、たとえば、車種ごとの自動車保険料を自動的に算出してくれる機能を備えた、自動車購入アプリというものがあります。

時間とお金をかけてアプリケーションを構築する前に、アンケートを利用して多数のユーザーから情報をすばやく収集し、それが実際に必要なものかどうかを確認してみるという方法です。

アンケートをユーザビリティテストと組み合わせると、UXリサーチの純粋な分析方法では得ることができない回答を見つけ出すことができます。たとえば、ヒートマップは、ユーザーがアプリまたはWebサイトでインタラクティブがもっとも多い(またはもっとも少ない)ポイントを示してはくれますが、その理由については示してくれません。

アンケートを利用して、ユーザーがアクションを起こした理由が何なのかを探り、この情報に基づいてプロダクトを改善できるのです。

カードソートのデータ活用

カードソートの実用的な用途は、ユーザーがWebサイトまたはアプリのトピックを分類または整理する方法を決定することです。その後、カードソートの結果を使用して、ニーズと目標に合った情報アーキテクチャを構築することができるのです。

たとえば、花屋のWebサイトです。デザイナーはWebサイト内でユーザーを誘導するためのよいアイデアをもち合わせていましたが、カードソートによってユーザーにカテゴリの提供を求めてみた結果、ユーザーは季節や特別な日ではなく、主に色に基づいて花を探していることがわかりました。

A/Bテストデータの実用化

A/Bテストのデータは、ほとんどが定量的で二元法的だと言えます。たとえば、ユーザーは、あるバージョンまたは別のバージョンのいずれかが好きだ、というようなデータです。

多くのメディアで話題となった実用的なアプリケーションの1つは、Spotifyが「バーガーメニュー」をテストしたアプリでした。モバイルアプリで標準の3行メニューアイコンを長期間にわたって採用していたSpotifyは、A/Bテストを行ってみることにしました。驚いたことに、この人気のあるデザインはユーザーにもっとも好まれているというわけではありませんでした。ユーザーにもっとも好まれていたのは、タブ形式のバーだったのです。

このアプリを日常的に使う数百万人のユーザーを抱えていることから、この結果は大きな影響を及ぼしました。新しいタブバーに変更すると、UXは向上し、会員登録にまつわるトラブルの問い合わせは減少したのです。

A/Bテストは、ユーザーが好むアプリ、機能、またはWebサイトのバージョンをUXリサーチャーが見つけ出すために役立つものです(参照:Techcrunch)。

ユーザビリティテストの適用

ユーザビリティテストは、定性的データと定量的データの両方を生成します。行われたテストのタイプと推定される結果に応じて、このデータにはいくつかの利点があります。

例としては、新しいショッピングアプリのチェックアウトのプロセス中にユーザーを観察する、モデレートされたユーザビリティテストがあります。テストではユーザーがプロダクトをカートに複数回追加しようとしていますが、追加できず、最終的にプロセスを完全にあきらめてしまっています。このフィードバックを受けて、図面に立ち返り、チェックアウトのフローを修正することになりました。

ユーザビリティテストを適用する2つ目の方法は、プロトタイプまたはMVPの検証です。たとえば、モバイルクーポンアプリを再設計しようとしていたところ、ユーザーが最初に選択したカテゴリから抜け出せず、選択可能なクーポンを検索することができないと判明しました。これに気づいたことで、デザインチームはアプリ内のユーザーフローを改善し、UXを向上させることができたのです。

まとめ

今日(こんにち)のエクスペリエンスエコノミー(経験経済)は、産業を形づくり、ビジネスを変革し、企業が顧客との間により深く有意義な、より収益性の高い関係を構築することをサポートするものです。適切なUXリサーチの方法を選択し、それらをコツコツと導入していくことで、デザイナーは顧客と企業の両方に、より効果的なプロダクトを提供することが可能になるでしょう。


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