UX MILK ディレクターの山本です。
先日3/11(水)の夜に、『Ethical UX Workshop ~UXデザインと倫理、社会的な影響を考える~』というオンラインワークショップを初開催しました!
配信メインのオンラインイベント『UX JAM Online』や、普段のオフラインイベントとの運営面での違いがいくつか出てきたので、開催するにあたって意識したポイントをシェアしたいと思います。
Ethical UX Workshopとは?
『Ethical UX Workshop』とは、世の中のサービスが社会に与える影響について皆さんでディスカッションしながら考えていくワークショップイベントです。
デジタルなサービスやプロダクトが世に溢れ、その社会的影響が語られる場面も増えてきた今だからこそ、UXデザインに携わる立場から皆で社会的な影響を考えていこう、と始まった『Ethical UX』シリーズの1つとして実施しました。
イベント名の「Ethical(エシカル)」とは、英語で「倫理的」「道徳的」という意味で、近年では環境保全の文脈で使われることも多い言葉ですが、広く「社会的な影響を考える」というニュアンスでも使われる言葉です。
過去の回は皆さんの意見を、発散・共有するディスカッションがメインだったため、今回はより考えを深めるワークショップ形式にしました。イベントコンテンツは、企業内などでワークショップデザインも手掛けていらっしゃる栄前田勝太郎さんにご協力いただき構成を決めています。
元々はオフラインで実施予定でしたが、社会情勢も踏まえてオンラインに移行し、開催しました。
イベントの様子
当日は以下2つのツールを使って、イベントを進めていきました。
・オンライン会議ツールZoom(https://zoom.us/jp-jp/meetings.html)
・オンラインコラボレーションツールMiro(https://miro.com/)
Zoomはイベントの趣旨や、ワークの説明、Miroは模造紙やワークシート代わりに使っています。事前にMiro上にワークスペースを作成しておき、参加者がワークに集中できるような仕組みを作りました。
誰の意見なのかがわかりやすいよう、カラフルなボードを使って色分けしました。グループワーク時にお見合いにならないよう、発表順の指定も作っています。
ワークは全部で3つ用意し、個人ワーク・グループワークを織り交ぜながら進めています。
※イベント内容について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください
運営面で意識した4つのポイント
ここからは、オンラインでワークショップを開催するに当たって運営面で特に意識していたことを4つピックアップしてお話します。
1. ツール操作に慣れる時間の確保
普段の業務で使い慣れている模造紙や付箋を使ってできるオフラインでのワークショップとは違い、オンラインのワークショップでは、まずツール操作に慣れる必要があります。
今回のワークショップでは、ZoomとMiroの2つのツール操作に加え、Zoomでのテキストチャット、グループワーク時の部屋分けで利用する「ブレイクアウトセッション」に慣れる時間を最初に設けました。ただ操作に慣れるだけではなく、アイスブレイクやチェックインも兼ねた時間にしています。
実際にやってみると、ツール操作に慣れる時間が必要だと事前に想定していたものの、その想定以上に時間がかかり、元のプログラムの時間を調整し合わせて40分ほどツールに慣れる時間として当てました。
今回はイベントの冒頭に時間を設けましたが、事前に練習用のMiroのボードを作成して参加者が自由に練習できるように準備してもよいかもしれません。
2. ファシリテーターが介入できない場面の設計
今回のイベントでは、グループワークを行うときZoomのブレイクアウトセッションという機能を使い各グループで部屋を分けてワークに取り組みました。部屋は完全に隔離されており、オフラインの場合とは違って、全体へのアナウンスや介入が難しい作りになっているので、上手くワークが進むか懸念がありました。
そのためMiroやスライドを見て操作方法がわかるよう案内を載せたり、プログラムの前半40分間をツール操作に慣れる時間に当てる工夫をしました。
そのうえで、実際にグループワークに分かれた直後に「何をする時間なのか」で迷う参加者も出てしまったため、分かれる直前の案内の強化や、分かれた直後にホストチャット(ホストから全グループに送れるメッセージ)で再度案内する等で対応しました。
一方で、懸念に反して閉鎖空間になっていて他を気にせずにワークに集中できる分、グループ内でより一体感が生まれたとの意見や、オフライン以上にグループ全員の表情が見えてやりやすかったとの声が挙がったりと、思わぬ反応もありました。
今後のイベント設計では、介入する部分・しない部分を明確にしてある程度参加者の対応に委ねた方がよりよい体験になるのかもしれません。
3. Zoomのテキストチャットを補助ツールとして活かす
オフラインでは何人かが同時に話すことがあっても場所を移動したり声量を調整したりできますが、オンラインではそれが難しいため、他の誰かが話しているときは様子を伺ってタイミングを見て発言することになります。
またZoomの場合、発言した人がフィーチャーされる(色付きの線で囲まれる)UIになっているため、ちょっとした発言をするには敷居が高く躊躇してしまいがちです。
そのため今回は新しい取り組みとして、過去の開催ではあまり活用して来なかったZoomのテキストチャットを積極的に活用して運営側と参加者側がコミュニケーションをとれる場所として機能するような設計にしました。
ワーク内容をファシリテーターが口頭で説明するのに合わせて、テキストチャットでも同様の案内を流しています。また、ワークやツール操作の説明中、不明点などはテキストチャットに書き込んで質問して貰いファシリテーターが拾って対応したり、ファシリテーターがワークの説明中などで余裕がないときは、他スタッフが返答するようにしました。
また、テキストチャットに書き込むハードルを下げるためにイベントの導入時には「手元にどんなドリンク置いてる?」といったアイスブレイクを、テキストチャットで書き込んで貰いました。
質問についてはフォローできた一方で、質問以外の用途(ワーク中に会話で話題になっているテーマとは、別の話をしたいとき等)でテキストチャットを使ってよいのかわからず、コミュニケーションが生まれにくい面もあったため、今後はよりイベント全体のコミュニケーションにテキストも組み込むようなプログラムにしてもよいかもしれません。
4. イベント感の演出で場の一体感をつくる
オンラインの場合オフラインに比べて、BGMを流したり場を装飾するのが難しくどうしても無味乾燥になりやすく、コミュニケーションが生まれづらい状況にあります。そのため普段のビデオ会議とは違うイベント感を演出することで、場の一体感をつくっていくことが必要です。
今回のイベントでは、最初のアイスブレイクで手元のドリンクについてテキストチャットで語るアクションを促したり、グループワークが始まるときにZoomのブレイクアウトルームに投げ込まれるといった、普段のビデオ会議にはないような体験を作っていました。
加えて、個人からグループワークに移るときに、運営から「いってらっしゃい」「おかえりなさい」といった声かけをして運営と参加者の間を埋めるようなコミュニケーションも意識しました。
その結果、オンラインイベントでありながらもイベント全体を通して場が打ち解けていったように感じます。
一方で、イベント開場から開始までの間は特にコンテンツを設けておらず、無音の中で個々がツール設定をする時間にしていたため、場での交流が生まれず打ち解けにくかった面もありました。
今後は開始までの時間に、皆で画面の前で準備運動をしたり、声を出したり、より活発にテキストチャットで交流したり等、イベント固有の体験を増やすとより上手くいくかもしれません。
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このように、運営してみるとオンラインワークショップならでは側面がみえてきました。
まだまだ改善の余地がありますが、参加者の皆さんのおかげで楽しいイベントを創り出すことができました! 中には大阪やドイツ(!)、隣にお子さんを連れてご参加くださった方もいて、場所に囚われないオンラインならではの良さを感じました。
これからも回を重ねてよりよい体験ができるよう改善をしていきますので、今後ともお付き合いください。