UXの考慮が成功のカギ!アプリのマネタイズにおける12のTIPS

UX MILK編集部

モノづくりのヒントになるような記事をお届けします。

アプリにマネタイズは欠かせないものですが、マネタイズをするとユーザー体験が損なわれると考える人も多いかもしれません。しかしそのイメージとは裏腹に、成功している施策はUXもきちんと考慮されています。

今回は去る6月27日に行われた「アプリのマネタイズ×UX」をテーマにしたミートアップイベント「UX JAM for Indie Game Developers」での発表をもとに、アプリにおけるマネタイズの成功事例とUXの関係について迫ります。

アプリ内課金にまつわるTIPS

1. アプリのコア体験をきちんと理解する

ゲームにおいては、ガチャやゲーム内アイテムをどのように置くか考えるだけではマネタイズは成功しません。ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンの金田一氏のセッションではゲームのコア体験が何かを突き詰め、それを増幅できる要素を課金ポイントにすることが重要だと語りました。

たとえば、『Hole.io』というゲームはビルなどを次々と飲み込んでいくことでハイスコアを競うシンプルなゲームで、アプリ内広告がメインのマネタイズ手段です。

もし『Hole.io』にアプリ内広告以外の課金要素を追加するとなった場合まずどのようにゲームのコア体験を拡張するかを考えなければなりません。

『Hole.io』は人や車、ビルなどを次々と飲み込んでいくことでハイスコアを競うゲーム

『Hole.io』の主たるメカニズムである「飲み込む」楽しさに絡めると、たとえば以下のようなコア体験の拡張が考えられます。

・飲み込んだものの累計数を種類別に表示するコレクション機能を追加する
・人、車以外にも飲み込むのが難しいもの・レアなものを追加する
・ステージを追加する
・期間限定の物体、イベントによる特別報酬などを追加する

また、ゲーム自体のメカニズムの他に、勝つことの喜びを増幅させるために以下のような要素の追加も考えられます。

・特性の違う自キャラクターの用意
・記録とランキングの導入
・オンライン対戦モード

コア体験を増幅させる要素を加えた上で、一部のアイテムを通常プレイではなかなか手に入れにくいバランス設計にすることで、その楽しさの延長線上に課金要素を持ってくることができます。

コア体験の拡張と課金部分のバランス次第で、課金要素はユーザーにとってより楽しい体験を提供するものとなり、結果として課金率や平均課金額が高いゲームとなります。

2. ヘビーユーザーには買う理由を多く用意する

『君の目的はボクを殺すこと3』などのカジュアルゲームアプリを開発しているふんどしパレード株式会社の北迫氏のセッションでは、ヘビーユーザー向けの課金の考え方と実際の施策の紹介がありました。

君の目的はボクを殺すこと3

まずヘビーユーザーの課金をする動機を知るために、高級腕時計の購入を例に考えてみます。高級腕時計買う理由は以下です。

・時間確認が簡単にできる ・優越感を得られる ・自分を大きく見せれる ・モテる ・長く使える ・いらなくなっても高く売れる

つまり、買う理由が多いほど購入の敷居が下がるということが言えます。これを前提とすると、ゲームアプリで課金する理由も単に「ガチャを回して強いキャラクターを手に入れて楽に進みたい」だけですと動機としては弱すぎることになります。

『君の目的はボクを殺すこと3』では課金の理由を以下のように用意しています。

・楽に進みたい ・ランキング上位になって優越感を得られたい ・常にルビーが枯渇するのでルビーがたくさん欲しい ・便利な機能を解放したい

これらを具体的な施策に落とし込むと、以下のようになります。
※ルビーは当該ゲーム内の通貨

・ランキングイベントに掲示板を設けてユーザー間のコミュニケーションを促す
・高額ルビーアイテム(9,800円)に広告非表示特典を追加したパックを販売
・ガチャ以外にもキャラクター成長にルビーを使う必要がある仕組みに
・ガチャで出てくるキャラクターが被るとキャラクターの育成や入手に必要な重要アイテムを入手 など

3. ライトユーザーには課金をするきっかけを作る

北迫氏に続き、ふんどしパレード株式会社の山田氏のセッションでは逆にライトユーザーに関する課金の考え方についての紹介がありました。

ヘビーユーザーに比べて、ライトユーザーは課金に対して能動的ではありません。課金のモチベーションは服を購入する場合と似ており、ヘビーユーザーは価値を感じれば購入を検討しますが、ライトユーザーは必要性であったり、何かのついでなどのきっかけがないとなかなか購入までには至りません。

『君の目的はボクを殺すこと3』ではこのきっかけづくりとして「後払いガチャ」という施策を導入しています。

ガチャを事前に無料で引き、結果が気に入ったときだけ課金すればよい仕組みで、受動的なライトユーザーにも課金のきっかけを作ることができます。

この施策は同ゲームの課金アイテムの中でも2位に入るほどの売上となり、ユニーク購入者数は1位の課金アイテムの4倍にもなりました。ライトユーザーにも課金してもらえた施策と言えます。

4. 高額課金者の実態を知る

カイト株式会社の後藤氏のセッションではヘビーユーザーの中でも全体の収益の約半分を占めると言われている「高額課金者」の実態が紹介されました。

カイト社の調査によると、全ユーザーの0.19%の課金が収益の48.4%を占めているそうです。

前段のヘビーユーザーの購入理由を増やすことにおいて、高額課金者の動向をインサイトとして知っておくのも大事かもしれません。カイト社では高額課金者100人にアンケートを行い、さまざまな課金動向のデータを公開しています。

そのデータの中でも特に「課金のモチベーション」のデータを見てみると、「キャラクター等のコレクション」が最も多く、その他の機能や動機は横並びで票が入っています。

カイト株式会社の調査したその他のデータについてはこちらの記事で詳しく取り上げていますので是非ご覧ください。

これらのデータをペルソナにまとめたものが以下です。ヘビーユーザーの中でも上位に君臨する高額課金者のインサイトとしてイメージしておくとよいでしょう。

アプリ内広告にまつわるTIPS

ゲーム内の広告でマネタイズをするアプリも多い中、近年では広告手法も多様化しています。株式会社ADFULLYの小室氏のセッションではユーザーの邪魔をするのではなく、良いUXを提供する広告として動画広告にフィーチャーし、その3つの手法についての説明がありました。

1. 動画リワード

動画リワードはユーザーが動画広告を見ることによってゲーム内の報酬を得ることのできる広告です。ユーザーが能動的に動画を視聴するという点で、広告的にもエンゲージメントが高く、ユーザーとしても直接課金せずにゲーム内の報酬を得ることができるので、重宝される手法です。

また、広告的なメリットだけではなく、ゲーム内のKPIも改善できます。一例としては以下のような例が挙げられます。

・GAME OVER時にコンティニューの報酬を付与 → 離脱率改善
・毎日、朝/昼/晩にログインボーナス → 再訪率改善
・有料アイテムを一定時間お試し利用 → 課金転換率改善

2. 動画インタースティシャル

動画インタースティシャル広告はスマホの全画面に表示される差し込み型の広告です。任意のタイミングで収益性の高い全画面広告を表示できるのですが、ユーザーのキリが悪いタイミングで突然全画面で挿入してしまうと嫌がられてしまう場合も多く、UXとしては出し方やタイミングが肝となる広告です。

動画インタースティシャルを差し込む場合は、事前にワンクッション入れるとUXが劇的に改善します。ゲームプレイが途切れたタイミングなどに、ゲームの世界観に合わせて「ここでちょっとCMです」など、広告の前に1遷移の気配りを入れるだけでユーザーからのネガティブフィードバックは減ります。

3. 動画ネイティブ広告

最後に、動画ネイティブ広告はアプリ内の世界観に溶け込む形で入れる広告のことを指します。

ゲームの結果画面の右側に劇場風なフレームでCMを入れている

インタースティシャル同様、ゲームの世界観に合わせてうまく動画をはめこむことで、広告というより、むしろゲーム内のコンテンツとして楽しんでもらえます。動画の場合、静止画のバナーに比べて収益性は数倍上がるので、うまくクリエイティブのトーンを合わせた広告設置をするとよいでしょう。

これらの動画広告の手法を活用すれば、従来の「広告=邪魔」という概念を「広告=面白い・ありがとう」という概念へと変えることができるでしょう。

プッシュ通知にまつわるTIPS

アプリのマネタイズはアプリ内の話に留まりません。アプリ内の施策もアプリにユーザーが来訪しないと始まりませんし、その点でアプリのプッシュ通知はユーザーの行動を促す大事な要素です。

プッシュ通知もまた、アプリのユーザー体験を大きく作用するものです。送るターゲットやタイミングを精査することで、アプリの売上向上はもちろん、アプリ自体のユーザー体験を向上することもできます。

富士通クラウドテクノロジーズ株式会社の山本氏のセッションでは、ゲームアプリのプッシュ通知における5つのポイントの紹介がありました。

1. 起動するメリットを明確に伝える

プッシュ通知を送る際、アプリを起動するメリットを伝えることが重要です。たとえばただ「ログインボーナスがあります」だけではなく、具体的にどのアイテムが獲得できるのかを明記してあげるとよいでしょう。

2. アプリの雰囲気に合ったメッセージを送る

ただ用件のみを伝える味気ないテキストよりも、世界観やテイストを重視したプッシュ通知も効果的です。キャラクターがいればそれを押し出すことによってプッシュ通知自体をコンテンツとして面白くすることができ、アプリの起動意欲が高まります。

3. 興味のあるトピックだけを配信する

通知内容自体をユーザーの興味に合わせてあげることも大事です。「ゲリライベントを受け取る」「レイドボスは受信しない」など、ユーザーにあらかじめ能動的に設定してもらえれば、起動の可能性は高まります。

4. アプリを起動してないユーザーにのみ送る

アプリをしばらく起動していない非アクティブなユーザーにのみ、起動時のメリットを添えて通知をするのは効果的です。ただし、ユーザー全員に送ってしまうとアクティブなユーザーがかえって離脱してしまうおそれがあるので、非アクティブなユーザーのみにしぼって送るのがよいでしょう。

5. 他のユーザーからアクションがあったときにだけ送る

運営からだけではなく、チャットなどほかのユーザーから送られる通知はアプリの帰属度を高めます。友人やコミュニティからの通知はアプリを立ち上げる大きなきっかけとなります。

まとめ

アプリのマネタイズにおいて、アプリ内課金や広告などさまざまな手法がある中で、UXを考慮した手法や工夫が次々と生まれています。

アプリのさまざまな側面からユーザーとのコミュニケーションを配慮すれば、アプリのUXは向上し、最終的にはマネタイズの成果にもつながります。アプリ内課金や広告をただ乱暴に導入するだけではなく、アプリ自体が持つ魅力やコンテキストを存分に考慮し、クリエイティブなマネタイズ手法を試していきましょう。

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