フィンテックのUXデザインから学べる3つのこと

Sean McGowan

Sean McGowan氏はCodal社の技術ライターおよびリサーチャーです。UXデザインからIoTまで、様々な話題のブログを投稿しています。

この記事はUsabilityGeekからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

UX Design For FinTech: 4 Things To Remember

UXデザイナーに好きな仕事のランク付けを頼んだら、「金融サービスプラットフォーム」はおそらくトップ5には入らないでしょう。もしかするとトップ20、いや、トップ50にも入らないかもしれません。

フィンテックのプラットフォームについて回るややこしい手続きのために、銀行規制法や会計を大喜びで勉強するデザイナーはほとんどいません。コンプライアンス基準の細目や複雑な会計監査について調べるようにクリエイティブチームに強要すれば、彼らの目から生気が失われていくのがわかるでしょう。

フィンテックは魅力に欠けているだけではなく、デザインするのも難しいかもしれません。フィンテックのプロジェクトは、細かいことを慎重におこなう必要があり、業界の専門用語だらけです。そして、ユーザーがタップし間違えて経済的破綻に陥ることがないように保証することと、自然なユーザビリティとの微妙なバランスを保つことがデザイナーには求められます。

ですから、フィンテックのデザインは不可能に感じられるし気分が盛り上がらないかもしれませんが、障害ではなく試練ととらえましょう。取り組むときには、以下の3つのアドバイスを覚えておいてください。

1. 将来の変化を考慮に入れる

一般的にどのようなプラットフォームを作成するときにも良い考え方なのですが、フィンテックのデザインをするときには将来の変化を考慮に入れることが必要不可欠です。それはひとえに金融業界が流動的な状態にあるからです。

急激に近代化しているほかの分野に追いつこうとしているので、銀行業と投資部門はデジタル革命のまっただ中です。銀行や信用組合、金融機関は、その相互関係のかたちが新しいテクノロジーによって変えられてきたので、気まぐれで急速な変化を経験しています。

デザインにとってこれはどのような意味を持つでしょうか? 高い確率で将来の状況が変わる可能性がある、ということです。最近の例を挙げると、北米自由貿易協定(NAFTA)を米政府が改定したとき、米カナダ間で取り引きされる特定品目に新しい関税が課せられました。これは、当時わたしが取り組んでいたプロジェクトに相当な混乱を招きました。関税が課せられることになった品目のために新しい論理プログラムを作らなければならず、購買者に対する説明を改善し、課税による追加コストを表示するようにデザインの微調整も必要となりました。

確かにこれはECの例であって、厳密にはフィンテックではありません。ですが、基本原理は同じです。しかも、金融規制法は単純な関税よりもはるかに複雑かもしれません。デザインしている体験に関連する規則の最新情報を入手し、将来の変化を考慮に入れることを忘れないようにしましょう。

2. フリクションの力を覚えておく

今年の頭に、UsabilityGeekに連載中のCodalのUX Case Studyシリーズの記事で人気の小額投資アプリAcornsのインターフェイスとユーザー体験を分析しました。ユーザビリティの観点からAcornsには好ましい点がたくさんありますが、その中のひとつにプロセスの一部を意図的に難しくする、というすぐれた見識に基づいたデザイン上の選択がありました。

特定の作業に対するフリクション(摩擦)を増やすことがフィンテック向けUXデザインの肝です。フィンテックの本来の魅力は使いやすさですが、資産に関してユーザーがミスをしやすくなるほどに簡単にすることはできません。支払いアプリVenmoのケースも同じです。Venmoでは、送金するときにユーザーに操作確認をさせるステップが追加されています。

要求と支払いのためのVenmoの冗長性。ソース:Venmo

このようなデザイン上の意図的な障害はユーザーのミスを防ぎ、大損害を避ける助けとなります。ユーザーの邪魔となりますが、それは一時的なもので、体験全体に対するものではありません。ユーザーは自分たちの資産が安全で信頼できる状態にあることを知りたいので、少し難しくなっていることを感謝するでしょう。

3. ありとあらゆるフィードバックを返す

ユーザビリティのもうひとつの理念であるユーザーへのフィードバックは、あらゆるUXデザインにとって非常に重要です。しかしフィンテックにとっては、重要なだけでなく絶対に必要なものです。また同様の理由から、フリクションもフィンテック向けのデザインには必須です。

このバンキングアプリは明確で間違いにくいフィードバックを提供します。ソース:UXPlanet

デジタルネイティブでない世代のユーザーは、資産管理をアプリにまかせることをとても嫌がります。銀行であれ、投資であれ、予算管理であれ、金融サービスプラットフォームを操作するとき、自分の情報が安全な状態にあって、おこなった作業が実際に成し遂げられたという安心感と確認をユーザーは絶えず必要としています。

フィンテックに立ち向かう

金融部門のデジタル体験をデザインするのはフラストレーションがたまる可能性がありますし、常にわくわくするわけではありませんが、挑戦しがいのある、現実世界の身近なUXの問題に取り組むいいチャンスです。

私が働いているUXデザイン代理店であるCodal社のUXデザイナーにもっとも多くのことを学べたプロジェクトについて聞くと、ほとんど全員が企業向け金融サービス会社のために昨年作成したWebアプリを挙げました。そのプロジェクトには本記事で述べたほとんどの要素を備えていました。複雑なロジック、役所の煩雑な手続き、金融業について真剣に学ぶ必要のある技術的に高度なワークフローなどです。

しかし最終的にデザイナーたちは、ユーザーフレンドリーで魅力的なプラットフォームを作り上げ、多くを学びました。つまり、フィンテックのデザインについて覚えておくべき最後のアドバイスは、フィンテックのデザインに取り組むことでより賢く優れたデザイナーになれるということです。

※編注:編集の都合上、見出しのナンバリングを原文から変更しました。


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