Niantic LabsがポケモンGOで示すARの可能性

三瓶 亮

UX MILK編集長。株式会社メンバーズ LXグループ所属。LX(ラーニングエスペリエンス)にまつわる新規事業立ち上げなどをしています。ゲームとパンクロックが好きです。 Facebook / Twitter

先日、アメリカやオーストラリア、ニュージランドで先行リリースされた「ポケモンGO」が本国の日本を差しおいて一大センセーションを巻き起こしています。

アメリカのApp Storeではリリースしてまもなく総合1位、数日で750万ダウンロードもされており、その熱狂っぷりは任天堂の株価を90億ドルも上昇させています。ポケモンの故郷ともいえる日本ではまだ配信が始まっておらず、今週中のリリースが騒がれており、かく言う私もリリース前にやきもきしているユーザーのうちの一人です。

ポケモンGOとは

pokemongo_eyecatches

ポケモンGOはスマホを使ってポケモンを実世界で見つけて捕まえられるという、いわゆるAR(拡張現実)系の位置情報ゲームです。

pokemongo_screen

開発は同じく世界的にヒットしたGoogleの位置情報ゲーム「Ingress」を作ったNiantic Labs(Googleの社内スタートアップ、のちに独立)で、今回のポケモンGOは任天堂と組んで、持ち前の位置情報ゲームのノウハウとポケモンを掛けあわせたようなアプリとなっています(ポケモンなのに本国からのリリースではないのは、Nianticと共同でやっているからですね)

ポケモンだからできる、説明不要のワクワク感

ポケモンはもともと初代ゲームボーイでリリースされ、子供が外でゲームボーイ同士をケーブルで繋いでポケモンを交換したり戦わせたりするインタラクティブ性が売りでした。ちなみに初代CMはこんな感じでした。

特に今現在20〜30代の方はこの頃(以降)の楽しい体験をされている方も多く、今回のポケモンGO情報公開時のコンセプトムービーだけで、その楽しさが容易に想像でき、この上ないワクワク感を頂いたはずです。プロダクトを触れる前のユーザー体験、いわゆる予期的UXにあたると思うのですが、「あの頃の体験と今ある技術があわさったら、楽しいに決まっている」と我々は思うわけです(なおかつ、お預け状態が続いている現在の日本ではなおさら期待値が高まっていくというものです)。

この映像を見ていると、新しくもあり、懐かしくもあります。ノスタルジーから入らせ、なおかつ新しい可能性も示せるなんてズルい、なんて思うわけですが、そもそもポケモンというコンテンツ自体、ゲームボーイ時代からコンセプトは明確で何も変わっていないですよね。

ポケモンはそもそも本質的にソーシャルなゲームで、ARなどの最新技術を介して、よりよい体験を共有できるように作られているように思います。

Niantic Labsが示すAR遊びの可能性

従来の画面の中で完結するゲームと違い、ポケモンGOは実際外に出て、特定の場所に行くことではじめてポケモンを捕まえることができます。文字通り「携帯」できるデバイスだからこそ可能な、まさに新たなゲーム体験といえます。平たく言えば、引きこもっていてはできないゲームとなっており、スマホゲームの新たなユーザー体験として注目を浴びています。

Niantic Labsが先にリリースしたIngressは全世界を巻き込んだ縄張りゲームでした。

ingress

ユーザーは2勢力に分かれ、陣地を取り合うのですが、世界観が近未来的でとっつきにくい印象だったのにもかかわらず、世界的なヒットを収めました。中にはまさに国境を越えて、縄張りを広げたりするユーザーもいました。私も一時期プレイしていましたが、移動するのが楽しくて、つい意味もなくうろついてしまい、不審者のようになった覚えがあります。

ポケモンGOに関しては、水ポケモンが水辺に現れるなど、文脈に基づいたロジックがあるそうなので、昔の昆虫採集のような体験を子供がするようになるのかもしれません。大人としては外で3DSを見ながら頭付きあわせている子供たちを見るより、よっぽど安心できるのではないでしょうか(個人的にはゲーム好きなので否定もしませんが)。

本質的な意味でのARとは

ここで注目したいのはAR(Augumented Reality)、つまり拡張現実の役割です。

従来のARといえば、現実世界のビジュアル情報を取り込んで画面内のゲームに反映させる、という仕組みが多かったように思えます。

もちろん技術的な制約もあって、画面内に収まっているところもあるかと思うのですが、例えばIngressから学べることとして、コアのゲーム体験が画面内に収まっていないことにあると思います。

Ingressや、おそらくポケモンGOでのコアのゲーム体験というのは画面外のもっとソーシャルな部分にあるのではないのでしょうか? そういう意味ではスマホとARはその全体の体験の一つのUIでしかないはずです。

アプリ内で演出してくれる世界観によって、現実世界が少し違って見えてしまう、それがNianticが提供してくれる本質的な拡張現実なのではないでしょうか。なんでもない道端の神社に意味をもたせたりすること、それは確かに画面の演出もあるとは思うのですが、現実世界に違った味付けをしてくれるのが真のARなのではないかと思えます。

個人的にはバーチャルと現実のバランスの取り方がキモなのではないかと思います。わかりやすいところで言うと、画面をずっと見続けてリアルな世界を移動するのは現実的ではないですよね。ポケモンGOもポケモンGO Plusというリストバンド型デバイスを発表しているように、リアルな生活がちょっとしたトリガーで楽しいものになる、といった空気感のようなものが大事なような気がします。

ポケモンはGOしたが、妖怪は…?

最近日本ではポケモンと同じくらい勢いがあるコンテンツがあります。そうです、妖怪ウォッチです。最近では海外展開もしていますが、妖怪ウォッチもまだまだポテンシャルを秘めているコンテンツです。

なにしろ、「日常のそこかしこに妖怪が潜んでいて、妖怪ウォッチという道具で照らすことによって可視化して友だちになれる」という設定です。完全にスマホで妖怪を探すゲームしか思いつきません

個人的には妖怪ウォッチ4辺りはもうウォッチじゃなくてスマホでも良いんじゃないかと思うくらいですが、タイトル的に難しそうですね…。とはいえこの先レベルファイブさんもきっと何かやってくれるのではないでしょうか(私が企画書を持っていけばよいでしょうか)。

机のモニターの裏にジバニャンが潜んでいた日にはキュン死してしまいそうです。

まとめ

家の中で没頭するような「ゲーム」が逆に外へ行くことを促すという、身体的な活動とリンクしているのは非常に興味深いです。

本来モバイルデバイスが持つ「持ち歩ける」「持ち出せる」文脈をフルに活かしているという点では、位置情報やARのゲームは本当の意味でのモバイルゲームなのかもしれません。国内のリリースを楽しみに待ちたいと思います。


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